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【J2:第34節 山形 vs 讃岐】レポート:讃岐を寄せつけず山形が4-0で勝利するも、残り8試合に向けて兜の緒を締める。(14.09.29)

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川西翔太がハーフウェイライン手前でファウルを受け倒された直後、近くにいた宮阪政樹が言葉を発した。「ボール止めて!」。意図を察した川西がボールをセットすると、宮阪は自分で置き直すことなく、ボールを前方へ蹴り追い風に乗せた。「翔太君がファウルをもらう前に周りは見ていて、サイドチェジしたいなとは思ってたんですよ。キーパーも出ていたのはわかってたので、打ってみようかなと」。戻るGK瀬口拓弥の頭上を越え、約60メートルの飛行を終えたボールはダイレクトにゴールネットを揺らした。その精度も然ることながら、ゴール前を含めた周囲の状況を常に確認する習慣や瞬時にトライアルを決めた決断力も含めて、スーパーにしてエクセレントなゴール。05年に佐々木勇人(現仙台)がJヴィレッジで決めたロングシュートを脳裏に浮かべた山形サポーターも多いに違いないが、とまれ、40分にして山形は試合の大勢を決定づける3点目を奪うことに成功した。

松岡亮輔が「分析してた選手も違っていて、ミーティングとは違ってました」と明かすほどに、讃岐はここ数試合の推移からは明らかな変化をまとっていた。ターゲットとして存在感を放っていた木島良輔が欠場。前線にはアンドレアが起用されたが、「アンドレアと2列目の選手の距離を近づけなきゃいけないので、リトリートして一発カウンターというのは難しい」(北野誠監督)との判断で、この試合ではラインを押し上げ前への圧力を強める戦術で臨んだ。左サイドに流れることの多いアンドレアには、1.5列目の関原凌河、左サイドでプレーする古田寛幸が近くでサポートし、ボランチの位置からも岡村和哉が続いた。

立ち上がり、山形のクリアミスも手伝い一気に押し込むと、波状攻撃の最後はアンドレアのクロスに岡村和哉がシュート。5分ほどは山形に攻撃の機会を与えなかった。しかし、山形はディエゴ、山崎雅人、川西翔太の前線3人でのカウンターで6分にファーストシュートを放つと、狭いゾーンでのパスワークやプレッシングからのセカンドボールの対応などでも上回り、一気にペースを奪回。8分に宮阪が左サイドのコーナーキックを蹴ったあと、9分から石川竜也が3度連続で右からのコーナーキックを蹴ると、その3度目で石井秀典がゴールネットを揺らした。ファーサイドで折り返したのは完全にフリーの状態だった舩津徹也。その前の2度はファーからニアに走り込んでいたが、3度目はニアへ動き出すフェイントのみで相手マークを剥がした。

すでにいつもの高い位置からのプレッシングを取り戻した山形はその後も攻め込み続けると、16分、クロスのクリアを拾った川西が相手マークを動かしながらコースを空け、ペナルティーエリアの外からのシュートを突き刺して追加点。その後も一方的にペースを握り、40分の3点目につなげた。プレッシングを基本戦術とする山形に真っ向勝負を挑む形となった讃岐は「監督からも『前からプレッシャーかけていこう』という話もありましたし、推進力というところを重要視してやっていたんですけど、相手の勢いにやられてしまったかなという感じですね」(古田)と終始圧され気味。前半のシュート数も山形の11本に対しわずか2本に終わっている。相手スローインになるケースも含めてロングボールを多用し、敵陣にたびたび顔を出すには出していたが、「アンドレアがキープしたあとの押し上げであったり、そこを消されたらチームとしてどういうふうにポゼッションしていくのかというところがやりきれなかった」(古田)と修正には至らなかった。

後半、讃岐は山本翔平に代えて大沢朋也を投入。アンドレアに対するサポートはチーム全体で幾分改善が見られ、49分のアンドレアのミドルシュートや、65分、アンドレアのクロスが交代出場したばかりの堀河俊大に渡る寸前でクリアされたものなど、山形ゴールに迫るシーンは増えていた。しかし76分、山形は松岡のアプローチをきっかけにボールを奪い、相手のミスにも助けられて、最後は川西からディエゴへスルーパス。ディエゴは利き足を封じられていたが、右足で持ち出してシュートも放ち、山形は4点目。86分には松岡に代わって日高慶太がついにJリーグ戦デビューを果たし、アディショナルタイムにはカウンターで抜け出した途中出場の伊東俊が無人ゴールのわずか右に外れるシュートを放つなど、スタジアムは最後まで沸いた。

「前半の失点3つがあまりにも情けない失点だった」と讃岐・北野誠監督。それまでの4試合をすべて0-0で折り返す堅い戦いを続けてきたが、戦術変更は結果的に裏目に出た。このあとに行われた試合では20位・東京Vが勝点1を追加し、その差は7に開いている。入れ替え戦に回らずに済む「他力の部分も必要になってくるし、厳しいのはもちろんわかってます」と語った西野泰正は、「ただやっぱり諦めてないですし、こういう時だからこそチームとしての一体感、底力が試されると思う。本当にここから8試合、魂込めて戦いたいなと思います」と、残された可能性に懸ける決意を語った。

勝利した山形・石崎信弘監督はいつも通り、結果は結果として、足りない部分が残されていることにも目を向ける。「結果としてはよかったと思うんですけど、やはりまだまだ多くの課題を抱えてる。そこの課題を改善できないと強いチームになれないんじゃないかなと思います」。サイドからの崩しや前半の入り方など、監督や選手たちからは、勝てたからと言って見逃してはいけない課題が次々に挙げられた。もっともスパイスの効いた、しかし的を射たコメントを発したのは松岡。「この4-0って一見、大勝ですけど、正直、レベルの低い試合やったかなとも思う。本当に自分たちが目指している場所を考えれば安堵していられないなというのはあります」。今季最高の7位に浮上し、6位まで勝点2差に迫ったとは言え、9位までが同勝点で並び、10位以下も僅差の混戦状態だ。この試合の結果を快感だけで終わらせれば、この先で手にできるはずのもっと大きな喜びを取り逃がすことになる。

以上

2014.09.29 Reported by 佐藤円
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