群馬の勝利を告げる「勝利の草津節」は試合終了前から流れ始めた。群馬は完勝のゲームに限り試合中からクラブチャントを唄い上げることが伝統となっているが、ロビーニョの2点目が決まり2−0になった時点でゴール裏からはスローテンポな草津節が聞こえてきた。圧勝。1−0のままだったとしても、草津節が流れてもおかしくないパーフェクトに近い内容だった。
栃木戦で勝利の唄を聞くのは、4−0で勝った2011年のシーズン最終戦以来約3年ぶり。今カード過去5試合、栃木の現実的なパワーサッカーに煮え湯を飲まされ続けていたが、この日の群馬はフットボールの醍醐味と魅力を披露してみせた。
前半17分に小林竜樹が自ら獲得したPKを外し嫌なムードになりかけたが影響はなかった。ゲーム序盤から圧倒的にポゼッションを支配し栃木を自陣へと押し込めた群馬は、再三に渡る決定機を栃木GK鈴木智幸に防がれても慌てることはまったくなかった。栃木の決死の守備にあっても、群馬は悠々とパスを回してゴールをうかがう。栃木のゴールネットが揺れるのは時間の問題と思われた。
華麗なゴールが生まれたのは33分だった。栃木のアンカー小野寺達也の周囲を崩した群馬は永田亮太、小林とつないだボールを平繁龍一がヒールで落とす。それをロビーニョが豪快に蹴り込んで群馬が先制に成功する。「4人のコンビネーションから生まれた完璧なゴールだ」(ロビーニョ)。この1点は、群馬のチーム完成度の高さを如実に物語っていた。
後半、必死な形相で攻撃に出た栃木に対して群馬は慌てなかった。4−4−2のブロックで単調な攻撃を受けると、ロビーニョ、平繁の2トップを起点に鋭利なカウンターを繰り出していく。栃木の戦意をそぐ、群馬の2点目が生まれたのは87分だった。
左サイドでカウンターを受けた平繁が逆サイドへ展開、そのパスを青木孝太がダイレクトでロビーニョへと送る。一瞬、オフサイドかと思われたが、栃木の不揃いなラインに助けられてフリーで抜け出す。フリーでの独走となったロビーニョはGKをかわして、この日2点目、リーグ得点ランク7位タイの12点目を流し込んでゲームを決めてみせた。ロビーニョは「ラインがズレていたので行けると思った。ダービーでの2ゴールは最高の気分だ」と会心の笑みをみせた。
群馬が決めた2ゴールはいずれも3、4人がダイレクトでパスをつなぐハイレベルなゴール。「2ゴールともに最高の形からのゴールだった」(平繁)。正田スタに足を運んだサポーターは、そんなエクセレントなゴールを目の前で見られただけでもチケットを購入した価値があったはずだ。
群馬は、2011年以来の3連勝を果たした。秋葉監督は32節札幌戦後に今季限りでの退任を表明したが、チームはそれ以来負けなし。監督退任決定が大きな刺激となり、破竹の進撃をみせている。「チームは勝ち方を覚えて、大きく成長している。残り8試合だが、勝って勝って、勝ちまくりたい」(秋葉監督)。みなぎる気迫と、成熟した戦術。シーズン終盤を迎えて群馬は、無双状態に突入した。
以上
2014.09.29 Reported by 伊藤寿学
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