●名波浩監督(磐田):
「前半の30分くらいまでは“ブサイク”な試合になってしまいましたが、球際のところとか、お互いのコミュニケーションとか、短い時間でしたが、言い続けたことを選手たちはやってくれたなと。その部分に愛媛側が若干の圧を感じて、なかなか前に出てこられない状況を作れたんじゃないかと思います。
後半は入りが非常に大事でしたが、セカンドボールの反応と奪ったボールのファーストプレーをミスするなと。特にこの2つは大きく言っていて。もう1つ言ったな…。ちょっと待ってください(※メモを見る)。あと、サイドを変える意識です。サイドチェンジの意識。この3つはハーフタイムに言ったところで、まさにそれがいいシーンにつながりましたし、特にゴールシーンで左で作って右サイドからクロスという意味ではパーフェクトなゴールだったと思う。実はやりたいシュートシーンというのはああいった形かもしれませんが、そこまで手が回らなかった現状を考えると、みんなが僕の考えを理解してやってくれたんじゃないかなと思います」
Q:監督としての初白星の感触は?
「もちろんうれしいです。ただ、決してアマノジャクではなくて、それ以上にまだたった1試合という気持ちしかありません。終わってから選手たちに、残り8試合、1回も負けたくないということは強く言いました。今日はこの余韻に浸っていいけど、明日からは次のゲームのことだけを考えるという生活のリズムを作り上げてくれということは選手たちに伝えました。42分の1。僕にとっては9分の1ですが、そういった考えのほうがどちらかと言えば強いです」
Q:キックオフ直前にスタジアムを見渡しているように見えましたが、試合前の心境は?
「思ったよりお客さんが入っていないな、という…(笑)。1万人を目指していたのですが、まだまだ僕の力は足りないなと(笑)」
Q:この試合の開始前に松本が敗れました。その中で勝ったということに関しては?
「松本の情報に関しては結果が出た瞬間に選手たちに伝えて、それはモチベーション、それから前節負けているから勝ちたいという勝ちへの欲求というモチベーション、それから明後日の練習が午前、午後の2部練習だったものを勝ったら午前だけにカットにしてやるというモチベーション(笑)。選手各々が違うモチベーションでいいと思いますが、それが1つの目標に向かって足並みが揃う要因になったと思います。その意味ではモチベーションのコントロールが上手くいったなと。それから周りからサポート、それからいろんな心遣い、気配りといったものは常に感じていますし、その感謝の心というものはさらに強まった感じがしますね」
Q:2点あります。短い準備期間でしたが、最も選手たちに強調したことは?それから、前節からスタメンを入れ替えましたが、その狙いは?
「選手たちに落とし込んだのは大きくは4つです。攻守の切り替え。セカンドボールの予測。それから昨日(報道陣に)状況判断と言ってしまいましたが、コミュニケーション。それからシュートの意識。この4つをこの2日間、ゲーム当日を含めると3日間、ホワイトボードに何度も書きましたし、口頭でも何度も言いました。この4つを選手たちに落とし込んだつもりです。
それから(スタメンの)組み合わせに関しては、昨年からこういうふうに組み合わせたらおもしろいかなということを僕自身も考えていて、それを別にクラブに進言する立場ではなかったので、言ってはいませんでしたが。この選手とこの選手の組み合わせとか。このエリアではこの組み合わせとか。そういったことは交代メンバーを含めていい色を出せるのはないかなと思っていました。ただ、これは個々のバイオリズムの問題もあって、不調な選手同士をくっつけてもいくら相性がよくても上手くいかないでしょうし。今日は上向きの選手を使ったつもりですし、それでいて組み合わせも上手くいったのではないかと思います」
Q:シュートを打つように投げかけていた前田選手がたくさんシュートを打ちましたし、抜擢された松浦選手もしっかりとゴールを決めました。そのあたりの評価は?
「前田に関して一番嬉しかったのは、右にシザースで外して左に持ち出して左で打って、左の外に外したやつです。あれなんかも強引さがあって、ザ・ストライカーだと思いました。ゴールシーンはもちろんですが、あのシーンが僕にとっては一番嬉しかったですね。
松浦に関しては、立ち位置が前半悪かったので背後へ飛び出す動きしかなく、(小林)祐希とあまり絡めなかったのですが、後半あの立ち位置にいてくれれば彼は何でもできる。ミスも少ないですし、ミスが少ないということは自分が守備する時間も短く済むという。そういった裏づけが彼のプレーの中に、特に後半45分間の中はあったのではないかと思います。ゴールシーンは本当に彼らしい持ち出しと、粘り強い足腰が生きたと思います。なかなか試合に使われていなかったわりにはよくやりきったと思います」
Q:改めて、試合前はどんな心境でしたか?
「僕のことをよくわかっている方はおわかりでしょうけど、そこまでテンションを上げたり下げたりする人間ではありません。ゴールシーンでも最後のホイッスルが鳴った時もそこまではしゃがなかったと思いますし、ロッカーでも次だ、次だというイメージのほうが強かったです。試合前も試合後もそんなに変わってなかったんじゃないかと思います」
Q:ゲームの流れについてです。1点リード、2点リードという状況がありましたが、それぞれどういった形で試合を進めようという意図でしたか?
「1点リードの時点ではそこまでやり方を変えず、愛媛のロボに入ったところだけケアして、サイドチェンジになったら慌てずに対応しようということはキックオフ前から言っていて、1点リードではそこまで変わらないです。2点リードになってからはやはり落ち着いて、自分たちの主導権を握れそうな時はシンプルにボールを動かそうと。それから、ずっと今日何度言ったかわかりませんが、言い続けことはスターティングポジションです。とにかく帰ってくるところに帰ってこいと。だれでもいいと。例えば、小林が抜けて、トップ下のところに前田が帰ってきてもいいですし。だれが帰ってくるかは自分たちで考えればいいからと。とにかくスターティングポジション、ココに10人がいようということは何度言ったかわからないくらい言いました」
Q:小林選手をトップ下に起用した意図は?
「ボールに対してのクッション性も素晴らしいですし、それからイマジネーションも豊富です。基本技術も高いので相手も時間を作られたら嫌だと思って密集してくるでしょうし。その時に(松井)大輔やマツ(松浦拓弥)が生きると思ったので。前半はそこまで(小林)祐希にボールが入らなかったことと、祐希もボールに触りたくてイラついていて、2枚目かというファウルも前半の最後にあって。あそこは落ち着かせなければいけなかったですし、フェルジナンドとちょっと口論もしていたので、そこのメンタルコントロールは今後の僕自身、チームとしても課題になってくるかなと。ただ、合格点をあげてもいいと思います」
Q:岡田選手の投入は試合を“クローズ”させるという意図でしょうか?
「そうですね。視野がもともと広い選手ではありません。小学校の後輩なので言いたい放題言いますけど(笑)。1本サイドを変えろと言った瞬間、逆ターンでしたが、1本右サイドに運んだりしていたので。そういった1つの声かけでチームの状況を変えられるような指導者になりたいと思っていたところ、後輩がそれをやってくれたりして。そういう意味ではいいゲームの締め方をしてくれたと。ボールアプローチはもともと完璧だったので問題なかったと思います」
Q:メンタル面の部分でも、監督が選手に伝えたことがうまくいったのでは?
「ミーティングでまず『戦』という文字を書き、それから闘魂の『闘』という文字を書きました。戦の戦うはバツにして、今日はこっちの『闘』だと。それは戦(いくさ)というのは緻密な計画があって、それを全てのよう兵たちが理解して戦うことだと思います。今回はそこまで緻密な計算も計画もなく、たった2日間の練習でやらなければいけなかったので、まずは目の前の相手・ボール・相手のゴール・自分たちのゴールという単純なところでこの『闘』で行こうと言いました。実は横浜FCの山口さん(監督)の受け売りです(笑)。ただ、相当響いたと思います」
Q:キャプテンを前田選手にした理由は?
「ゴールでチームを引っ張ってほしいですが、それだけの責任では足りないと。彼がこのクラブで高校を卒業してからやってきて作り上げた地位は確固たるものだと僕自身も、サポーターも、それからクラブも思っていると思うので。その確固たる地位というのはだれからも信頼されて、尊敬される立場だと思いますし、そこに責任というのを前田にのしかけたいということが1つです。あと(松井)大輔がもともと巻いていましたが、キャプテンを交代してころころ代えるのはみっともないなというのもあったので。キャプテンマークは90分間出るであろう人間が巻くべきだと思うので、前田にしました。それは(松井)大輔も了承済みです」
Q:愛媛のシュートを2本に抑えました。伊野波選手がかなり声を出していましたが、評価は?
「伊野波や駒野のくすぐり方というのは若干デリケートな部分もあって。駒野に関しては僕よりキャリアがあると。ワールドカップに2大会出場しているということで、そういうところをどう前向きに持っていくかがポイントだったと思います。これはちょうど真ん中にいる(森下)俊がものすごくリーダーシップを取ってくれて、こっちにはこういう声かけ、こっちには声かけと。そういったことをヒデト(鈴木秀人コーチ)のアドバイス通りやってくれたと思います。上手く踊らせてくれたのではないかと。ただ、まだ1試合なので。駒野、伊野波に関してもパフォーマンスがよかったと言いきれるのかどうかは今後映像で見て検証しなければいけないでしょうし、ここからまた継続させていかなければいけないと思います」
以上
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