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【J1:第26節 川崎F vs 仙台】レポート:川崎F対策を練った仙台に先行を許す中、森島康仁の起死回生の同点ゴールで川崎Fが勝点1を拾う。勝利目前の仙台は痛恨の引き分け。(14.09.28)

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パウリーニョが放った針の穴を通すかのようなピンポイントクロスの先に視線を移すと、そこには走りこむレナトの姿があった。誰もがゴールを確信した直後。ファーサイドに転がったボールは無情にもポストに弾き返される。期待値が高かっただけに、この瞬間に気が抜けたサポーターも多いのではないか。僕自身、まさかのポストに頭を抱えつつ、シュート直後にピッチに倒れこむレナトを注視していたら、仙台サポーターが歓声をあげていた。視線を移すと、その先には先制点を喜ぶ仙台の選手たちの姿があった。前半41分のウイルソンのこのゴールは、試合展開を考えれば痛恨の失点だった。

鹿島戦を見る限り、もう少し仙台の最終ラインは高めで維持されるものと思っていた。しかし彼らは川崎F戦に合わせ、きっちり修正していた。4試合ぶりに先発した角田誠と、強気で鳴らす上本大海のコンビは絶妙にラインをコントロールし、川崎Fの強烈な攻撃陣を封じ込めた。例えば上本は「相手に裏のスペースを与えないということで、そのスペースを消して、自分たちの守備をしたいという話をしていました」と述べ、高すぎる最終ラインを戒めていたと振り返る。また角田は守備ブロックについて「相手のスペースを消すブロックを作ろうと話していて、実際のゲームでも90分間ほぼできていた」と述べている。

中盤を含めた守備ブロックによって早めにパスコースを消された川崎Fの選手たちではあったが、局面局面では曲芸にも似た連携で仙台のプレスをかいくぐり、前方へとボールを持ちだしていた。しかしボールロストと紙一重のパスワークは、やはり心理的に辛い。リスクを回避する意味でも、縦パスの数は制限されて行った。

そんなチームメイトのスタンスに業を煮やしたのが大久保嘉人である。「(チームに)自信がないから出せないし、出したら取られると思うから。そう思って出してるから取られる。余裕を持って出せば全然。ポンポンポンポン。出して、追い越して、やっていける」と述べて、チームメイトの自信のなさを厳しい口調で叱責。パスが出てこない試合中は中盤にまでポジションを下げてボールを引き出し、ゲームを組み立てる役割を担った。

試合を作るという意味で、大久保のパスワークへの参加はメリットがあるが、ゴールから遠ざかるという点では、仙台の利益になる。そして、それが仙台の選手たちが意図して作った守備ブロックに端を発していることを考えれば、この日の仙台の試合運びはうまく行っていたと考えるべきだろう。

前述の決定機で負傷したレナトは43分にピッチから退き、森谷賢太郎と交代。その後、風間八宏監督は後半頭からフォーメーションを変える。4−2−3−1から4−4−2へのこの変更については、特に左サイドで太田吉彰、菅井直樹のドリブル突破にさらされていた登里享平を1列前に出し、ボランチで先発していた谷口彰悟を左サイドバックへと移す変更がポイントだった。これでサイドからの攻撃に備えた川崎Fは、守備意識をさらに高めた仙台に対し攻撃を続ける事となる。しかし人数をかけて守る仙台を崩すのは容易ではなく、時間ばかりが経過。疲労の色を濃くする。

"1点を守り切る"という意思を感じさせていた仙台が攻撃を意図してペースアップしたのは後半75分ごろ。防戦一方の仙台が、この時間帯から攻勢にも出始める。先日対戦したF東京も実行した後半途中からのペースアップは、今後川崎F攻略のトレンドになるかもしれない。結果的にFC東京も仙台もゴール出来てはないが、攻め疲れもあるのか、川崎Fの一方的な展開は拮抗した試合へと転換された。

1点のビハインドで迎えた試合終盤。敗戦を覚悟し始める時間帯に、起死回生の同点ゴールが決まる。後半アディショナルタイムに入る直前の90分。仙台が打つカウンターをしのいだ直後。川崎Fが攻撃に出た場面のことだった。ピッチ中央で谷口がボールを受けた時、ゴール正面に位置していた森島康仁がボールを受けられるように準備を始める。後半81分に交代出場していた森島のその動きは中村が谷口からパスを受けた瞬間に目に入ってきていたと中村は振り返る。

「あの瞬間、(ゴール前を)見た時にすごく真ん中で(森島が)可能性能ある動き方をしていたので」その森島をターゲットにしたアーリークロスを入れたのだと説明。このクロスを頭でねじ込んだ瞬間、等々力が発した熱量は凄まじかった。記者席では、過去に聞いたことのない音量の歓声が等々力を埋めた。

クロスからのゴールが極端に少ない川崎Fではあるが、小林悠などをターゲットにしたクロスがないわけではない。珍しいゴールではあるが、ゴールはゴール。この得点については中村も「クロスを上げたほうがチャンスになるというか、そういうふうに自分でも判断していました。クロスを上げちゃいけないとは言われてないので。クロスもパスと同じように、でいいと思います」と述べ、崩しの形の多様化の一環として、クロスの必要性を口にした。土壇場で同点に追いついた川崎Fは逆転が視野に入ったことで勢いづく。ただ、そうした川崎Fの攻撃を跳ね返した仙台も鋭い攻撃で勝ち越し弾を狙った。ともに見せ場を作った後半ATの攻防ではあったが、それ以上得点が動くことななく、1−1で戦いは終わりを告げた。

勝点3を掴みかけていた仙台にしてみれば、悔やまれる同点となった。その一方で、勝点3を奪うべく試合に臨んでいた川崎Fは、勝点0の試合を土壇場で1にできたという点で胸を張っていいのかもしれない。ただ、お互いに勝点3を期待していただけに、試合後の両チームの表情に明るさはないという、そんな試合となった。

以上

2014.09.28 Reported by 江藤高志
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