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【J1:第26節 大宮 vs 清水】プレビュー:守備崩壊中の清水と、構築途上の大宮。生き残りをかけたオレンジダービー(14.09.27)

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リーグ戦も残り1桁に突入し、残留争いも熱を帯びてきた。ホーム大宮は勝点22の17位、アウェイ清水は勝点25の15位。16位・C大阪が首位・浦和との対戦、14位・仙台は2位・川崎Fとの対戦とあって、大宮は勝てば得失点差で上回って14位まで浮上する可能性があり、清水は負ければついに降格圏に突入する。大宮にとっても清水にとっても、ここがまさに正念場だ。

ともに下位に低迷しているとはいえ、渋谷洋樹監督就任以来2勝1敗の大宮よりも、大榎克己監督就任以来1勝1分6敗の清水のほうがチーム状態としては深刻に見える。特にここ6試合では1分5敗で、合計失点は実に18を数える。計7得点とある程度は点が取れているだけに、この失点癖が最大の問題だ。
清水は第22節・鳥栖戦以来、3バックにシステムを変更している。村松大輔の徳島への期限付き移籍、カルフィン ヨン ア ピンや杉山浩太ら守備の主力のケガにより4バック継続が難しくなったことが主因だが、3バックで守備時は5バックになっているのに失点が減らない。まるで、数カ月前の大宮を見るようだ。「あと一歩ボールに寄せるところとか、細かいところで1人1人が怠ったところからミスや失点が出てしまっている」(大榎監督)と、組織よりも個の部分を強調する監督の発言、「人数はいるけど失点してしまった」(本田拓也)、「5バック気味になりすぎて、自分たちが引きすぎた。もし引いちゃうなら、前半は0で折り返さないといけない」(石毛秀樹)といった選手のコメントも、あのころの大宮そっくりだ。
とはいえ大宮も、渋谷監督のリーグ初陣となった第23節・鹿島戦でリーグ最多得点の強力攻撃陣をコーナキックの1点に抑え、続く徳島戦では久々の無失点を記録したものの、「最後のところで体を張れていたことと、相手の精度(の低さ)にも助けられた」(横山知伸)のは事実で、前節・川崎F戦では個でも組織でも圧倒されて3失点。「渋谷さんのディフェンスのスタイルを、相手に惑わされずチームとしてやり通すことが必要」と、金澤慎も守備の立て直しはいまだ発展途上であることを認める。清水の姿は、まだ決して過去の話ではない。
そしてその清水も、前節のG大阪戦では最終的に0−3で敗れたとはいえ、前半の終わりごろから後半終了間際にかけて、前線からコンパクトに連動してプレスをかける、チームが意図して取り組んでいる守備が機能し、G大阪と互角以上の戦いを演じたことはポジティブにとらえられる。この試合、残りの残留争いも見据えてどちらが先にもう一段階上の守備に到達できるか、その勝負になると見ていいだろう。

勝負を分けるのは先制点。清水はここ3試合すべてで前半30分以内に失点し、ゲームを難しくしている。大宮も中断明け以来、第23節の鹿島戦の前までは天皇杯3試合を含む公式戦11試合すべてで先制点を与えていたし、今季は先制した試合で負けていないだけに、先制点の重要さは痛感している。5バックで守っても失点が減らない清水の状況を渡邉大剛は、「意思疎通やマークの受け渡しとか、責任が曖昧になっているのかもしれない」と、かつての大宮に照らして推測する。それだけに、「前からプレスを掛けてこられると厳しいところもあるけど、背後を狙っていく」(渡邉)と、意外にあっさりと大宮に先制点が転がってくる可能性はある。実際、かつて5バックの大宮はそういう形であっさり失点することが多かった。
逆に清水にとって狙い目は、大宮の左サイドだろう。ここ数試合、大宮は左サイドを崩されての失点あるいはピンチを迎える場面が多い。左サイドハーフ泉澤仁の守備のポジショニングの拙さに加え、中村北斗は負傷もありコンディションがもう一つで、川崎F戦ではセンターバックが本職の片岡洋介を起用したがそれでも左からやられた。マッチアップする清水の右は、要注意人物の大前元紀である。当然そこを起点に清水はサイドアタックを仕掛けてくるだろう。またコーナーキックやファウルを与えると、セットプレーから平岡康裕の頭も清水の得点源のため注意が必要だ。
そして大宮にとって最も警戒しなければならないのは、昨年まで大宮の前線に君臨していたノヴァコヴィッチである。「ボールを持てて、パスも出せるし自分で仕掛けることもできる。クロスに対してゴール前に入る上手さもある。苦しいときこそ一発決められる選手」(金澤)と、ノヴァコヴィッチの怖さはどこよりも大宮が一番よく知っている。ただそれだけに、ノヴァコヴィッチをどう抑えるか、元チームメイトならではの対応もある。大宮のある選手は、「いかにイラつかせられるかだと思う」と、冗談ともつかないことを口にする。昨秋に連敗していたころの大宮でよく見られたが、前線で孤立して良いボールが入ってこないと、彼は相手選手よりも味方に苛立ち、それが高じると試合そのものに対する集中を切らす傾向がある。清水を5バックの状態にさせて押し込み、ノヴァコヴィッチを前線に孤立させ、彼へのパスを徹底的に遮断できれば、清水の前線の脅威は大きく落ちる。清水のトップスコアラーと、元同僚の激しい駆け引きにも注目だ。

この試合の前日、大宮の練習は非公開のため詳細はわからないが、中2日に続く中3日の連戦であることと、大黒柱のムルジャが前節で負傷交代したため、スタメンの変更がありそうだ。清水の最終ラインの裏を狙うというところでは、前線に富山貴光の起用が有効かもしれない。そして大前にマッチアップする左サイドバックの人選も、渋谷監督にとって頭を悩ませるところだろう。ムルジャの状態が気になるところだが、大宮のトップスコアラーは試合前々日の練習を「大事をとって」(渋谷監督)回避した。ただ、この日の練習では戦術的な落とし込みはなく、ボール回しやミニゲームが中心のリラックス目的のものだったため、不在でも影響はなかった。練習場から元気に自転車を漕いで帰る姿も目撃されており、おそらくベンチには入ってくるだろう。
ノヴァコヴィッチのNACK5スタジアムへの帰還、そしてムルジャとの新旧助っ人対決と、大宮サポーターにとっては楽しみも多いが、単純にそれを楽しむにはあまりに状況がハードすぎる。ノヴァコヴィッチがゴールすればすなわち大宮への引導となりかねないし、大宮にとっては清水を引きずり下ろすため、全力でかつての大黒柱を試合から消さなければならない。生き残りをかけたオレンジダービー、最後に笑うのはどちらか――。

以上

2014.09.26 Reported by 芥川和久
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