リーグ6戦で4勝2分、現在3連勝中と名古屋がついに上昇気流に乗った。前節の勝利で順位も11位に浮上。長らく抜け出せずにいた残留争いから一歩抜け出した感もあり、チームはようやくサッカーの内容に目を向けられるようにもなってきた。攻撃志向の指揮官・西野朗監督が渋々選択してきた守備重視の戦術は、ここから少しずつシフトチェンジしていくことになりそうだ。目指すは前線への意識改革。名古屋は少しずつ、文字通り前に進んでいくことになる。
6戦負けなし、3連勝を支えているのは前述したように、まずは守備を重視する戦い方にある。振り返れば序盤戦、負傷者が続出したことで固定できなかったDFラインの顔ぶれが定まり、それをベースに守備組織が整備された。攻守をつなぐ扇の要であるボランチもダニルソンと田口泰士がスタメンを確保し、ダニルソンが不在のここ2試合では磯村亮太がしっかりとその穴を埋めている。ボール奪取で大立ち回りを見せる前者と、組み立てとシュートに特長を持つ後者の選択は、久々の出場機会を得た磯村が及第点以上のプレーを見せていることで、新たに信頼感のある選択肢として指揮官に認識されたに違いない。これらに加え、永井謙佑と矢田旭らサイドハーフの守備意識も高く、やや重心を後ろに置いたところからのカウンターが攻撃の第一選択肢。西野監督はここに、手を入れる心づもりでいる。
「今やろうとしている戦い方は多少守備重視だが、全体でその意識を持った戦いはできている。ただ、もっと攻撃のための守備を意識させないと、守備のための守備になってしまう。それではやっぱりリアクションすぎてピンチを招く。もっとポゼッションとかゲームを組み立てるとか、攻撃へ比重を転換していくことが必要だと思う。今は結果が出ているから今の形がいいかといえば、そうでもない。裏腹ですね、これは。相手も研究してくるだろうし、少し変化はさせないといけないとは思う。ボールを取ってすぐに2人だけのカウンターに行くとかじゃなく、コレクティブにボールを動かして狙っていく戦い方とか。結果が出ているから少しずつ余裕が出てきた中で、少し変わっていけるかなと思う」
だが、今節で迎え撃つ新潟に対してはカウンターが有効なのも確かだ。前節は浦和をホームで迎え撃った新潟だが、ポゼッションと前への人数をかける意識が強く、その裏をロングフィードで突かれる形が目立った。ここ3試合ほどで導入した3-4-3の新システムは前線からのプレッシングに威力を発揮する一方で、前に奪いに行った際に最終ラインが手薄になるリスクもはらむ。いまJリーグでナンバーワンとも言えるボランチのレオ・シルバや田中亜土夢など能力の高い選手は多いが、アウェイでしかも順位が1つ上の名古屋との対戦で、どこまで前に出てくるかは柳下正明監督のさじ加減だが、浦和戦の反省を活かすというなら守備には慎重な姿勢を見せることも十分考えられる。リーグ4試合連続スタメンながらいまだ無得点の新加入・指宿洋史の活かし方を含め、キックオフ直後の出方でこの日の基本的な戦い方が見えそうだ。
翻って名古屋の戦い方はボランチの起用法に現れてくるだろう。前述した通り、ダニルソンの不在を磯村が見事にカバーし、攻撃面で違う持ち味を見せている。それは縦パスの意識とダイレクトプレー、そしてシュートだ。ダニルソンの状態が不透明だが、攻撃へのシフトチェンジを目論む西野監督にとって、2試合を通して調子を上げてきた磯村はうってつけの人材。同じ生年月日の相棒・田口が守備面でも貢献度を増してきていることを思えば、磯村のチャンスは増えてくるはず。前節のC大阪戦ではシュートセンスも垣間見せ、持ち前の得点力でもアピールできればスタメン奪取も近づく。
そしてこの日最大の注目は、やはり川又堅碁だろう。新潟の指宿とは対照的に、移籍後の出場6試合で3ゴールと絶好調である。間違いなく名古屋の3連勝の勢いを生み出した選手であり、前線でのダイナミックなプレーはかつて広島や横浜FMなどで活躍した久保竜彦を彷彿とさせる。加入直後からチームに溶け込んだ明るいキャラクターとコミュニケーション能力で周囲との連係もまずまず。「自分の持ち味は全然、まだまだ出せていない」と語るようにプレーの意図が噛み合わない部分もまだ多いが、得点という結果を出しているところは流石の一言。シーズン途中での移籍となった古巣との対決には「自分は得点をするだけ」と平静を装うが、心の中はギラギラしているに違いない。西野監督も「それがストレートに出るタイプと、まったく空回るタイプがいる。まあ前者であってほしいとは思うけど。否応なしに気にしているでしょうし、聞かれて気にしてませんというのは嘘でしょう」と期待する。背番号32の野獣派ストライカーは、第24節・甲府戦で負った右手のケガも何のその、瑞穂陸で愛着のあるオレンジ色のユニフォームに襲い掛かる。
今節を含め、今季も残すところ10試合のカウントダウンが始まる。最大30ポイントの勝点の何%を勝ち取り、順位をどこまで上に持っていけるかは全チーム共通の課題。それが優勝争いに関わることであれば最高なのだが、名古屋と新潟、中位には中位の戦いがある。名古屋は天皇杯制覇でAFCチャンピオンズリーグ出場権を獲得しつつ、リーグ戦は賞金圏内でフィニッシュというのが現実的には最大の成果となるだろうか。あと2カ月あまりとなった2014年シーズンは、いよいよラストスパートに突入する。
以上
2014.09.26 Reported by 今井雄一朗
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