まさに秋晴れと言える青空が広がっていた。讃岐のユニフォームと同じサックスブルーの空。今日はいい事がありそう―。試合前、そんなふうに思っていたが、待っていた結末は讃岐にとって厳しいものだった。

Ｊ２自動残留を目指す讃岐と、Ｊ１プレーオフ圏内を射止めたい長崎。立ち上がりはともに慎重で、この試合の大切さがうかがえる。状況は、まさに五分と五分。讃岐がボールを持てば、長崎は石神直哉、古部健太が下がって５人でゴール前を固め、長崎がボールを持てば讃岐は木島良輔を残して全員がゴールを守る。前半終盤には、ともにペナルティエリア付近でのファウルが増え、互いにＦＫを得るもゴールには結びつかず前半終了。このまま０−０で試合が終わってしまいそうだと感じるほど、両チームとも徹底した守備網を敷き、また、どちらからも得点のニオイが感じられなかった。

後半に入ってからも、膠着した状態が続く。讃岐は木島にボールを供給しゴールを狙うがチャンスを生かせない。山口貴弘が「今までで１番。すごく脅威でした」と木島を評するほどだったが、その分、長崎ＤＦ陣がエリアで木島をしっかりとケア。ならば讃岐は、２人目、３人目を使っていきたいところだが、木島と中盤の距離が遠く、その動きが見られない。先に交代のカードを切ったのは長崎。６４分に小松塁、７３分にスティッペを投入。長身選手２人がシャドーの位置に入ることによって、讃岐のディフェンスに乱れが出始め、流れは長崎に傾いていく。
試合が動いたのは８７分。長崎のロングボールをエブソンがクリアミス。こぼれたボールを小松が左サイドから折り返し、右から走り込んできた途中出場の深井正樹が倒れ込みながらも豪快にゴール右隅に叩き込んだ。深井は出場からわずか１分でのゴール。「（ゴールを決めるまで）正直、ここまで時間がかかるとは思っていなかった。やっとチームの勝利につながるゴールを取れてホッとしています」と喜びを噛みしめ、逆に瀬口拓弥は「僕が『エブソン、クリア！』と言ってしまってエブソンが無理な体勢になってしまった。そこが心残り」と唇を噛んだ。

なんとしても勝点を得たい讃岐は、前半戦で長崎と対戦した際、同点ゴールを決めたソン　ハンキをピッチに送り出し、パワープレーを試みる。後半アディショナルタイム、讃岐がコーナーキックを得た際にはＧＫ瀬口も上がり貪欲にゴールを狙うが、１１人で守る長崎の壁を崩せないまま試合終了のホイッスルが鳴り響いた。

長崎は１３位と順位を１つ上げ、６位の大分との勝点差を７に縮めた。高木琢也監督の言う「パーフェクトなゲーム」をしたこと、深井がゴールへの嗅覚を取り戻したこと。６位の背中が見えてきた今、長崎にとって、それら全てを含むこの勝利がＪ１昇格プレーオフ進出への追い風となるだろう。

そして讃岐。ここ５試合いい戦いを見せていたが、この試合に関しては特に攻撃面でその讃岐らしさをあまり感じられなかった。木島と中盤の距離は前述したが、木島に次ぐ攻撃のストロングポイントである沼田圭悟と小澤雄希での左からの攻撃回数も、これまでに比べかなり少なかった。スピードのある長崎の両サイドをケアするためでもあり、疲れもあったと思うが、もの足りない感じは残る。ただ、失点シーン以外ではブロックを組んで固く守れていたし、古田寛幸の復帰によって右からの攻撃が増えた。そして中２日の戦いでの疲れを誰ひとり言い訳にしなかったその強い気持ちが、今後の戦いに必ずつながっていくはずだ。
今節、２０位の東京Ｖが勝利したため、勝点差は６に再び広がってしまったが、「全部勝つという気持ちで前を向いて（堀河俊大）」戦い続け、１１月２３日（リーグ最終日）には丸亀競技場に笑顔の花を咲かせてほしい。

以上

2014.09.24 Reported by 中條さくら（オフィスひやあつ）