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【J1:第24節 名古屋 vs 甲府】レポート:気づけば半年ぶりとなるリーグ戦でのホーム2勝目。甲府を下した名古屋がJ1残留へまた一歩前進した。(14.09.21)

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名古屋が24節にして、今季のホーム2勝目を手にした。改めて確認して驚くのは、リーグ戦でのホーム勝利は実に3月23日の神戸戦以来のおよそ半年ぶりのことである。久々となる本拠地での勝利は、残留争いのキャストである甲府が相手という巡り合わせも含め、名古屋にとっては勝点3以上の価値を持つに至った。

勝てば残留確定へ大きく前進できる一戦へ向け、西野朗監督が選択したのはあくまで攻める意識だった。中盤の掃除屋ダニルソンが負傷欠場した穴には、同じ仕事を期待できるベテラン中村直志ではなく、攻撃に特徴のある磯村亮太をチョイス。リトリートからのカウンターが大きな武器の相手に対し、ポゼッションからの攻撃に厚みを加えるための選手起用であることは明白だった。奇しくも4月のアウェイ甲府戦を境にリーグ戦ではスタメンでの出場機会を失っていた男にとって、ここはまさしく正念場。前半こそ現チームのリズムに乗りきれない部分も散見されたが、同い年で誕生日も同じ田口泰士とは違ったリズムのパス出しで攻撃にアクセントを付けた。前線は川又堅碁を頂点に、2列目には永井謙佑とレアンドロドミンゲス、矢田旭という顔ぶれ。仕掛けとパスワーク、ゴールへ直結する動きに長ける4名は、今や指揮官の第一選択肢となっている。

しかしながら、キックオフからペースを握ったのはアウェイの甲府だった。運動量が少なく、前線へのボールの収まりの悪い名古屋に対し、DFラインを下げずにコンパクトな布陣で対抗。特に元名古屋の阿部翔平を中心にクリスティアーノ、佐々木翔らがダイナミックにポジションを変える左サイドの崩しが秀逸で、序盤20分ほどは甲府が試合を動かした。ここで甲府が先制点を手にできていれば試合結果は変わっていたかもしれないが、それこそが甲府が抱える問題点であったことは、城福浩監督自身が試合後に語っている。そして名古屋は前半20分に得たFKをきっかけにリズムを奪い返し、一気に先制点を奪ってしまうのだった。

前半29分、川又のポストプレーからレアンドロがDFの密集地帯に突破をかけ、走り込んだ矢田旭にスルーパス。これを矢田が利き足とは逆の右足で冷静に沈めた。矢田はこれがリーグ戦での初ゴール。プロ初ゴールはヤマザキナビスコカップですでに挙げていたが、「格別です」と喜びを爆発させた。この得点の起点となった川又に鋭いカウンターの縦パスを送ったのが磯村であったことも、大きな意味を持つ。ダニルソンにはないパス能力を誇示したことで、磯村のプレーも以後安定していったからである。翻って甲府だが、失点直後に相手DFのクリアミスからクリスティアーノが決定機を迎えたが、これを決められない。前述の城福監督は「前半、本当にあのチャンスしかなかったと認識していますけども、あれを決められる質がある名古屋と、我々にもチャンスがありましたけど、決められなくて2点目を決められた」と嘆いたが、この点が大きく勝敗に影響したことは間違いない。

名古屋がリードして折り返した後半は、ワンサイドゲームの様相に遷移していった。甲府の守備はそれでも安定してはいたが、前半よりも攻撃のキレが鈍り、防戦一方の傾向は増すばかり。名古屋もリードを活かしたボールキープから、好機を見極めてのアタッキングという傾向が強まり、また守備でも激しく落ち着いた対応で甲府に決定機を作らせなかった。甲府は52分の松橋優とジウシーニョの交代を皮切りに、60分に盛田剛平に代えてキリノ、68分には河本明人を石原克哉にと次々攻撃のカードを切って反撃の糸口を探ったが、残念ながら特効薬とはなりえなかった。そして71分、万策尽きた甲府の隙を突くように、名古屋が試合を終わらせた。「直前にセットプレーでやられかけて、その後のコーナーキックでやられた。引きずらずに、2本目をしっかり押さえなければいけなかった」と阿部が悔しそうに振り返る。直接FKから牟田雄祐がまずは強烈なヘディングシュートを放つも、ここはGK荻晃太がセーブ。しかしこれで得たコーナーキックを永井が頭で流し込み、試合を決する2点目が生まれた。

この試合で出色だったのは、田口泰士だ。前半はゲームメイカーとしての役割を果たせない部分もあったが、持ち前のファイティングスピリットで挽回した。良く走り、良く体をぶつけ、小柄ながら競り合った空中戦は全勝した。終盤、左サイドバックの本多勇喜が足をつり交代を申し出た時、西野監督は中村直志を投入し田口をサイドバックの位置に下げた。ピッチ内にはサイドバックのバックアッパーとして起用してきた磯村や小川佳純がいたにも関わらずである。しかし、指揮官の言葉を借りるまでもなく、この日の田口は1対1と運動量に質においてナンバーワンだった。ゲームを通しての集中力と献身性を考えても、サイドという重要な守備ポイントを任せるに十分納得のいく采配だったといえる。

勝点を積み上げることができなかった甲府だが、問題点はやはり攻撃の部分にある。「2点目もセットプレーですし、それ以外の形でやられたかというと、あまりそういう場面も作られませんでした」という佐々木翔の言葉は虚勢ではない。先制点の場面は崩されたが、「前半は本当にあのチャンスしかなかったと認識しています」と城福監督が言うように、守備陣はよく機能し名古屋の攻撃に対応していた。守備の意識も引いてブロックを固めるのではなく、コンパクトに布陣をまとめ、相手が仕掛けるスペースを巧みに消す有機的なものに感じられた。だからこそ、攻撃陣の奮起が必要だ。この日は控えにFW登録を4人も用意するなど攻めへの意識は高かったが、彼らが仕事をしたかといえばそうではない。残り10試合で指揮官が「使命」と語る残留を成し遂げるためには、堅守を活かすための強力な攻撃が、どのような形でもいいから欲しい。

今季2度目の連勝でここ5戦負けなしとなった名古屋は、勝負の8日間で幸先の良いスタートを切ることに成功した。「日程が詰まっている時は結果が重要」と語るのは楢崎正剛だ。次は中2日で16位のC大阪とのアウェイゲームが控えている。十分な回復期間を取れないスケジュールの中では、勝利が何よりの栄養になる。西野監督は「本来はディフェンスから攻撃に流れる程度や迫力をコレクティブにもっと追求していきたいが、今は少しロングカウンター的な攻撃に頼っている状態」と内容には決して満足していないが、その追求はJ1残留を確実なものにしてからが本番だ。現実だけを見る現状から脱却し、理想を見られる状況へ。甲府からの勝利で、名古屋は理想追求へと一歩前進することができた。

以上

2014.09.21 Reported by 今井雄一朗
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