J1リーグ前半戦のラストゲーム、大宮はホームNACK5スタジアムに徳島を迎えて戦う。大宮は3勝6分7敗、勝点15で17位に沈んでいる。徳島は1勝2分13敗、勝点5で最下位。中位〜下位のチームの勝点が詰まっており、大宮は勝てば14位に上がれる可能性があり、徳島も勝点3を得れば残留への希望がわずかながら大きくなる。7月に大宮に加入したばかりのFWムルジャも「最も重要なゲーム」と理解するこの試合に、互いの命運がかかっている。
大宮はリーグ戦再開後の2試合、広島と鹿島を相手に引き分けてスタートした。広島戦では前半に3点リードされながら追いつき、鹿島戦では2度リードを奪われながら2度追いついた。「取られても取り返せてる試合が続けられてるのは、チームとしてのパワーがある証だと思う。ムルジャも入って、良い流れ、得点ができてる流れがある」と、江角浩司はポジティブにとらえる。問題は、いかに失点をなくしていくかだ。
大宮の総失点は29で、これは36でワーストの徳島に次いで多い数字だ。総得点22点で6位タイの得点力があるものの、やはり1試合平均約1.8失点では安定して勝っていくのは難しい。
失点が多い要因は、主導権を握った守備ができない点にある。広島戦では4バックでゲームをスタートしたものの、3バックの広島とはミスマッチのために、ただでさえ守備の間で受けるのが上手い広島に翻弄され、後半に相手と同じ3バックで対峙したことで、ようやく前線から連動した守備ができた。鹿島戦では逆に3バックでスタートしたところ、4バックの鹿島をとらえきれず後手を踏み、後半の途中から相手と同じ4バックに戻して互角の戦いに持ち込んだ。要するに、組織として連動して相手を守備にはめていくような、「自分たちのスタイルが確立できていない」(和田拓也)ために、ミスマッチの形でスタートすると、相手の上手さにもよって大抵の場合は後手を踏むことになるというわけだ。一方、あらかじめ相手の布陣に合わせ、ハマった形での守備になればそれなりに機能するのは、ここまでの結果が示している。
「どういう相手に対しても『これが俺たちの形』という揺るがないものができればいいが、逆に、『俺たちは両方できるんだ』というのが自信になれば、それもストロング(ポイント)になる」と、大熊 清監督は3バックと4バックを並行して採用していく構えだ。そうして相手に合わせた形で守備にはめ込み、ムルジャ、ズラタン、家長昭博ら前線の強力な個の力でゴールをこじあける、これが現状の大宮の戦い方だ。
一方徳島は、リーグ再開初戦は苦しみながらも名古屋に1-1で引き分け、続く浦和戦はシュート数では互角ながらも0-2で落とした。ここまで総失点36、総得点4と、どちらの数字も非常に厳しいが、中断期間の移籍では村松大輔、エステバンら守備的な選手を獲得してFWのドゥグラスを放出したところを見ると、まずは失点を減らして勝点につなげていきたいという意向が見える。特に、昨年神戸のJ1昇格を支えたエステバンの加入は、ボランチの位置でのスクリーニングの弱さがウイークポイントとして指摘されるだけに、チームを一変させる可能性を秘めている。ただ、個の力で勝負する前線のアタッカーではなく、周囲との連携が重要なボランチだけに、この試合に出場したとしても、いきなり活躍するのは難しいかもしれない。
徳島は中断前は4バックをメインに戦っていたが、ヤマザキナビスコカップと中断期間を経て現在は3バックを採用している。「クロスを多く上げてくるのと、1トップの選手にロングボールを当ててくるので、そこは自由にさせないようにしたい」と、大宮の渡部大輔は対策を口にする。大宮は当然3バックでスタートするはずで、最終ラインを高く、コンパクトにしてマークをしっかり捕まえることが重要だ。もちろん徳島も、大宮のここ2試合の戦い方はスカウティングしているはずで、その裏をかいて4バックに戻してくることもあり得なくはない。
いずれにしても、互いにチームとして上手くいっていないからこそこの順位にいるわけで、戦術的な対決というより最終的には個の力が命運を分けるのではないか。その点では大宮に分があるのは確かだが、徳島もエステバンを投入して個人の力でボールを狩りまくるような戦いに持ち込めば勝機はある。また、大熊監督と小林伸二監督の大声対決も、ピッチに近いNACK5スタジアムならではの見どころで、アツいゲームになりそうだ。
以上
2014.07.26 Reported by 芥川和久
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