リーグの折り返し地点となる17節の戦いは、名古屋にとっては3バックシステムの評価を決める戦いになるかもしれない。中断期間の6月にプレシーズン以来の導入を決めた「選手の特徴を活かす」(西野朗監督)フォーメーションは、実戦配備されてからのリーグ2試合で1−1、3−3の引き分け二つと悪くない結果を残してきた。しかし前節の仙台との試合は4−4−2へのシステム変更が後半の3得点を呼び込んでおり、これをオプションと見るか、やはりこちらが良いと見るかは評価の分かれるところだ。それは負傷者が戻ってきたことでのメンバー構成の面でも、検証すべき点でもある。
それゆえ、今節の横浜FM戦における名古屋のメンバー、フォーメーションは予測がつきにくい。最たるものはDFラインの顔ぶれである。前節は田中マルクス闘莉王が負傷で欠場し、代わって5月の第13節G大阪戦以来の出場となった特別指定の大武峻が3バックのセンターを務めた。闘莉王が戻ってこないのならば、牟田雄祐、大武、本多勇喜による3バックが第一候補だろうが、主将が戻ればどうなるか。そのまま大武が控えに回ることも考えられるが、仙台戦で大武は確かな空中戦の強さと持ち前のパス能力の高さを誇示している。思えば3バックで戦ったタイでのプレシーズンマッチで際立った活躍を見せたのは、3バックの左ストッパーに入った背番号2だった。キャンプへの練習参加だけのはずが、急きょ特別指定の手続きを取り、開幕戦にスタメン起用したのは他でもない西野監督である。前節での活躍ぶりを踏まえるに、牟田か本多の枠に大武が割り込んでくる可能性は十分にあると見ていいだろう。さらには前述したように4バックへの“再回帰”があるならば、DFラインのスタメン争いはさらに激化することになる。
もう一つの注目は玉田圭司の戦線復帰だ。楢崎正剛と同様に中断期間をほぼ負傷の治療に充て、再開してもなかなか全体練習に合流できずにいたが、仙台戦では途中交代から力強い動きで存在感を見せた。リーグ再開直後、「オレが出るにしても出ないにしても、今の前線はFWやトップ下と固定せずに考えたい。そこは流動的にやった方がいい」と語っていた男は有言実行のプレーで健在をアピールしたわけだ。まだ復帰したばかりということもあり、すぐにスタメンとはいかないだろうが、FW起用されていた小川佳純や仙台戦でスタメンだった松田力らと競争する立場になったことは間違いない。レアンドロドミンゲスとは違うタイプのゲームメイカーとしても、背番号11の復帰は西野監督にとっては嬉しい悩みになっているのではないか。彼が小川佳純とともに4−4−2の布陣の中で好パフォーマンスを披露したことも、3バックか4バックかの選択を広げる要因の一つである。
そのような状態で名古屋が迎え撃つのは横浜FMである。3バックを再び導入して以降、最強の相手といっていいだろう。昨季のリーグ2位にして失点の少なさにおいても2位のチームであり、攻撃では中村俊輔という今なお日本最高の司令塔がトップ下に君臨する難敵である。中澤佑二、栗原勇蔵というJトップクラスのセンターバックコンビは今季も変わらぬ強さを誇っており、それを担保にしたサイドバックのオーバーラップは積極的。中村俊をサポートするサイドハーフには日本代表ドリブラー齋藤学に加え、逆サイドは名古屋から移籍の藤本淳吾や兵藤慎といったプレーメーカータイプがおり、前線の動きは実に多彩だ。前節では出番がなかった藤本だが、3年間を過ごした古巣との対決にはぜひ出場してほしいもの。本来のサイドアタッカーとしてのポジションを与えられ、活き活きとプレーしている今季は見ていて楽しい選手の一人だ。この強豪を相手にした時に初めて、リニューアルを図った名古屋の真価が問われるといっても過言ではない。
試合は名古屋がどのような布陣、メンバーで臨むかで局面の展開が変わってくるが、いずれにせよ互いのストロングポイントを発揮できるかという点では中村俊の周囲が一つの見どころにはなってくる。横浜FMの攻撃に流れを生み出すベテランに、名古屋は仕事をさせてはいけない。ダニルソンや田口泰士らボランチがマッチアップすることにはなるが、チーム全体として彼へのパス、彼からのパスコースを分断することを意識すべきだ。もちろん、セットプレーは命取りということは、言わずもがなの注意点である。
そして名古屋はボールを奪えば、今度は横浜FMと同じ考えのもと行動することになる。もはや名実ともに名古屋の攻撃の中心に立つ、レアンドロをいかに活かすということだ。前節では土壇場でチームに勝点をもたらすシュートを沈めた攻撃的MFの持ち味は、仲間に勝負をさせるパスがその真骨頂。彼に良い形でボールを預け、オーバーラップを含めたサポートを繰り返していくことで、自ずと攻撃の流れと勢いは出てくる。今回の対戦はお互いに、リーグ屈指の司令塔たちに仕事をさせるか、させないかの勝負とも言えるだろう。しかし彼ら頼みのプレーでは効果は薄い。そこに有機的に組織として関われた方が、攻守において主導権を握る。名古屋でいえば、それを実現できるのは3バックなのか、4バックなのか、あるいはどんな11人なのか。リーグ再開から折り返しまでの3試合をひとつの試金石として考えていた指揮官が、どのような判断を下すかは見ものだ。
全国的に夏到来の感も強い昨今、名古屋もついに蒸し暑さの伴う独特の夏がやってきた。連戦で消耗した選手たちには実に厳しいコンディションとなるが、それも踏まえた組織の動きでカバーできるか。文字通りの熱戦は、個を活かした組織が勝つ。
以上
2014.07.26 Reported by 今井雄一朗
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