●乾真寛監督(福岡大):
「天皇杯で同じJのチームと対戦するというのは、珍しいこと。広島はとても強いチームだし、やることが決まった時は正直、複雑な気持ちでした。ただ、昨年のチームからGK以外はほぼ選手は残っていましたし、1年間の成長を示す絶好のチャンスだとも、捉えていましたね。
心に決めていたのは、後ろに下がるサッカーをしないこと。昨年は5−4−1で戦ったのですが、今年はやはり1トップでは厳しいということで山崎凌吾と野嶽惇也の2人を前に置いての5−3−2。この2人がいい形で前を向いてプレーしてくれたことが、PKを含む2点につながった。前半は広島もスローペースで来るだろうなと思っていたので『先手をとれれば』とは考えていたんですが、そのとおりになりました。
守備は大武峻を中心に強気な5バックを構成したつもりです。ワールドカップでの戦いを参考にしてモデルを集め、イメージをつくっていきました。広島のやり方は変わらないわけですから、ウチはとにかく思い切って、立てた対策をやりきりました。
皆川佑介選手と大武は、ユニバーシアードでも一緒のチームでしたし、強いライバル心が互いにありましたね。退場のシーンまで、DFラインは本当によく健闘していたと思います。強気にラインを上げていれば、裏を取られる危険性はあるのですが、それでも高いラインコントロールを狙った。1点目もオフサイドギリギリで飛び出されたし、退場のシーンもそうですが、ああいう形で裏をとられることは覚悟の上。そういう意味では、納得のいく失点です。最後の2失点はウチもリスクをかけて前に出た結果なので。
まあ、後半も11人でやりたかったのは正直なところ。でも、精一杯のプレーは出せた。広島を相手によく戦ったと思うし、点も取れた。総理大臣杯に向けて、自信にもつながりました」
Q:大武選手と皆川選手の戦いは見応えがありましたが。
「とにかく、強気にラインを上げていくことをやってくれました。昨年は0−1というスコアでしたが、自陣で耐えているばかりだったので、そういう試合とは違う戦いをやりたかった。言ってみれば、スペイン対オランダの時のオランダ代表をイメージしましたね。
ただ、大武もJ1でやっていくためには、背後へのプレーに対してもパーフェクトに抑えないといけない。彼もJ1で9試合を経験していますし、ラインコントロールも強気にやってくれましたが、結果的には裏を取られてしまったので。彼も昨年は佐藤寿人選手ともやっていましたが、皆川選手はまた違うタイプですからね」
Q:1人退場した後も守備的な選手を入れませんでしたが。
「MFの田村友を5バックのセンターに入れて5−3−1の形を整えました。なので、やはり守備を固めてはいたのですが、FWの野嶽が良かったので彼を中盤に下げる形で残しました」
Q:この1年間の成長を実感しましたか?
「名古屋で9試合出場を記録している大武の他、2点を取った山崎は鳥栖の強化指定でナビスコカップではフル出場を果たしています。今のチームはプロに進む選手が5人もいるし、1年の成長とJのピッチでの経験が加わっている。力は出せるチームなんです。
彼らは強い気持ちをもって戦ってくれた。2点目を取るまでのサッカーは本当に素晴らしい。一歩も引かない戦いは、誇りに思います。悔いはないです。やりたかったことを全て、やってくれた。同じ相手に負けたとはいえ、違うスコア。前進だと思います」
Q:田村選手を起用した理由は?
「実は木本恭生というDFがいるんですが、今回は大学選抜のスペイン遠征のため不在でした。
ただ選手たちそれぞれが自身の実力以上のものを出してくれた。そこは褒めてあげたい。
2年続けてJ1王者と戦うチャンスをいただき、感謝しています。また、広島のサポーターの皆さんも、試合が終わった後にあたたかく、我々を励ましてくれました。あわせて、感謝いたします」
以上
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