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【J2:第19節 東京V vs 栃木】レポート:互いに“らしさ”からの得点で、見応えある1−1のドロー。(14.06.22)

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ワンツーあり、スルーあり、ゴールあり。ようやく、“ヴェルディらしい”サッカーが見られた。

今になって思えば、前節、大量5失点の敗戦を喫したことで何かを大きく変えるタイミングだったことも奏功したのかもしれない。三浦泰年監督は、永井秀樹を今季初先発、南秀仁を今季2度目、15試合ぶりの先発、田村直也のサイドバック、鈴木惇のボランチ起用、そして、ケガ明けの平本一樹の先発復帰と、前節とは大きくメンバー・布陣を変えてきた。そして、明らかに、サッカーは変わった。

その象徴ともいうかのように、チームのファーストシュートも、1トップの平本と、トップ下の永井との、往年のソウルメイトによる連携から、平本が放ったものだった。そこから好感触を得ていくと、前半20分前後には、永井、平本、田村、安西幸輝、南らが様々な形で絡み、崩していく場面が多く見られるようになる。ここ最近、最終ラインから前線へ長いボールを入れ、そのセカンドから崩していくというスタイルを主としてきたが、東京Vの選手たちが本来得意としている足元でつないでのコンビネーションの崩しも増え、非常に見応えがあった。
そして前半40分。安在和樹の思い切って狙ったミドルシュートが南に当たり、上手くバックパスとなったところに走り込んでいたのは平本だった。左足で流し込み、東京Vが先制した。平本自身今季2ゴール目となる得点は、チームにとって4試合ぶりの「1点」となったのだった。負傷離脱中、「自分なりに、FWとは何かということを改めて考えた」という32歳。これまで「興味がない」と言い切っていたW杯も、今大会は観ているのだと明かす。その中で、「やっぱり、FWは足を振っている。僕もFWである以上、世間的にも“シュート”を求められているんだなと思いました。どんなにその他がダメでも、点を決めれば、FWは認めてもらえるんですよね」と得点がとれないチーム状況を外から見ることで、自身が周りから求められている役割、そして、できるチームへの貢献を整理し直したようだ。「とにかく、今日は積極的に足を振っていこうと(=シュートを打っていこうと)思って試合に入りました」。実際、背番号25のシュート数はチームNo.1の全5本。「僕はセカンドストライカー」だと、常日頃から語っていた彼にとっては、明らかに多かった。

それでも、この1点が決勝点にならないところもまた、平本らしいといえば、らしいと言えてしまうのである。後半7分、守備から攻撃へとボールをキープしようとしたパスを奪われ、ニウドが再び奪い返しに行ったが、栃木の湯澤洋介にさらわれ、パスを受けた小野寺達也の左足グラウンダーで同点に追いつかれたのだった。

以後、両チームは互いに攻撃的な選手交代に打って出る。前線にタイミング良い、速いパス出しができ、ダイレクトプレーでも絡める吉野恭平、チーム得点王の常盤聡を入れた東京V、瀬沼優司、重松健太郎という機動力ある2人を次々投入して決勝点を奪いにいった栃木。結果としては両者とも相手ゴールをこじ開けることはできず、試合は1-1でタイムアップとなった。

内容的に良いサッカーをしつつも、やはり「勝たなければならなかった」と永井。本当の意味での“東京Vらしさ”とは、勝ってこそ初めて使われる表現に違いない。勝点3を手にすることができなかった以上、結果的に悔いの残るものとなった。
それでも、この試合で見られた東京Vの収穫は多かった。まず、平本の復帰によって、とにかく前線でボールが収まった。信頼度も高いため、彼にボールが入る時点で、周りの選手は迷いなく攻撃のスイッチをオンにできる。ボランチ、サイドバックも安心して上がることができ、攻撃の枚数を増やして厚みある攻撃ができていた。また、「ヴェルディのDNAが残っている人間とは自然と合いますね」と永井が太鼓判を押した南の天性の独特の感覚も大いに生きていた上、仙台の時以来、東京Vでは初となった田村のサイドバック起用も攻守にわたって効いていた。そして、永井加入によって、前線で独特の溜めができたことで、攻撃のアイデアに多彩さが増した。「彼のプレースタイル、アイデア、落ち着きなどは、残念ながら十代の若い選手にはないストロングポイントです。彼から学ぶべき部分はこの試合であった」と、指揮官も惜しまず賛辞を口にしていた。

栃木としては、「東京Vが(前節の大量失点によって)前から来るのはわかっていましたし、気持ちがこもったプレーをしてくることもわかっていた」(GK鈴木智幸)にもかかわらず、「ちょっと受けてしまった」(阪倉裕二監督)のが悔やまれる。特に、最も警戒していたという「裏への抜けだし、落ちてきてのキープ、突破力もある」平本を潰せなかったことを、鈴木は非常に悔いていた。
それでも、徹底的に大久保哲哉にボールを入れ、そのセカンドボールに近藤祐介、廣瀬浩二、湯澤が絡んで攻め込んでいくという栃木のスタイルは東京Vを大いに苦しめた。特に、後半42分、44分、アディショナルタイムと、東京VのGK佐藤優也の好セーブに阻まれたが、途中出場の瀬沼、重松がフィニッシュを放って再三決定機を作るなど、持ち前のストロングを活かした形を試合終了間際まで披露したことは、間違いなく今後につながるはずだ。

もちろん、東京V、栃木とも「勝点3」を奪いにいった試合だけに、勝点1に終わったことは無念であることは言うまでもない。だが、同じ勝点1でも、互いに収穫のあった、価値あるドローだったのではないだろうか。少なくとも、観ている者には「何か」は伝わった一戦だったように思う。

以上

2014.06.22 Reported by 上岡真里江
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