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【J2日記】讃岐:29歳で夢を叶えたJリーガー1年生・綱田大志(14.06.11)

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29歳で夢を叶えたJリーガー1年生・綱田大志選手/写真=3月9日磐田戦

昨季のJ2・JFL入れ替え戦で勝利を願う讃岐サポーターの多くが口にしていた言葉がある。「大志をJリーガーにしてやりたい」。
“大志”こと綱田大志。讃岐にやってきて今季で8年目。チーム最古参の選手だ。

綱田選手がサッカーを始めたのは10歳の頃。父親の影響だった。その後、サッカーの名門である国見中学、国見高校へと進学。ただ、これはサッカーのために進学したわけではなく「地元だったから」とのこと。名将・小嶺忠敏監督の下でサッカーを徹底的に学んだ綱田選手は高校卒業後、鹿屋体育大学へと進学。“Jリーガーになりたい”という思いをより強く持つようになった。そんな時、大学の先輩で当時讃岐でプレーしていた徐暁飛(ジョ・ギョウヒ)氏から「Jリーグを目指しているクラブだから、讃岐に来ないか」と誘いを受け、卒業後の2007年に讃岐に加入した。
「何も知らずに来たから、環境面とか最初はびっくりした」と綱田選手が語るのも無理はない。その頃の讃岐はまだ四国リーグで戦っており、アマチュア選手も多く在籍していたために練習は夜の数時間のみ、練習場は地元の大学のグラウンドを借りるなど毎日場所を転々としている状況で雨が降れば休みに…。正直、とてもJリーグを目指しているクラブのようには思えなかった。

それでも、綱田選手は“Jリーガーになりたい”という夢を持ち続けた。「そこを持っていないとサッカーをやっている意味がない」。
クラブに変化が訪れたのは、加入して2年目の2008年。羽中田昌監督が就任して練習も昼間に変わり、もちろん雨が降っても中止にはならない。世間からも注目を集め始めた。しかしそれに伴い、多くの選手がクラブを離れることにもなった。それは、2年後に北野誠監督が就任した時、讃岐がJFL入りした時、Jリーグ入りした時も同様だった。クラブの状況が変われば選手が入れ替わるのも止むを得ない。綱田選手は、その寂しさもバネにしてきた。
「讃岐に来てからJリーグ入りするまでの7年間、くじけそうになったこともありました。それでもやって来られたのは、チームを離れた選手の想いもあったから。辞めたくて辞めた選手ばかりじゃない。今まで一緒に仲よくサッカーをしてきた仲間、辞めていった選手の気持ちを背負ってやってきました」

様々な思いを胸に、ようやく夢のJリーガーになれたのは29歳。少し年上のJリーガー1年生が誕生した。そして、公式戦デビューを果たしたのは讃岐のJリーグホーム開幕戦となる3月9日・磐田戦。「綱田大志、大志、大志、Oh Let's Go Taishi♪」と綱田選手のチャントが響き渡る。本人はもちろんのこと、家族やサポーター、多くの人が万感の想いを胸に聞いたことだろう。本人は、ピッチに立った瞬間を振り返り「うれしかった、やっとここまで来たなって。でも試合なので、いつも心がけている“気持ちは熱く頭は冷静に”を意識した」と語る。

綱田選手は、中盤でチームのために黙々と仕事をこなし黒子に徹するタイプ。決して派手さのある選手ではない。ただ、そんな彼のすごいところは、どの監督からも選ばれること。監督が変われば戦術も変わり、それまで試合にコンスタントに出場していた選手が出られなくなるのはよくあることだ。しかし綱田選手は、どの監督からも選ばれ続けてきた
「監督が求めている戦術を理解する。その中でも自分の良さであるシンプルにやること、簡単なことを簡単にやることは心がけている」と綱田選手。これこそが「綱田大志のプレースタイル」だ。

連戦が続く厳しいJ2での戦いの中で、息抜きは愛犬のダックスフント・ぷよとのひととき。そして開幕が間近に迫ったワールドカップも楽しみの1つ。「日本代表選手、全員に期待しています! 強いて挙げるなら、ポジション的にも遠藤保仁選手。視野の広さ、冷静さ、戦術眼…。まねしようと思ってもできないですね」と言う綱田選手に、「遠藤選手のパスは受け手に優しいとよく言われますが、讃岐の選手も綱田選手のパスは優しいって話してますよ」と言うと「いや〜、比べものにならないです」と大きく手を振った後「でも遠藤選手のプレーを参考にしていきたい」とプロの顔をのぞかせた。また、中学・高校で2学年上だった大久保嘉人選手については「もちろん、先輩として期待しています!結果を出してもらいたいです!」とニッコリ。意外にも(?)、学生時代の大久保選手はとても優しい先輩だったそうだ。

29歳でJリーガーという大きな夢を叶え、4月5日で30歳になった綱田選手に次なる夢を聞いてみた。
「いろいろあるけど…。来季もJ2に残留することはもちろん、今季の順位を1つでも上げたい。それから試合に出続けること」。

「サポーターの声援が大きいと、気持ち的にも奮い立つ」と言う綱田選手に、ますます熱いエールを送ってほしい。彼がまた新たな夢を叶えるために――。

以上

2014.06.11 Reported by 中條さくら(オフィスひやあつ)
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