今月10日のJ1第13節で対戦した時の内容を考えれば、1点を争う拮抗したゲームが展開されるものと思っていたが、終わってみれば3−0と点差の開いた予想外の結末となった。
柳下正明監督は「ゲームに入る準備が雲泥の差」と試合後の会見では開口一番に述べており、新潟としては立ち上がりから受けに回ってしまった試合の入りだった。先週末のJ1第14節・名古屋戦から3選手を入れ替え、そのため連携面や意思疎通の欠如なども影響したとは思うが、出し手と受け手のタイミングが合わず、ボールを奪って攻撃へ転じても、いつものダイナミックさが見られずにイージーな連携ミスでボールを失ってしまうなど、攻守において噛み合わない場面が見られた。
対照的に柏は非常に良い入りをした。前節の「90分間、何もなかった」という今季のワーストゲームとなった甲府戦の反省を生かし、どうやって攻撃を構築していくか、どうビルドアップしていくのか、そういう意識の高さが表れており、レアンドロ、工藤壮人、田中順也が普段以上に上下左右の動きをつけ、降りた選手がパスを引き出すと別の選手が裏に抜ける動きを見せ、そこに両ワイドの高山薫、橋本和が絡みながら、中央とサイドを使ったメリハリの利いた攻撃を展開していった。
ただ、柳下監督にすれば、それは「始めから分かっていたこと」。したがって、この試合では舞行龍ジェームスをボランチに置き、最終ラインの4人と舞行龍ジェームスの5人で守備の局面では5対5の形を作り、「その分、2列目の選手をもっと前でプレーをさせたかった」(柳下監督)との意図があった。だが先述の通り、攻撃時にはイージーなミスが発生し、しかも5対5の守備も、柏の3トップがフレキシブルな動きをしたことで、それぞれがマーキングを掴み切れずに混乱したのか、“はまりどころ”を見出せない。
9分に柏が先制した一連の展開は、「監督から、ああいうプレーをやれと言われていた」(高山)というように、能動的に攻撃を展開できなかった甲府戦を踏まえて、ネルシーニョ監督から鈴木大輔と高山に出された指示でもある。フルスピードでサイドバックの背後を突いた高山が折り返し、それをフリーの田中が右足でゴールへ流し込んだ形だ。ここでは、初出場となった新潟DF宋株熏はパスを受けに降りた工藤に気を取られたのか、オープンスペースを抜ける高山へのカバーリングが完全に遅れてしまっている。
柏の追加点の場面も、田中が左サイドに流れたことで舞行龍ジェームスを引き付け、そこに橋本とレアンドロが絡み、サイドに新潟の陣形を寄せてから手薄になった中央を突いたもの。レアンドロのポストプレーから、フリーの茨田陽生が豪快なミドルシュートを叩き込んだこの経緯も、どう相手を崩すかという柏の強い意識が表れたと同時に、ボランチと最終ラインでマークを掴み切れていない新潟の連携不足が浮き彫りになった場面だった。
柏がこうしたゲームに持ち込めた要因は、やはりキャプテンの大谷秀和の復帰が大きかったと見ている。新潟のキーマンであるレオ シルバへの牽制を含め、中盤でのセカンドボールへの対応の速さ、または縦パスを消すフィルターとしての役割、攻撃面では3バック、3トップ、両ウイングバックをつなぐリンクマンとしての働きや、キャプテンとしてのチームの落ち着きをもたらしたことなど、「タニ君(大谷)が中盤に入って、周りもバタバタすることもなく、(ボールを)取った後も攻撃につながったのでバランスはよかった」と増嶋竜也は振り返った。
2−0になった後は柏の術中である。新潟は後半スタートから小林裕紀、55分に川又堅碁、68分に田中達也と比較的早めの選手交代で、前半に比べればボールを動かせるようにはなったとはいえ、そこは柏が新潟にボールを持たせ、前傾にさせたところでカウンターを見舞うという狙いがあったからであり、柏の追加点は58分のCKによる渡部博文のゴールのみだったが、実際にカウンターから数多くのチャンスを作り出した。
勝った柏はグループBの首位に浮上。敗れた新潟は順位を落としたが、依然として上位は大混戦である。新潟はこの敗戦での教訓を中2日で迎える浦和戦に生かせるか、一方の柏は甲府戦の教訓を生かしたが、「まだ1試合なので浮かれていたらいけない。これを継続していくことが大事」(工藤)というように、この試合のパフォーマンスを今後も継続できるか。それが決勝トーナメント進出に向けた、両者の鍵になるだろう。
以上
2014.05.22 Reported by 鈴木潤
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