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【J1:第6節 甲府 vs 清水】レポート:ミスがらみもゴールはゴール。甲府と清水のジンクスは健在なのか。長沢の公式戦5戦連続ゴールで清水が勝利。甲府の1点打線は不発で開幕戦以来の負け(14.04.07)

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河口湖周辺ではうっすらと雪が積もるほど気温が下がった山梨県。諦めていた桜もかなりの花びらを残していて、予想以上に花見客が多かった小瀬スポーツ公園。開場の時間帯に少し雨が降ったものの、試合時間帯は寒いだけで雨には勘弁してもらえた。Jリーグとフェアプレーフラッグに両クラブの2枚を合わせたの4枚の旗が、甲府のゴール裏から清水のゴール裏の方向に強く吹く風にあおられる中、前半のキックオフ。風下の清水はロングボールを蹴っても最後はグッと押し戻される。冬の気圧配置になると吹いてくる八ヶ岳颪(おろし)だと思うが、甲府はこの風を利用しようという強い意図は感じなかった。盛田剛平を先発起用していれば利用しただろうが、水曜日のヤマザキナビスコカップで足首を捻挫したクリスティアーノが間に合い、ワントップはクリスティアーノでジウシーニョと河本明人のツーシャドー。清水は長沢駿をワントップに置く4−2−3−1。長沢はユースからトップに昇格した選手なのでまだ若いという漠然としたイメージを持っていたが、メンバー表を見ると25歳で、プロ8年目。大卒の即戦力ルーキーに対する人気が高い中、ストライカーを育てるには時間がかかることも覚悟しないといけないのだろうと感じた。

序盤は風の影響も観察しながらお互いに様子見の展開。ただ、清水のゴールキック時に甲府は5バックになるのだが、それを跳ね返しても後ろに5人が並んでいるからセカンドボールを拾う選手が少ない印象が強かった。いつも通りと言えばいつも通りなのだが、甲府のバランスがなんとなく悪いようにも感じていた。ゴール裏を見ると、清水はアウェイながらも甲府よりも多くのサポーターがゴール裏の席を埋めていることは見ただけで分かるほどの差。甲府がクラブ消滅の危機からJ1に3回も昇格できるようになる発展を遂げたことは素晴らしいが、この先のステップアップには違った次元の複数の課題に取り組まないといけないということを感じながら見ていた。昔を振り返ったのがいけなかったのか、22分に懐かしい失点をしてしまう。

距離は長かったが、強く蹴っていれば問題のなかったDF青山直晃からGK荻晃太へのバックパス。蹴った瞬間、「ショート」と思ったが、荻が前に出始めた瞬間に「間に合う」と感じた。テレビ中継ではGKの動きは映っていなかったが、スタンドで俯瞰している観客の多くもそう感じたはず。しかし、荻は何歩かの間に戻ることを決断。「出ないのか…」。その判断を責める気にはならないが、あそこで出てフィールドプレーヤーのミスを帳消しにするクリアができればヒーローだった。結果的にはバックパスがノヴァコヴィッチへのスルーパスにみたいになり、佐々木翔が逆サイドからカバーに走ってスライディングで止めようとしたが、中に入れられ長沢がフリーでゴールイン。あっけなく長沢の公式戦5試合連続ゴールを許してしまった。この失点は甲府がJ1初昇格(05年)を果たした頃から2回目の昇格(10年)の間の時期に見たことがあるような懐かしい感じがするのと同時に、ここ数年で全体のクオリティが上がっていたんだなぁと再確認できた失点。

この1分後にも決めた長沢のゴールはオフサイドだったが、浮いたポジションを取って狭いエリアで精確に技術を発揮できる長沢の上手さに凄さを感じた。「僕がエスパルスに復帰する時に誰も期待していなかったと思う」という長沢。昨年の松本での3ゴール、一昨年の京都での2ゴール(天皇杯含む)では鳴り物入りの復帰という感じではなかっただろう。「今はゴールを決めたことが自信になっている。チームメイトがいいパスを出してくれるので、その分自分も前線からの守備でも身体を張って頑張らないといけないと思っている。『連続ゴール』と言われることもいい刺激になっている。『(長沢が)復帰してよかった』と言われるようになりたい」と言うように、好循環の中でストライカーとして成長している。育成で6年、プロで4年、そして3年間のJ2クラブ転勤生活を経て清水に戻った長沢。熊本→京都→松本と清水に近づきながらの転勤だったが、監督やチームメイトとの巡り合わせも今年はハマっているのだろう。清水は我慢の末に宝物を手にした。

後半、甲府の選手の中では一番最初にピッチに出てきたのが青山。取り返したという強い気持ちでいることは明らか。かなり寒いのに半袖でいられるほど熱い。城福浩監督は54分に189センチの盛田剛平を投入してWBの福田健介を下げる。公式戦では初めてだが、ジウシーニョをシャドーからウィングバックに入れる配置で同点を狙う。しかし、盛田の途中投入はチームとしての攻撃のエンジンがかかるのに少し時間がかかる。負けても責任は取らないし、勝っても勝利給を貰えない立場で言うと――長い時間使うことによる盛田の腰の状況は不安だが――先発の方がハマる印象がある。62分に石原克哉を入れても、プスン、ブルブル、プスン、ブルブルでもう一つ。68分に下田北斗を入れるとようやく暖まったのブルルルンとエンジンが回り始めた。下田が見せる積極性が最後のパーツになったのか、ポゼッション率が上がりクリスティアーノのシュートがバーに当たる惜しいシーンも出てきた。72分にもクリスティアーノの左からのシュートがポストに当たる。ファン・ペルシ(マンU)なら決めているところだけど、甲府は年間予算(約15億前後、J1クラブ平均の約半分)のほとんどを一人の選手に支払うような余裕はないから、「惜しい〜」でガマンガマン。ルーニー(マンU)が欲しければ5億円くらいは銀行から借りないと足りない。そして、他の選手にはバイトしながらプレーしてもらうことになる。結局は甲府の1点打線は今節は不発で、同点にも持ち込めずに開幕戦以来の負けとなった。開幕戦以来のリーグ戦勝利となった清水は対照的。

試合後の記者会見は両チームともに盛り上がらなかったというか、質問がし難い試合内容だった。ポツポツ質問が出ただけだが、甲府としては城福監督が言った、「受け入れることが難しい試合」に集約される。リーグ戦で清水に勝てないという記録も伸びてしまった。これで1分8敗。9試合で2点しか取れていない。試合後の混雑したミックスゾーン。すれ違ったジュリオコーチ(甲府の元通訳)に「ジンクスってあるのかなぁ」と話しかけた。「そうだね」を予想していたが、帰ってきたのは、「たぶん違うと思うよ」。ジュリオは9試合中6試合を甲府の通訳として見ていて、3試合を清水のコーチとして見ている。「えっ」と思ったが、選手コメントを取らないといけないのですれ違い、続きを聞けなかった。Jリーグの日程は上手くできているもので、甲府の次のアウェイ清水戦は最終第34節(12月6日)。勝ってからジュリオの意見を聞きたい。

以上

2014.04.07 Reported by 松尾潤
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