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【J1:第3節 広島 vs 浦和】プレビュー:自分たちとは違う相手の存在あってこそのサッカー。リスペクトを以て、勝利を目指す。(14.03.15)

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純粋に、僕たちはサッカーが見たい。
ただひたすらに、選手たちの熱いプレーが見たい。
しかし、そうさせない何かが常に存在する。広島対浦和戦とは、そういう定めにあるのだろうか。
3年連続して浦和に人材が流失した広島だが、その痛手よりも連覇の充実が上回り、さらに林卓人をはじめとする即戦力の補強にも成功したとあって、日本有数のビッグクラブへの怨念のような「どす黒さ」は薄れていた。野津田岳人や浅野拓磨ら若手の成長もあってFUJI XEROX SUPER CUPでも連覇を達成。リーグ戦でも強豪・C大阪や川崎Fに連勝と、これ以上ないスタートを切った。5日間で1万4000キロにも及ぶ移動に加え、続出する負傷者の中でACLでは苦戦を強いられているが、それでも決勝トーナメント進出のチャンスは十分。過去の恩讐にとらわれず、ここまで公式戦4連敗中の浦和に、真っ向から挑戦する純粋な意気込みで今年は臨めると思っていた。

ところが、浦和側の事情が激動する。
3月13日、村井満チェアマンは前節対鳥栖戦における一部浦和サポーターの行為を「差別的行為」と認定し、23日に行われる浦和対清水戦を「無観客試合」とする処分を発表した。また、浦和は当該サポーターグループに対し無期限活動停止および無期限入場禁止処分を課すと同時に、広島戦以降すべての公式戦で横断幕やゲートフラッグ等の掲出を禁止した。

広島ももちろんそうだが、浦和もサポーターと共に、ここまで歴史を刻んできたクラブである。平均来場者数が2004年以来10年連続して3万人を超えるクラブなど、浦和の他をおいてない。2012年度決算の営業収益は53億5300万円(2位鹿島が41億6000万円)、うち入場者収入が19億8800万円(2位F東京が8億1700万円)。J1の中でも突出した予算は突出した来場者数がもたらした産物であり、サポーターが浦和レッズというクラブを支えているのは数字を見ても明白だ。低迷したJ草創期を共に戦ったサポーターの存在なくして、ACL制覇を含む5つのタイトルを獲得した強豪への成長はなかった。

そんな浦和という尊敬すべき相手に広島は挑戦し、勝利することを願って努力を続けた。2001年以降の対戦成績は4勝3分15敗。埼玉スタジアムでは1勝1分7敗と圧倒的に負け続けた歴史。様々な思いは交錯するが、強い浦和に真っ向から戦いを挑むことで、成長したことは疑いない事実。連覇したここ2年も、ミハイロ ペトロヴィッチ監督が駆使するマンツーマン・ディフェンスを破れず、完敗を連ねた。だからこそ、「浦和に勝ちたい」という気持ちは増幅し、精進も重ねたのだ。「(西川)周作からゴールを決めて勝つことしか、考えていない」という佐藤寿人の言葉が、浦和へのチャレンジ精神を明確に表現している。連戦や長距離移動の疲労はあってもなお、身体を奮い立たせることができるのは、「強い相手と戦う」という闘志の存在があればこそだ。

実は森保一監督は、対戦チームのことを「敵」と表現したことはない。「リスペクトするべき相手」と表現する。「サッカーは相手の存在なくして、始まらない」というのが、広島の指揮官の口癖だ。それはかつて、ミハイロ ペトロヴィッチが広島の監督時代にも、よく聞いた言葉である。

まず、相手の存在を認める。その上で勝利するために全力を尽くし、試合後は健闘をたたえ合う。その精神があるからこそ、スポーツは平和の手段となりうる。しかし、自分たちとは違う相手を認めない排他主義から生まれるのは憎悪だけであり、スポーツは争いのみに堕ちていく。サッカーを戦争に例える向きもあるが、本当の戦争がいかに醜いものか、想像しなくてもわかるだろう。これは、きれいごとではない。

広島は2年連続してフェアプレー賞 高円宮杯を受賞。サポーターも昨年の大宮戦での行動をたたえられ、チェアマン特別賞を受賞した。いわば、Jでもっともフェアプレー精神を持つクラブと言っていい。だからこそ、浦和レッズというチームとサポーターに対し、まずリスペクトを以て迎えたい。もちろん、試合に勝利すべく全力を尽くした上で、試合後は互いに健闘をたたえ合いたい。それができるのが、Jリーグのすばらしさだと個人的には考える。

以上

2014.03.14 Reported by 中野和也
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