試合が終了して選手が戦いを終えると、今度は記者の戦いが始まる。締切時間を気にしながらの原稿作成も大変だが、特に慌ただしく厳しい戦いは両チームの選手へのコメント取材だ。選手が取材対応エリアにいる限られた時間内に、一定人数のコメントをとらなければならない。時には自分が必ず話を聞きたいと思う選手が同じタイミングで現われ、どちらの話を聞くべきか選択を迫られる。もちろん、やむを得ず知り合いの記者にお願いして、自分が聞けなかった選手の話をあとで教えてもらうこともある。だが、筆者のポリシーとしては、伝聞ではなく自分が選手から直接聞いた話、それもできれば自分の質問に答えていただいた話をメインに掲載したいという思いがある。
その場合、小心者の筆者が若干気後れを感じるのが、千葉が試合に勝った時のアウェイチームの選手への取材だ。ただでさえ敗戦で悔しい思いの中、選手によってはあまり話もしたくないだろうに、自分やチームのことをよく知りもしないような記者から敗因に関する質問をされて気分がいいわけはないと思う。それでも、紳士的にしっかりと取材対応をしてくださる選手がほとんどでいつも感謝しているのだが、そんな時に筆者がつい頼ってしまうのが、過去に千葉に在籍したり、大学サッカーの取材で面識があったりする選手だ。
３月９日の第２節・岡山戦では、鎌田翔雅選手と竹田忠嗣選手にコメント取材をした。２人とも過去に千葉に在籍して顔見知りということもあるが、鎌田選手は現在の千葉のストロングポイントの山中亮輔選手＆中村太亮選手がいる左サイドの対面にいたから。そして、竹田選手は千葉在籍時からＤＦながらも攻撃面も含めたチーム全体の試合での状況、課題や収穫をしっかりと把握して分析し、きちんと言葉にしてくださる選手だからだ。
その日も竹田選手は筆者の質問に対して非常に充実した内容の答えを返してくださった。そして、最後に筆者が「結果は個人的にもとても悔しい感じになって…」と言うと、竹田選手はこんなふうに話した。
「メッチャ悔しいですね。千葉は（竹田選手の在籍時と比べると入れ替わりが多くて）なんかもうほとんど知らない選手ばかりなんですけど、クラブのスタッフの人はみんな知っているし、千葉戦だとよく取材されて『いつもと違いますか』とか聞かれるし。そういう時は『いや、気にしないです』と答えながらもやっぱり気にしている。しかも、昨季の天皇杯（３回戦）の柏戦ではウチが最後にＰＫで失点して負けたんですけど、山中選手が途中で出てきてから柏がイケイケ状態になったんです。彼は今日もイケイケ状態で岡山キラーですね。今は柏から千葉への移籍もあるんですね。千葉には早くＪ１に行ってほしいです」
後日、時間が経ってから冷静に試合を振り返る話も貴重だが、試合での興奮状態が残っている時ならではの本音も聞けるのは試合後のコメント取材の良さだと思う。

試合後のコメント取材から選手のサッカーに対する姿勢を改めて感じることもある。
今季、山形から加入した千葉の中村太亮選手に練習後の取材で移籍の理由について改めて聞いた時、中村選手は「山形ではずっとスタメンで出られていたのはよかった。今季の山形はチーム（の監督や選手）がほとんど変わっていないから、またスタメンで出られるかもしれないけど、それでは自分は成長できないんじゃないかと思うし、選手が成長しないとチームも成長しないと思うので移籍を決めました」と話した。一般的に選手はスタメンで出られることを願い、それがかなうチームを選びがちだと思う。だが、安泰の可能性が高いスタメンの座を捨てて移籍する考えに、中村選手は自分に厳しいタイプと感じた。そして、その思いは３月２日の開幕戦の試合後のコメント取材で一層強まった。
その試合で千葉は無得点だったが、３回の決定機はすべて中村選手のクロスからだった。シュートを打った選手に対して「決めてくれよ」という思いがあってもおかしくない。だが、J's GOALに掲載されたように中村選手からは「結果に繋がらないと何の意味もない。自分がいいボールを上げ続けないと中も決められるチャンスがないので、ああいうクロスを１００％の確率で蹴れるようにしたいです。今日も自分のクロスが全部成功していたら、そのうち１本くらいは決めてくれたかもしれない。もっともっと自分のクロスの精度を上げたいと思います」と反省し、自分を戒める言葉ばかり出てきた。
試合をやっている時に何を感じ、どう考えて、どのプレーを選択したのか。それをすぐ選手に直接聞けるからこそ、試合後のコメント取材は大変だけれども、とてもおもしろい。

以上

2014.03.13 Reported by 赤沼圭子