3年ぶりの開幕戦勝利に、チームのムードは非常にいい。だが、決して浮ついてはいない。巻誠一郎はこう話す。
「開幕戦に勝って雰囲気が盛り上がっているのは確か。でも1勝で満足するんじゃなくて、気を引き締め直して、もっとアグレッシブにプレーしないといけない」
小野剛監督も、「プレシーズンからやってきたことが染み付いて、頭で考えるまでもなく身体が動くようになっている。それは選手達も感じていると思います」と話す一方、「1度(開幕戦で)やれたことを次もできるかどうか、しっかり継続することが大事」と口にする。
熊本は週に2回のピークを作る意図で、昨シーズンまでとは試合に向けた1週間のサイクルを変えた。木曜の休養日を前に、今週水曜には流通経済大と45分×3本のトレーニングマッチを行ったが、この練習試合では「スタートから最後まで力を抜かずにやりきること」(小野監督)をテーマの1つに設定。ゲーム中には、「ちょっとずつ甘くなってるぞ、試合でも出るから、ここ、しっかりいこう!」と、選手達がピッチ内で声をかけ合う場面が見られた。迎える松本が前節、立ち上がりと前半アデイョナルタイム、そして試合終了間際と得点を重ねていることを考えれば、その意識付けも必然だ。
過去の戦績が1勝1分2敗、ホーム戦に限れば2年連続0-3というスコアで敗れているのを抜きにしても、松本は簡単な相手ではない。反町康治監督が就任3年目を迎えてチーム全体が進化しているのはもちろんだが、そこに加えて「常にフルパワーで、エネルギッシュなサッカーをするのが大前提」と、キックオフカンファレンスの際には話していた。その言葉通り、開幕戦では船山貴之のハットトリックで東京Vを3−1と一蹴した。今シーズンはキャンプ後も積雪で練習できないために松本へ帰れず、静岡に移って開幕まで調整を続けることになり、さらに2週続けてアウェイでの戦いとなったことで心身両面での負担もあろう。それでも、次節のホーム開幕を待ちわびる地元サポーターのために何としても――昨シーズン第3節のホーム開幕戦で敗れていることもあって――熊本を叩いて帰りたいところだろう(ちなみに、この3節のアウェイ松本戦が熊本にとっては昨季の初勝利だった)。
東京V戦での船山の3得点は全てセットプレーからだったが、1点目のPKにつながった場面も含め、セカンドボールへの反応の早さや局面での思いきった判断、つまり積極的なプレーの選択がもたらしたもの。リスタートの場面でも相手を動かす工夫があり、それによってできたスペースを使う意識が連動している。またキャンプ期間中には4バックを進めてきたようだが、反町監督曰く「紅白戦、選手の状態、相手のスカウティングの3つをかけあわせて」前節は3バックを選択。相手に応じて、またシステムに関係なく、やろうとするスタイルが深まっていることがうかがえる。
そうした相手に対し熊本にとってポイントとなるのはやはり、冒頭で触れた通り、前節できたことをより高いレベルで継続できるか、ということ。「まぁ、3(バック)で勝っているからね」と小野監督は笑っていたが、松本のシステムがどちらであれ、熊本に求められるのは、まずはボールに対してプレッシャーをかけ、全体をコンパクトに保って相手が自由にプレーできるスペースを与えないこと。仮に相手が3枚であれば、前節同様に裏や両脇のスペースを狙うのが有効だが、押し込んでブロックを作られれば、それを引き出し崩すためのアイデアも必要。前節の福岡戦では、つなぎの部分でのミスや慌ててロストする場面もあったことを踏まえ、「自分たちが無駄に消耗しないためにも、落ち着かせるところとのメリハリが大事」と巻も言う。トップのサビア、あるいは塩沢勝吾にしっかりと身体を当てて自由に競らせない、適切なポジションをとってセカンドボール争いで優位に立って起点を作らせない、早い切り替えで相手の薄いところを突く、そして相手よりも走る、そうした言わばサッカーの原則とも言える部分、ベーシックな要素が勝敗を分けることになるだろう。双方ともが前節得点につなげたリスタートもポイントとなるため、不用意なファウルでFKを与えないよう、特にゴール前ではセーフティファーストを意識したシンプルな判断も心がけたい。細かいプレーを正しい判断で積み上げることで、90分の中で勝機は見えてくるはず。
ともにJFAスタッフとしての経歴を持ち、智将として知られる指揮官同士。2003年には、それぞれが率いた広島と新潟でJ1昇格を果たした小野監督と反町監督が11年ぶりにJ2の舞台で相まみえる一戦は、ピッチで起きることだけでなく、ベンチワークにも注目が集まりそうだ。
以上
2014.03.08 Reported by 井芹貴志
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