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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J1:第32節 甲府 vs 大分】レポート:“ほぼ”残留決定を確定にする価値ある勝点1をもぎ取った甲府。大分は主導権をとりながらも決めきれず(13.11.24)

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今節、甲府は引き分け以上でJ1自力残留が決まるという条件だった。ただ、前節大宮に勝利した時点で16位・湘南との勝点差が残り3試合で9ポイントとなり、得失点差でも14のリードがあったため、公に残留決定とは言えなかったが、「“ほぼ”残留決定」という表現をされてきた。代表戦があったために3日前の熊本での天皇杯4回戦(対札幌)を挟んだ12日間を、「ほぼ」の状態で過ごしてきた甲府の選手・スタッフ、ファン・サポーター、スポンサー、クラブ関係者。J1残留“ほぼ”決定を喜びたいけれど、公だろうが私的だろうが大喜びするのは「ちょっと違うかも」的な12日間だった…はず。

3日前の天皇杯4回戦で120分間プレーした山本英臣、佐々木翔、柏好文、パトリックの4人と、約100分間プレーした河本明人に39歳・伊藤輝悦も4回戦に続いて中2日で先発。希望的予想ではそれでも何とかなると思っていたが、前半のキックオフ直後からいつもの甲府ではなかった。湘南の激烈な追い上げの中で勝点を重ねてきた緊張感を、「ほぼ」の中で全員が等しく持つことは難しいとは思うし、コンディションが厳しいなかで「ふわっと」試合に入ってしまっている印象を記者席からは持った。選手を責める気はないが、広い意味で“難しい試合”の始まりだった。

ボールを奪う大分の守備の圧力もすごかったが、甲府はなかなか前線にボールが収まらなかったし、大分の圧力に追われることが少なくなかった。札幌戦に帯同していなかった選手にも比較的単純なミスも出ていたが、11人のなかでいつも以上の勢いがあったのが右のウイングバック柏。いつもならカバーして貰う右CB青山直晃を逆にカバーをするシーンもあり、天皇杯を含めた2013年の終わり方に賭ける強い意志・想いが3日前に120分プレーした疲れを超越しているようにも感じる動きだった。ただ、難しい試合を個人で打開するには試合が難しすぎた。パトリックが柏対策で左サイドバックに入っていた松原健からフィジカルの強さを活かしてボールを奪ってシュートに繋げるシーンなどがあったものの、終盤戦の甲府の課題である遅攻の部分では組織として柏やパトリックの個を活かすことは難しかった。

大分は昨年のJ1昇格プレーオフの殊勲者である林丈統を先発させたのだが、プレッシャーをガツガツ受けて戦う高松大樹とプレッシャーの薄いところを探してプレーする林のコンビに甲府は手を焼くことになった。相手ディフェンダーが捕まえ難い動きをする林につられると、空いたスペースやマークが曖昧なところに2列目からは為田大貴や甲府市出身の宮沢正史らが出てくる。甲府は守備のブロックができているときならば大抵の攻撃を跳ね返せるが、自分たちのディフェンスラインや中盤のミスが大分の攻撃の始まりであれば、脆さは出てしまう。開始3分に宮沢に打たれた決定的なシュートはそれで、甲府は大分のシュートミスに助けられた。

後半も甲府は5−4−1のブロックができているときの守備は堅かったが、遅攻では大分の積極的なボールを奪う守備をかいくぐることが難しかった。逆に大分は、56分のCKでチャンスを迎える。ニアで高松が頭で擦らせたボールがそのまま甲府のゴール前にふらふらっと流れ込んできて、ファーで頭でパチンと合わせればいいだけのボールに。甲府にとっては肝を冷やすシーンだったが、山本がアクロバティックな動きでクリアし事無きを得た。その後、お互いに選手交代で1点を狙いに行くが、甲府はよくないなりに守備の堅さは発揮し、主導権を取る時間が長かった大分は、その時間に見合うほどの決定機を作ることができず、1、2度の決定機も決めることができなかった。3分間のアディショナルタイムに大分は途中出場の西弘則が甲府のゴール前に飛び込んだが、シュートは打てず天皇杯4回戦・柏戦の再現はできずに0−0でタイムアップ。

湘南の結果(引き分け以下)でJ1残留を決めることは約1ヶ月ぶりに山梨中銀スタジアムで戦う甲府にとって不本意。引き分けが甲府の最低条件だったが、直近の公式戦5試合で3勝2敗の大分からよくないなりにも勝点1をもぎ取ったことはよかったし、柏が「自分たちの手で残留を決めることができたよかった」と話したが、その通りだと思う。この試合内容を「面白くない」と思った人は少なくないかもしれないが、パトリックがシュートを外したシーンなどで「あ〜っ」、「あ〜あ」などとタメ息を思わず吐き出してしまっては選手の背中は押せない。日本で生まれ育てば、この「あ〜っ」や「あ〜あ」に悪気はなく、普通に出る反応だということは誰もが知っているけれど、メインスタンドやバックスタンドの数千人から一斉にタメ息を吐かれる立場をちょっと想像してみれば、「ぐっ」と飲み込んだ方が断然ポジティブ。学校の先生や上司や母親にタメ息を吐かれるだけでも辛いのに、応援してくれている人が一斉だと悪意がないことは分かっていてもちょっと辛い。スタンドとピッチが一体となって自分たちの誇りやアイデンティティの象徴であるチームを育てる…的な感じでJFK甲府をもう一段上に押し上げたい。前半には売店で焼いている焼き鳥か何かの煙がピッチにだいぶん濃く流れ込んでダービーマッチをやっているときのセリエAのスタジアムみたいになりかけたが、シュートを外したときの反応でも、「オッゥ(次は決めてくれ)」みたいなヨーロピアン的な反応で山梨中銀スタジアムの魅力アップを図ろうではありませんか。

一方、大分は“勝てる試合を逃がした”と表現していいのか少し迷う内容。悪くはないけれど、ゴール前の迫力や精度はもう少し必要ではないだろうか。バスケットボールのようにバンバン点が入るスポーツではないから決定機の数も増やす必要がある。林は、「若い選手や経験の少ない選手が多く、残留争いをする中でプレッシャーに耐え切れない精神的な部分があったと思う。(降格してしまったが)サポーターが天皇杯に賭ける気持ちは強いと思う。そのためにもリーグ戦でいい試合をして繋げたい」と話している。天皇杯準々決勝を含めればホームゲームはあと2試合。次節のホーム川崎F戦で今季初のホーム勝利を掴むためにこの引き分けの課題を活かす一週間にしたい。

以上

2013.11.24 Reported by 松尾潤
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