敗因は“中村俊輔がいなかったから”。

そう言ってしまえば簡単だが、その影響は試合前にある程度、わかっていたこと。よって、中澤佑二が言った「(中村)俊がいないのに、俊がいる時と同じサッカーをやってしまった」ことが正しい敗因になるのではないだろうか。具体的に言えば、普段ボランチの中町公祐に「中村役」を、中町が抜けた位置に入った小椋祥平に「中町役」を、そのまま演じさせようとしたこと。中町は中町であり、小椋は小椋である。それぞれに違う持ち味があり、それを一番発揮できる持ち場がある。それを、即席で普段と同じ“型”にはめ込もうとしても、どうしても無理が生じてしまう。結果論ではあるのだが、この日はそれが裏目に出てしまい、特に守備に関して「バランスが悪かった」（小林祐三）。そのためセカンドボールをなかなか拾えず、攻撃にも響いた。

拙守は、２つの失点場面でもうかがえた。８分の失点シーンは直接的には中澤佑二のハンドから得たPKをケネディが決めたものだった。しかし、その前に問題があったと思う。ハンドを誘発したクロスを上げた阿部翔平に対してノープレッシャーで、対応に遅れたからだ。

53分に献上した決勝ゴールは、あっさりと決められた。その直前、51分の兵藤慎剛のゴールに安堵したからなのか、中盤でのマークの受け渡しで「一瞬、人に任せる感じになった」（栗原勇蔵）ため、後手を踏んでしまい、スルスルと前線に上がってきた藤本淳吾がフリーで難なくゴール。そこに５試合連続無失点中だった鉄壁の守備の面影はなかった。

一方、この日の名古屋は、中村の幻影を意識した戦い方に苦慮した相手を尻目に、自分たちのストロングポイントをシンプルに発揮。練習では、ボランチのダニルソンをサイドハーフに起用する新方策も試すなどしたが、結局、前節の大宮戦から先発２人を変え、藤本と田口泰士が復帰して臨んだ。それでも選手たちに「戸惑いはなかった」(楢崎正剛)。

ゲーム中、時よりスタンドからどよめきが出たほどのケネディの長い足を駆使した圧巻のポストワークを軸に据え、サイドからの速い攻撃を遂行。それに中村不在の横浜FMが付き合う形になったことも幸いしたが、改めて個の力のあるチームだと見せつけた。また、前節途中からFWに入った闘莉王だが、今回は守備に専念。終盤にダニエルを投入してシフトチェンジした３バックの中央で、相手のパワープレーをほぼ完璧に跳ね返し続け、首位に一泡吹かせることに成功した。

横浜FMで唯一、輝きを放っていたのは齋藤学だろう。本人も「自分のプレーはそれなりにできたかなと思います」と言っていたが、ドリブル突破は、日本代表選手に相応しいものだった。兵藤の得点場面でも、その切れ味に脅威を感じた名古屋DFが彼を数人で囲み、兵藤がフリーに。齋藤はその隙を見逃さず、冷静にパスを通した。残り３節、この若武者の勇躍がなければ、「優勝」の２文字は見えてこない。

以上

2013.11.11 Reported by 小林智明（インサイド）