この試合にのぞむ両チームのモチベーションについて、事前に外野の立場からあれこれ推測することもできるといえばできる。仙台は前節の敗戦により優勝の可能性が無くなっただけでなく、ACL出場の権利を獲得する3位に入るのも難しくなった。対して、浦和は首位と勝点差2位につけ、試合当日はキックオフを前に「広島と横浜FMの結果は知っていて、首位に立つチャンスは理解していました」(梅崎司)という意識を共有。勝って首位に立つために士気を高めてゲームに入った。
しかし仙台の側にも負けられない理由は多い。次の週末には天皇杯4回戦が待っている仙台はこの大会にタイトルの可能性を残しており、そこに向けて弾みをつけられる内容と結果を手にしたいところ。また、今季でチームを離れる手倉森誠監督とともに作り上げてきたチームの集大成を見せたい。優勝を狙う浦和と対戦できることを「いやがおうにも燃えるシチュエーション」(手倉森監督)と前向きにとらえてもいる。何より、ホームゲームなのだ。「勝利を期待して来てくれるお客さんに応えたい」と菅井直樹も気合いを入れていた。
このように、仙台と浦和、それぞれのチームが持つ思いには、外野が推測よりもずっと多くのものが込められている。それを90分間+アディショナルタイムで伝えられた一戦だった。
両者の意地がぶつかったゲームは、激しい点の取り合いとなった。
開始2分、勢いよく攻めこんだ仙台は、石川直樹のクロスを赤嶺真吾が落とす。これを少し引いた位置から打ったウイルソンのシュートは、山岸範宏の手をかすめてゴールイン。いきなり試合が動いた。
しかしこれで浦和の攻撃性に火がつき、9分には宇賀神友弥の折り返しを受けた梅崎司が、見事なステップで石川直を振り切って同点ゴールを奪取。その後も柏木陽介と阿部勇樹の両ボランチから適確なタイミングでボールを散らした浦和が仙台を押しこみ、31分の興梠慎三のゴールで前半のうちに逆転に成功した。リードして折り返した浦和には、そのまま後半にも複数点を追加しそうな勢いがあった。
ここで仙台ベンチが修正を加える。2トップの位置関係を中心に動かして「4-2-3-1にして、取った瞬間にアクションを起こそうとした」(手倉森監督)。後半立ち上がりにもぎ取ったセットプレーで赤嶺真吾が同点ゴールを決めた後も、仙台の攻勢が続いた。守りが薄くなった隙を突かれて興梠にこの日2点目を決められても仙台は勢いを落とさず、攻撃的な選手を次々3人投入してさらに攻めに出た。
浦和も山田暢久と坪井慶介を投入して1点を守ろうと守備を修正。前半とは対照的に仙台が攻めて浦和が守るという展開が続き、アディショナルタイムを迎える。そして90+2分、仙台は左サイドのFKを梁勇基が同サイドの武藤雄樹に流す。武藤が持ちこんだ後にクロスを送ると、これが相手に跳ね返って石川直のもとにこぼれた。「(利き足と逆の)右足であんなシュートを打てるとは自分でも驚き」というシュートが突き刺さり、仙台が土壇場で追いついた。
殊勲の石川直は「この寒い中でこれだけ大勢の方が集まってくれたので、その方々に対しても最低限のかたちでしっかりベガルタ仙台のサッカーを見せられたのは良かったと思います」と試合後に振り返った。優勝争いという大きな要素はもちろんあった。だがそれ以上に、気温10.4℃の宮城スタジアムを熱くしたたくさんの両サポーターの気持ちに応えるため、両チームがプロとしてすべきことを見せた結果が、このエキサイティングなゲームを生んだ。残り3節。Jリーグはますます熱くなる。
以上
2013.11.11 Reported by 板垣晴朗
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