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【J1:第30節 広島 vs 仙台】レポート:10月26日はナオキの日。5本目に決めた石原直樹の執念が仙台を崩し、広島の希望をつなげた (13.10.27)

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佐藤寿人の最近の口癖は「直樹にアシストしたい」。森崎和幸も「直樹にゴールを決めさせてやりたい」と事あるごとに語った。石原直樹は間違いなく、チームメイトに愛されている。
シャイであり、取材陣が喜ぶようなコメントも苦手。チームになじむのにも時間がかかった。だが、誠実さをいつも失わず、常に努力を怠らない。うまくいかなくても、それを他人のせいにする言葉を聞いたこともない。ピッチでは常に戦い、ハードワークを続け、身体を張り続ける彼の姿をを見ているからこそ、選手たちは願った。「直樹に決めてほしい」と。大宮戦でのハットトリック以来、出場した10試合連続でゴールがなくても森保一監督が彼を先発から外さないのは、得点という数字に現れない攻守にわたる高い貢献度を認めていたからだ。

だが、石原自身は得点が取れない現実に、全く満足せず、自分を責め続けた。5アシストは高萩洋次郎の9アシストに次ぐチーム2位。しかし、そんな実績に対しても背番号9は興味を示さない。慢性的な足の痛みを抱え、シュートを全力で打てず、居残り練習でボールを蹴ることもできない。それでも彼は弱音もはかなかった。

仙台戦は、石原直樹の日だった。
前半から球際を厳しく戦い、ボールを奪い、前へと運んだ。12分、青山敏弘からのパスを受けてのシュート。32分は高萩のFKからヘッド。その4分後にはミキッチのクロスをまたもヘッド。石原が前半に放った3本のシュートは全て決定的。だが、ボールが枠に飛ばない。68分には青山の縦パスを受け、反転してのシュート。身体能力が高く柔軟性もある石原ならではのスーパーなプレーだったが、シュートは林卓人の守備範囲だった。

圧倒的に広島がゲームを支配し、前半のシュート数は10対1。しかし、最後のフィニッシュが決まらない。石原は、自分自身に責任を強く感じていた。「もし勝点を落とせば、自分のせいだ」。そんなネガティブな気持ちが湧いてくるのを必死に振り払った。
森保監督は悩んだ。チャンスはつくっている。主導権を握っている。だが、ゴールを決められない。野津田岳人や浅野琢磨ら、若いアタッカーたちは練習でも結果を出している。彼らを投入した方がいいのではないか。
「でも、運動量は落ちていないし、推進力もさがっていない」
交代を選択するのも、代えないことも、勝負の采配。紫の指揮官は後者を選び、仙台の手倉森誠監督は前者だ。柳沢敦・武藤雄樹とFWを次々と投入して4トップ。梁勇基をボランチに置いて得点を奪うための布陣にチェンジした。リスクは覚悟の上である。

両監督の判断は、どちらが正解だったか。全ては結果論でしかない。導き出された現実は采配だけで語れるものではないが、今回の試合では我慢が積極性を上回った。
84分、仙台は左サイドから攻撃を仕掛ける。ここで、塩谷司にボールを奪われたことが仙台の誤算。攻撃の厚みを出そうと梁勇基は前に上がっており、中盤にスペースができていた。フリーで待っていたのは青山。この瞬間、センターバックの渡辺広大は前に出て青山のミドルをケアし、佐藤寿人は菅井直樹と角田誠で見る形になった。その瞬間、石原はフリー。石川直樹のカバーが完了する前にできる一瞬のスキを、広島が誇る稀代のパッサーは見逃さない。
青山、優しいパス。石原、完璧なトラップ。角田も石川直も間に合わない。
背番号9に迷いはなかった。振り切った右足。確かな手応え。名手・林が伸ばした手よりも一瞬早く、ボールはニアサイドを抜け、ポストに当たって内側に入った。ゴール!!!!

仙台の決定機は唯一、クリアボールを千葉和彦と入れ替わって前に持ち出したウイルソンがゴールに迫った7分のシーン。この場面でも、水本裕貴のカバーと西川周作の勇気によってシュートすら打てない。後半は広島守備陣を揺さぶったものの、決定的なシュートを放つことはできなかった。中盤を森崎和幸と青山に支配され、セカンドボールも拾われ、ボールを持っても突破口を塞がれ。それでもギリギリまで組織を崩さず耐えていたのだが、最後にはこじ開けられた。今季の戦績差が如実に現れた内容に、名将も唇を噛み締めるしかなかった。ただ、次節は鎌田次郎がセンターバックに戻り、角田が中盤に入って守備が強化されるはず。手倉森監督が仙台で采配を振るうのはあと4試合。有終の美を飾るため、チーム全員で戦い抜くのみだ。

繰り返すが、この試合は石原直樹の日として、語り継がれるはずである。シュートは確かに外し続けた。それでも彼は、絶対に自分を諦めなかった。佐藤寿人が「一番、難しいシュートを決めた」と賞賛したが、それが可能となったのは石原の執念ありきだろう。
試合後のサンフレ劇場に今季初めて参加した石原直樹は、サポーターの前で戸惑いを隠せず、何度も仲間の方に振り返り、一つ一つの言葉を紡いだ。そんな「らしさ」を失わないからこそ、選手もサポーターも、背番号9を愛するのである。
 
以上

2013.10.27 Reported by 中野和也
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