それは唐突だった。起こった出来事を、当事者はこう述懐した。
「コージー、コージーって呼ばれて、『F1やろうぜ!』って誘われたんですよ。言われたからには一番前に行ったろうかなと。だから、抜かしてやりましたよ。俺の方が速いぞ、ってね(笑)」
第37節・東京V戦の後半3分だった。サビアが2−1と相手を突き放す追加点を奪ったのは。ゴール前には歓喜の輪が広がり、ゴールをお膳立てした廣瀬浩二もそこに加わった。その時だった。ブラジル出身カルテット“サビスティアーニョ”(三都主アレサンドロ、サビア、クリスティアーノ、パウリーニョの名前を組み合わせた造語)の誘いに応じた廣瀬が快く参加し、「F1ダンス」の進化系がお披露目されたのだ。同時性を重んじるカルテットのディシプリンを破り、軽快なドライビングでグングン加速する廣瀬。“スピードスター”の異名に相応しく、4人を置き去りにして先頭に躍り出た。そのパフォーマンスには、「お前ら、調子に乗るなよ」という思いも込められていた。誤解を招くといけないので付記しておくが、この言葉に全く悪意はない。言葉には廣瀬なりのプライドが含まれていた。
「外国籍の2人(サビアとクリスティアーノ)が点を取っているけど、プレーしている僕自身は取らせてやっている、と思っています。その分だけ2人にできないことを、たとえばサイドでの守備を自分はやっています。それがチームプレーだと思うんですよ」
松本体制に移行してから廣瀬はストライカーからハードワーカーに転身し、右のサイドハーフとして激しい上下動を繰り返している。運動量が求められるタフなポジションは体力の消耗が大きく、必然的にゴール前へ顔を出す回数も減ってくる。昨季のチーム得点王としては受け入れ難い気持ちも少なからずあるはずだ。しかし、今はJ1昇格プレーオフ進出に向けて負けが許されない崖っぷちに立たされている。危機的状況でエゴほど不必要なものはない。プロの世界で揉まれる中でそのことを熟知した廣瀬だからこそ、黙々と課せられた仕事をこなし、決定力の高い外国籍選手を活かす戦術の要を担えるのだ。自己犠牲の精神は尊く、「(近藤)祐介と浩二の働きが素晴らしく、2人がサポートに入ることでいい攻撃ができている」と、“闘将”パウリーニョは裏方に徹する両サイドハーフへの賛辞を惜しまない。
今節・岐阜戦でも廣瀬はタッチライン際で忠実に任務を遂行することだろう。一方で、「自分たち(近藤祐介と廣瀬)がゴールを取れれば、チームはいい方向に向いていく」との思いもあり、和製ストライカーは出場停止のサビアに代わり虎視眈々とヒーローの座を狙ってもいる。今度は自らがゴールを奪い、気持ちよく「F1ダンス」の先頭を快走したい。
以上
2013.10.26 Reported by 大塚秀毅
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