シーズンが佳境に入れば入るほど、一般的に多くのクラブは目指すべき目標を達成するためにそれまで貫いてきた戦い方だけではなく、場合によってはできるだけリスクを回避した、また計算のできる現実的な戦い方を選ぶことがある。そういった意味において長崎は残り6試合のうち、今節対戦する21位のFC岐阜や次節に対戦する18位のロアッソ熊本など下位からは取りこぼしがないよう、きっちり勝点3を取りたいと考えているはずだ。
ところが長崎は前節、ファジアーノ岡山相手に3試合振りに勝点1を獲得したのだが、それまでの3試合は無得点が続くなど結果がついてこなかった。現在も必ずしも調子が良いとは言えない状況だ。
昨年、町田ゼルビアで残留争いを経験した幸野志有人は岐阜戦について「どこも死に物狂いですから。だから自分達も調子が良いとか悪いとか悠長なことは言ってはられない。決してウチが受けて立つような試合にはならないはずです。正直、これから先はどこのチームも簡単には勝たせてくれないでしょう。自分たちも結果出すためにやるだけですから」と真剣な表情で抱負を語ってくれた。プレーオフ進出を目指すチームや残留をかけて戦っているチームについては現在の順位だけでは、もはやその戦力を図ることはできない。既に長崎は、前回岐阜との対戦で1−2と逆転負けを喫しており、がむしゃらなチームこそが最も恐ろしい存在であると既に身に沁みてわかっているはずだ。
しかも岐阜は夏の登録ウィンドー以降は別のチームに変貌を遂げており、しっかりとした守備ブロックを形成しては、迫力のあるカウンターを仕掛けてくる。8月に加入したスティッペとバージェの2人はここ4試合で5得点をあげており、完全にチームにフィットしていると言えよう。佐藤洸一も「はっきり言って全く別物」だと警戒する。
前節、岐阜と対戦した松本は終了間際にバージェに得点されており、反町康治監督は「最後は向こうも総攻撃で、あれをもう10分くらい前からやっていればちょっと手に負えなかったかな」と勢いに乗ったときの岐阜の怖さを振り返っている。岐阜はザスパクサツ群馬、ガイナーレ鳥取という残留争いを展開するライバルに2連勝し、その上がり調子は変わらない。最下位を脱した勢いは長崎戦でも止まることはないだろう。
そのため、長崎はバージェや中村裕輝、染矢一樹といった岐阜の前線に「いいボールを配給させないようなセカンドボールの奪い合いで勝利することが大事になってくるだろう」というのが多くの選手の口から出ている。また、それと同時に攻撃の際にはカウンターを受けないように、リスクマネジメントすることと、必ずシュートで終わる意識が大切になってくる。練習でもシュート練習に力を入れるなど、そういった部分の意識付けが行われていた。
この試合はどうやら、互いに点を取るためには相手のミスに乗じるか、セカンドボールを拾い速いスピードで前にボールを進めなければ得点は生まれそうにない。そのためにはなによりスピードが必要だろう。ただし、アルベルト・ザッケローニ監督の言う「ビィランチェ」(バランス)ではないが、チームがバランスを崩していては守備に回った際、相手が苦し紛れに放った一矢が致命傷にもなり得る。スピードとバランス。長崎と岐阜がそれぞれどのようにマネジメントするのかを楽しみたい。
以上
2013.10.19 Reported by 植木修平
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