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【J2:第35節 山形 vs 北九州】レポート:堅守・北九州の面目躍如!ワンチャンスをモノにして連勝。山形は無得点で10試合ぶりの敗戦。(13.09.30)

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23分、西河翔吾が左前方へフィードを送ると、伊東俊と空中で1対1で競った宮本亨がクリア、ボールはタッチを割った。「裏に蹴ったところで僕らも前からプレッシャーに行って、ディフェンスラインも上げてそこから押し込もうという形だった」(萬代宏樹)というのが山形のプランだったが、なかなかその形には持ち込めず、バックラインからの長いボールは立ち上がりから20分を過ぎても送られていた。

押し下げるのに時間がかかった理由はある。「落ち着かなかったです。自分も結構ミスでボール失ったりしてたので、それがチームとしてもあまりよくなかった」と中盤の秋葉勝。前線の萬代も「後ろでも落ち着かないし、中盤でも落ち着かないし、前でも落ち着かない時間が最初多かったので、ちょっと苦しかった」と胸の内を語った。一方の北九州側も「かなり長いボールを入れられて、セカンドボールを狙われる。そのボールをうちがしっかり拾って攻撃につなげたかったんですけども、そこからまたプレッシャーをかけられてなかなかつなげない」(柱谷幸一監督)と自陣でのプレーが機能的にならなかった。前線の選手はボールを収められない分を守備に注力し、互いにボールの落ち着きどころがなく、それゆえに押し上げや人数をかけた攻撃がままならない時間が過ぎていった。

ただし、ベンチの奥野僚右監督は「それはそれで相手のディフェンスラインに対して非常にいい圧力になるものであって、ジワジワとそういうボディブローが効いてくればいい」とより戦略的な視点で戦況を見ていたが、その言葉どおり、冒頭の西河のフィードのあたりを境に北九州のブロックは少しずつ下がり始め、山形はサイドを起点に敵陣深くボールを運ぶシーンが増えていく。左に起点をつくり、オーバーラップした中村太亮がクロスを上げると、しばらくして今度は右から秋葉がクロス。ボールを保持する時間を増やしながら、北九州ゴールに徐々に近づいていった。

しかし、山形がゴールに近づけば近づくほど、北九州は守備でその本領を発揮する。「センタリングを上げる前までは行くんですけど、上げきれない、やりきれないという部分が今日は少し出てしまった」と話すのは、引いた位置からそれを見ていたイ ジュヨン。サイドの起点には北九州の選手が確実に距離を詰め、動かされたボールにもサボることなく足を運び、山形のプレーを制限していた。

山形は時間とともに、本来のポテンシャルを思い出したように敵陣深く攻め込み、決定機をつくるシーンを重ねるが、攻められれば攻められるほど北九州は免疫を強めていく。ハーフタイム直前、46分のコーナーキックでは西河将吾が放ったヘディングシュートをニアポスト担当の小手川宏基が跳ね返し、そのセカンドのシュートを狙う山形に対しても池元友樹や八角剛史が体を投げ出した。ハーフタイムをまたいだ48分には、井上翔太と宮本をかわし、さらゴールへ近づこうとドリブルした中村太亮に渡邉将基が強烈なタックルで応戦。50分には中村太のクロスを萬代がヘッドでスラし、ファーサイドの中島裕希がトラッブからシュートを放つが、ここでも多田高行が急いでコースに体を入れてブロック。60分には中村太からの裏へのパスに絶妙のタイミングで秋葉が飛び出し、ニアに送られたボールにさらに中島が飛び込んで放ったシュートは至近距離のGK武田博行の隣でゴールポストがセービング。75分には右サイドでボールを受けた途中出場の林陵平が、前田和哉との1対1を制して左足で強烈なシュートを放ったが、これも武田が好セーブ。飛び込んだ山形の選手、迎え撃つ北九州の選手ともに接触などで倒れ込む激しいシーンも続くなか、シュートブロックに次ぐシュートブロック、セービングに次ぐセービングで北九州は山形の攻撃を跳ね返し続けた。

試合終盤まで、北九州のシュート数はわずか3本に抑えられていた。13分に相手の処理ミスのルーズボールを渡大生が競り、池元が落として新井純平がクロスバースレスレに放ったミドルシュートと、35分のフリーキックで、マークを強引に外しフリーで飛び込んだ渡邉のアウトサイドがキーパー正面を突いたシュート。さらに後半にも新井のシュートが1本記録されているが、おそらくは82分のコーナーキックのこぼれ球を中へ合わせようとしたボールが密集の中で山形の選手に跳ね返されたプレーがカウントされたもの。ほかに山形のゴールマウスに向かってボールが放たれた形跡はない。時折カウンターで攻め込むシーンはあったものの、北九州はアタッキングサードでは何もさせてもらえなかったと言っていい。その北九州が、この試合最初で最後の決定機を迎える。

大島秀夫、森村昴太、キム ドンフィと攻撃のカードを3枚切り終え、徐々に敵陣に顔を出す機会が出てきた86分の右スローイン。ゴール前からボールサイドに寄った森村はニアサイドのキムにマイナスのパスを送るが、これはキムの背後から飛び出したロメロ フランクがインターセプト。ただし、前に出た勢いそのままに跳ね返されたボールは再び森村のもとへ。森村は一瞬の判断で、ここしかないというニアのコースを左足で鋭く打ち抜いた。ギリギリ枠をとらえたシュートはGK常澤聡が伸ばした右手が弾いたが、それが転がるファーサイドで待ち受けていたのは大島。大島にボールが届く前にカットしようとスライディングを試みた西河の体がグラウンダーのコースを塞いでいたが、「ほんと目の前に転がってきたので、むしろびっくりして外すんじゃないかと思いました」と左足で軽く浮かせたシュートをゴールマウスに流し込んだ。懸命に自陣ゴールを守ってきたその対価ともいうべき1点を挙げた北九州が、残り時間も守りきり勝利を収めた。

「0-0だったので、そこまでリスクを負ってやるのもどうかなというのもあったので、ちょっと抑えつつ、守備に重きを置きながらやったのが本音です」。宮本が明かしたように、アウェイの北九州は必要以上のリスクをかけて勝点3を求めたわけではなかったが、「目の前の試合をみんなが全力で、意識を統一しながら同じ方向を見てやっているし、もっともっとよくなると思う」(宮本)との手ごたえを背景にワンチャンスをモノにした。岡山、山形とこれまで勝てなかった相手に連勝し、次節はいよいよホームでの福岡ダービー。「本城を満員にして福岡に勝つ、そういうゲームをぜひ次のゲームでは見せたいなというふうに思ってます」とクラブ運営も絡めて言及するところは柱谷監督らしい。逆転可能な状況で迎える決戦は、大きな期待に満ちた状況で行われそうだ。

シュート13本を放ちながら北九州の堅い守りを最後まで崩せず、被シュートを5本に抑えながら1失点を喫した山形は、10試合ぶりの敗戦。勝てば6位と2差の7位に浮上できるチャンスを逃し、11位に後退した。安定した試合運びは、その針が振れ過ぎれば消極性に結びつく。そして、その微妙なバランスを適性に保ち続けることは簡単ではない。「このスタジアムがワーッと盛り上がるようなシーンをどれだけつくれたか。今日は比較的、そういうところで思いきりのよさがなく、スタンドを沸かせるシーンというのが数少なかったんじゃないか」と奥野監督が指摘する。「もっと自分たちが最大限に表現して、その試合を90分間で勝ち終える、勝点3を奪えるような戦い方に目を向けてチャレンジしていこうという話をしました」(奥野監督)。迫力をもって相手ゴールに迫る姿を取り戻せるか。山形はチャレンジャーとしてのハートに火をつけ、わずかな望みに懸ける。

以上

2013.09.30 Reported by 佐藤円
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