ややスッキリしないが、Ｇ大阪が敗れ、神戸が水戸に引き分けたことで1位と2位が入れ替わった。神戸にとっては５月以来の首位。森岡亮太は「良くない試合内容の中で、首位に立てたことはラッキー。でも、次の結果ではまた入れ替わる可能性もあるので、しっかり修正して次に臨みたい」と複雑な表情を浮かべた。

試合はどちらが優勢だったかを判断するのが難しい内容だった。水戸の柱谷哲二監督は「内容的には我々のゲームだった」と振り返るが、神戸の安達亮監督は「立ち上がりの入り方は非常によくて、相手をどんどん押し込んでいった。何回か危ない場面もあったけれど、（前半は）割と想い通りに進んでいました」と言う。両者で感覚が異なるのは、ボールを回しているのか、回させているのかという議論に似ている。スコア１−１から考えると、五分五分といったところかも知れない。

前半の入りは安達監督の言葉通り、神戸がワンタッチパスを巧みに使いながら水戸のプレスをいなし、ペナルティエリアへの侵入も見せた。10分頃には田中英雄が奪ったボールを、マジーニョ、田中、ポポとつなぎ、最後は逆サイドで構えていた森岡へ展開し、橋本英郎がミドルシュートを放つなど、長短のパスを使い分けながら相手を翻弄。多くの選手が絡みながらゴール前へボールを運ぶ神戸の前半はシュート数こそ少ないものの、いい流れを作っていたと言っていい。

逆に水戸の前半は、２トップの山村佑樹や鈴木隆行、右サイドハーフの船谷圭祐らがドリブルで仕掛けるシーンが目立った。20分には船谷が左足アウトサイドで技ありの浮き球を前線へ送ると、山村が相手DFの裏へ抜け出してヘディングシュートを放つ決定的なシーンも演出。40分にはFKの早いリスタートから山村がペナルティエリア内で２人を交わしてシュートを放つなど、手数をかけずにカウンターからチャンスメイクをくり返した。

試合が動いたのは後半に入ってからだった。73分に相手クリアボールを拾った橋本英郎がドリブルで前線へ持ち込み、左サイドでフリーになっていたマジーニョへ絶妙のラストパス。それをマジーニョがきっちり沈めて先制に成功した。悪い流れでも点が奪えていた前々節の長崎戦や前節の徳島戦を彷彿とさせるような“個”の能力が光ったゴールだった。この直後には都倉賢を投入し、２点目を奪いにかかる。同じタイミングで水戸はテクニックのある木暮郁哉を入れ、その６分後には高さのある三島康平もピッチへ。すかさず神戸も北本久仁衛を入れて５バックにスイッチする。攻めの枚数を増やす水戸、守りに入る神戸と言う構図で試合が進むことになった。

いつもなら、この形は神戸の勝ちパターンである。勝利を呼ぶ５バックとして、神戸に定着していた。だが、83分に水戸の西岡謙太に美しいミドルシュートを決められ、結局、１−１のドローで試合は終了した。

79分ごろにゴール前での競り合いに勝ち、決定機を作った都倉賢は「あのシュートを決めていれば試合は決まっていたし、逆にあれで水戸にまだ行けると思わせてしまった」と反省を口にした。だが、水戸のCB冨田大介が「（都倉は）高さがあって前でキープできる選手だと思ったので、そこへのクロスへの対応と、くさびのところで潰して行こうと気をつけた」と言うように、あのワンチャンス以外は都倉にほとんど仕事らしい仕事をさせなかった。水戸のディフェンス力も光った後半だったと言える。両チームともに個性を出した一戦は、やはりドローという結果が妥当なのかも知れない。

とはいえ、柱谷監督が「アウェイで勝点１をとって帰れるということは我々にとっては収穫のあったゲーム」と話すように、水戸にとっては浮上のきっかけになりそうな一戦に。神戸もポイント１とはいえ、着実に勝点を積上げて６戦負け無しで残り７節を迎えられる。両者ともにこのドローゲームをいい流れにつなげるには、次節が大切な試合になりそうだ。

以上

2013.09.30 Reported by 白井邦彦