前半は「水曜日にナイトゲームで、雨の中で試合をやっているので、おそらく立ち上がり向こうは体が重いだろう」と見ていた柳下正明監督の狙いが的中した感がある。柏も入り自体は悪くなかったが、増嶋竜也の負傷交代を機に橋本和を3バックの一角、ジョルジ ワグネルを左ウイングバックにそれぞれ下げると、サイドの守備の対応が甘くなり、そこを突いて推進力を持った新潟の右サイドバック川口尚紀が鋭利な縦への突破を見せる。
ウイングバックが1枚の3バックに対し、サイドバックとサイドハーフの2枚が縦に並ぶ4バックでは、サイドの攻防は4バックの方が数的に優位に立つ。新潟は常套手段とばかりに、右の川口だけでなく、左サイドバックの金珍洙のミドルシュートがバーを直撃するなど、両サイドから厚みのある攻撃を繰り広げていた。
32分の先制点は狙い通りサイドから生まれた。川又堅碁が右で起点を作り、そこへ川口がオーバーラップ。一度左へ展開した後、田中亜土夢、岡本英也とつなぎ、成岡翔のシュートのこぼれ球を川又が詰めて先制した。
新潟守備陣のタイトなマークや前線からの寄せの早さも原因にはあったとは思うが、徐々に柏は動きが鈍り、パス1つにしても精度に欠け、そういった“プレーの切れのなさ”に乗じて新潟がカウンターを仕掛けていく。42分にも川口の突破から岡本がシュートに持ち込むチャンスがあった。新潟は前半の出来からすれば、決めておかなければならない決定的なシーンである。
柏は後手を踏んだ3バックから、前半終了間際には4−4−2へシフトチェンジをした。これが功を奏し、新潟のサイド攻撃を食い止め、前半の内容から一転して試合を盛り返していく。
システム変更もさることながら、「後半は全員が走って、勝つために必死になった」(栗澤僚一)とメンタルとフィジカルの両面で強さを発揮したことが劣勢を跳ね返した大きな要因である。14分の増嶋、前半終了間際の工藤壮人に続き、70分には大谷秀和までもが足を負傷し、交代を余儀なくされた。主力センターバック、エースストライカー、そしてキャプテンが相次いでピッチを離れていき、本来ならば意気消沈してもおかしくはなかったが、柳下監督をして「後半の出来からすれば勝点1でOKだった」と言わしめ、「後半は柏の方がチャンスは多かった」と川又も仕方なしという表情を見せており、劣勢を跳ね返した柏の不撓不屈の精神は評価されるべきだろう。
欲を言えば、同サイドから正攻法で攻めるだけでなく、縦への出し入れをしながら、サイドチェンジを織り交ぜ、新潟の陣形を揺さぶることができれば、もっと相手の守備ブロックを攻略できていたのではないかと思う。それができたのが75分の同点のシーンだけだっただろうか。右サイドのキム チャンスから中央でパスを受けたジョルジは、橋本とのリターンを入れて揺さぶり、最後はジョルジのシュート性のボールをクレオがプッシュして柏が追い付いた。
前半は新潟、後半は柏と、それぞれ主導権を握ったゲームではある。90分をトータルすると、お互いに決定機があり、ポストやバーに阻まれた場面も多かった。両チームの選手からは、試合後「決める時に決めていれば……」という言葉も飛び出している。双方に勝つチャンスがあり、双方とも敗れてもおかしくはなかった。そう考えれば、1−1は最も妥当な結果だったのかもしれない。
しかし柏にとって痛いのは、ケガ人をこの試合で3人も出してしまったことだ。疲労困憊、満身創痍の中、柏は大逆転を飾るべく中国・広州へと飛ぶ。
以上
2013.09.29 Reported by 鈴木潤
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