突き刺すような日射しと照り返し。湿度が低く、猛暑だが乾きを覚える。
日本とは全く異なる環境と気候の中東の地でも、柏は躍動した。「あの1試合目を分析し、改善点を出して練習とミーティングで落とし込んだ」とネルシーニョ監督が振り返るように、劣勢の時間帯が多かった第1戦の反省点を生かし、柏は敵地でアルシャバブのストロングポイントを消した。
この試合、柏はヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦の横浜FM戦、J1第25節磐田戦の2試合に続き、4−1−4−1のシステムで臨んだ。磐田戦では、このシステムが全くハマらなかったという心配も少なからずあったのだが、それは杞憂に終わった。
「タニ(大谷秀和)をアンカーにして、クリ(栗澤僚一)と(田中)順也でフェルナンドとアブドゥルマレクを消し、相手のビルドアップの時にそこを抑える、自由を与えないと同時に、前回柏での試合ではトーレスが我々の2ボランチの背後でフリーになっていたのですが、今日はそこにタニがいた。トーレスに自由を与えなかった」(ネルシーニョ監督)
ただし、最初から万事うまく進んでいたかと言えば、そうでもない。10分にはCKからナイフ ハザジに先制ヘッドを豪快に叩き込まれた。いきなり、しかもセットプレーからの失点に、磐田戦の悪夢が蘇った。「最初のセットプレーは、ほぼやられていたと思う」(近藤直也)と不安定な立ち上がりで、「相手のリアクションも良くてバタバタしたところもあって落ち着かなかった」(工藤壮人)という序盤だった。
もし、あのまましばらく時間が過ぎていたら、違った結末を迎えていたかもしれない。序盤の劣勢を吹き飛ばしたのは、13分のアルシャバブのオウンゴールだった。
田中の折り返しを栗澤がアーリー気味にクロス。アルシャバブDFカク テヒのヘッドは自軍のゴールに突き刺さる。1−1になったことによって試合は振り出しに戻り、第1戦と同じスコアは、アルシャバブのアドバンテージが消え去ったことを意味していた。さらにスタンドで中東独特の応援を奏でていたサポーターもやや消沈。この流れに便乗して、柏が狙い通りの守備からアルシャバブの攻撃の核、メネガッゾとトーレスを封じていく。
その中盤のタイトなマーキングに引っ張られたのだろうか、クレオや工藤も“ファーストディフェンダー”として積極的に守備をこなし、キム チャンスもタイトな守備で奪い取り、自ら持ち上がるといったアグレッシブなプレーをするなど、各局面で、各選手がチームのために戦っていた。
攻撃の起点となる2選手を柏の守備が消すと、アルシャバブの攻撃には緻密さがなくなり、長いボールの淡泊な攻撃を繰り返すか、最後の部分でミスが生じた拙攻続きとなる。逆に良い守備から良い攻撃へつなげる柏がリズムを掴み、73分には左CKから近藤直也がニアで綺麗合わせて逆転に成功する。大きな大きな1点を加えた。
85分にはアルシャバブにミドルシュートを決められ、2−2とされたものの、トータルスコアは3−3。アウェイで2ゴールを奪った柏が、ほんのわずかな差だけアルシャバブを上回り、ついにアジアの4強入りを果たした。
選手たちは逞しかった。監督の戦術や策を忠実にこなしただではなく、初の中東遠征でも、慣れない気候と時差にしっかりと適応し、第1戦以上の試合内容を見せた。まさに堂々たる戦いぶりだ。
だがベスト4進出を喜ぶのも束の間、来週(9/25)にはファイナルを懸けた広州恒大との激戦が待ち受けている。昨年の対戦では1敗1分と圧倒的な攻撃力の前に苦汁を舐めたが、今の柏は、もはや1年前の柏ではない。
アジアの頂点まで、あと4つ。
以上
2013.09.19 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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