本文へ移動

今日の試合速報

ルヴァン 準々決勝 第1戦
ルヴァン 準々決勝 第1戦

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第31節 熊本 vs 北九州】レポート:苦しい展開を耐えた北九州は勝ちきって16位に浮上。一方、再戦に敗れた熊本は4連敗で危険な状況を抜け出せず。(13.09.06)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
激しい雷雨のため65分で試合が中止となった8月25日から11日。このわずかな期間で気温はぐっと下がり、思い出すだけでも汗がにじんできそうなほどに暑い日が続いた熊本も、いつの間にか秋らしくなった。季節の変化は、リーグ戦がいよいよ終盤にさしかかってきたことを意味する。少しでも勝点を積み上げ、早いところセーフティなゾーンに入りたい両チームにとって非常に大きな意味を持つゲームは、中止となった時点で残されていた25分間ではなく、全くのさらの状態からリスタートされた。熊本はセンターバックの矢野大輔、北九州はボランチの新井純平と双方に出場停止もあり、先発の顔ぶれは前回から若干変わった状態である。

序盤からペースを握ったのはホームの熊本だ。「カウンターの対応はある程度できた」と池谷友良監督が話した通り、スペースを埋める対応で北九州の中盤、特に八角剛史とアン ヨンギュの両ボランチに前を向かせず、冨士祐樹や宮本亨ら左右から2トップへのフィードは、3人のストッパーが高さと強さを生かして跳ね返した。ただ攻撃に関しては、やはりマイボールにしてからのミスが多く、なかなか決定機を作れない流れ。「今日はロングボールも多かったし、いい時に比べると選手間の距離がちょっと遠かった」と齊藤和樹が振り返っているが、サポートの遅さやアングルと距離の悪さもあってワンタッチのパス交換はほとんど見られず、受けてから次を探す間に間合いを詰められ、コントロールをミスしたり引っ掛けたりするシーンが散見された。堀米勇輝らの仕掛けに対するファウルから得たフリーキックも3分、10分、14分、28分と少なくなかったが、いずれもゴール前で合わせられず、優位に進めながらも得点を奪えない。

対して北九州は、「本来はもう少しポゼッションしたかった」(柱谷幸一監督)という厳しい展開にあっても、整った守備ラインを形成してボックス内への侵入を許さなかった。加えて、中止となった前回と同様に、攻撃に転じてからのイメージは徹底されている。1つにはFWと両サイドのMFを狙ったロングフィードで高い位置にポイントを作り、後方からの押し上げでサイドをえぐる、あるいは外から中へという斜めの動きで熊本のDFラインを揺さぶるというもの。そしてもう1つは、コースがあればインターセプトした選手がそのまま前へ運んで行く形で、宮本や冨士がペナルティエリア付近までドリブルで持ち込む場面が数回。柱谷監督が「2トップがよく走ってマイボールにしたことで、チームが前向きにプレーできた」と述べた通り、相手のゴールに向かう推進力という点では、攻撃の回数自体は少なかったものの北九州の方が熊本を上回っていたと言える。33分の渡大生の先制点、そして37分の井上翔太の追加点は形こそ違えど、いずれも前述したような要素、つまり左右の揺さぶりや前への推進力から生まれたものだ。

ハーフタイムコメントによれば、池谷監督は「ボールを前に、縦に。下げずに前に行こう」と指示。実際、後半からは前への圧力が増し、55分にボックスの外約25mあたりから大迫希がフリーキックを直接決めて1点差としたあとも、熊本は主に左サイドから深い位置までボールを運び北九州を押し込む。仲間隼斗を投入してからは前の並びを少し変えて距離感の修正をはかっているが、それでもやはり最後の部分のクオリティの低さから同点に追いつくことはできなかった。

北九州にとっては非常に大きな1勝だ。これにより順位は16位となり、ひとまずは安全圏に滑り込んだ状態。押し込まれる展開もうまくコントロールして少ない決定機を確実にモノにしたという点は評価できるものの、攻撃に関しては決して主導権を握れたとは言えず、後半のシュートはわずか2本にとどまっている。先制点を決めた渡が「後半は何もしていない」と話しているが、2-0の状態から早い時間帯に追加点を挙げてより試合を楽に運ぶためにも、ゲーム中の修正は今後課題となろう。

一方の熊本。「内容的には悲観するものではない」と池谷監督も振り返ったように、90分を通して押しぎみに進めた点を踏まえれば、残す課題は最後のアイデアや精度ということが言えるのは確か。しかしおそらく、問題をそこのみに求めては事態は好転しない。例えば先制を許した場面では、得点に直結する局面を切り取ればクロスやシュートへの対応が浮かび上がるが、一連の流れを遡ると自陣左サイドでの判断や処理のまずさに起因している。攻撃も同様で、ラスト1/3のアイデアと精度のみならず、切り替わってからの組み立てにおけるパスの1つ1つ、受ける時のポジションや身体の向き、キックのアングルや強弱の選択と、ボールコントロールも含めたあらゆる部分で、もっと高めなければならないことが山ほどある。そうした細かい点から目を背けたままでは、この険しい山は越えることはできない。

試合後の会見で池谷監督は「熊本力が試されている」と述べ、もう一度チームを信じて支え、共に闘うことをサポーター、県民に求めた。だがチームの中はどうだろうか。隣に、前に、後ろに見える仲間を信じて、果たして本当に気持ちをひとつにして共に闘えているだろうか。

ミックスゾーンで選手たちに話を聞いている最中から響いていた歌声――選手バスが停車している競技場ゲート付近から聞こえていた――は、最後の選手がバスに乗り込み、そして走っていったあとも、しばらく止まなかった。100人ほどのサポーターの中には、新学期が始まって翌日に学校や幼稚園を控えた子どもたちの姿もあったろう。それでも彼らはどうにかして、選手たちに思いを伝えたかったのだ。「くまもとの誇りを胸に、熱く戦おう」と。

中2日となる日曜には、半月前に敗れた徳島を迎えての天皇杯2回戦。リーグ戦での生き残りを重視すれば、勝ち進むことで試合数が増え、怪我のリスクや体調管理の面で負担となっていく可能性も否定はできない。しかしそれでも、現状を打開するためのきっかけとして、何としても、どんな内容でも、勝利という結果を出したい。サポーター、県民のため以前に、自分たちのために。このまま終わらないために。

以上

2013.09.06 Reported by 井芹貴志
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/09/07(土) 00:00 ハイライト:八戸vs福島【明治安田J3 第27節】