「前半90分」終了時点で2-1と柏がリード。そしてこのスコアは、6月30日19時より、再び動き出す。現時点での状況は、これ以上でもこれ以下でもない。
ただ、普通の試合と違うのは、「後半90分」で広島が同点に追いつくには1-0ではダメだということ。アウェイゴールを2点、柏が獲得した以上、広島もまた最低でも2点が必要となる。彼らが持つ攻撃力からすれば不可能ではないが、柏が大きなアドバンテージを得たことは間違いないだろう。ただ、ネルシーニョ監督は「まだ90分残っている」と語り、慎重さを崩さず。先制点を決めただけでなく勝ち越し点の起点となった田中順也も「相手もプライドがあるし、相当前にかかってくると思う」と警戒心を解いていない。
今季3度目の広島戦となった柏は、今回も3-6-1のフォーメーション。ただ前回は連戦の最終戦ということもあり、ただ守備的に戦ったという印象が強かったが、今回は違う。付け焼き刃的なギクシャク感は消えさり、フォーメーションを「柏の形」として消化していた。「攻撃的」とまでは言えないが、過度に守備を固めるのではなく、リトリートとアグレッシブの使い分けもこなれていた。
広島とて、室蘭キャンプで培った成長ぶりを垣間見せた。中盤にスッとおりた高萩洋次郎が「一気の縦パス」を裏に出し、佐藤寿人を走らせてつくった決定的なシーンは、緩急の切り替えの素早さとシンプルさが明快に表現されたものだろう。
だが、鹿児島キャンプを経た柏の「成長」は、さらに目を見張らせた。特に変貌を遂げていたのは、左ワイドの山中亮輔である。前回の対決では対面するミキッチに振り回され、裏をとられ、散々にやられたあげく足をつらせて交代を余儀なくされた20歳のサイドアタッカー。しかし、志ある男であれば、同じ所にとどまっているわけがない。「若さと屈辱」は、成長の促進剤でもある。
試合当初は、やはり守備に追われた。しかし、ボランチの大谷秀和や栗澤僚一、さらにストッパーに入った橋本和のサポートを受けた若者は、臆することなく前に出て、スピードに乗った突破でミキッチを後ろに下げる。得点に直接つながりはしなかったが、彼の攻撃力の脅威は、疑いの余地がなかった。
この山中の輝きは、広島の攻撃にも大きな影響を与えた。柏の切り札と言えば、もちろんジョルジ・ワグネル。前回の対決での左足の魔術師は、ミキッチが山中を振り回していたが故にどうしても守備に回らざるを得ず、その破壊力を爆発させるに至らなかった。だが、ワイドが対等に戦えたことでジョルジ・ワグネルが攻撃に力を発揮する機会が格段に増える。天秤の片側が下がれば一方が落ちる。必然的に広島が「ブロック崩し」のポイントとして用意していた塩谷司が攻撃に参加する機会が、想定よりも格段に減ってしまった。
もともと、対広島に対する「1トップ2シャドー」は、広島の3バック+森崎和幸からの攻撃を抑えるためのフォーメーションである。実際、ネルシーニョ監督は最終ラインでパスを回す森崎和と千葉和彦に対し、前の3人に厳しくプレスをかけるように指示。工藤壮人がそのパス回しのスキをついてボールを奪い、ジョルジ・ワグネルがフリーでシュートを放った44分のシーンにしても、山中や右サイドの藤田優人が広島のワイドアタッカーを抑えていたからこそ、可能になった。増田卓也のファインセーブによって防がれたとはいえ、広島の後ろからの攻撃が機能不全に陥らせる効果は十分だ。
55分からの6分間、柏に2点、広島に1点とスコアが大きく動いたこの試合だが、いずれの得点も守備側のミスを鋭くついたもの。田中の先制点は橋本和の抜け出しを簡単に許してしまった広島らしくないルーズさが起点となったし、その田中に千葉がプレスをかけてミスを誘い、青山敏弘のシュートから高萩洋次郎のゴールが生まれた。さらに工藤の決勝点のシーンを増田卓也は「自分の判断ミス。(田中のクロスに対し)クリアかキャッチか、曖昧だった」と悔しさを露にした。ただ、サッカーの場合、得点の多くは守備側の小さなミスから生まれるもの。今回は柏がより、広島のミスを確実に得点につなげたということ。それ以上のドラマを広島が起こせなかったのは「最終ラインの攻撃」を柏に封じられたことが遠因である。
さあ、後半90分が待っている。広島に必要なのは2点以上の得点。アウェイとはいえ、試合開始からリスクを冒した攻撃に出ることは火を見るより明らかだ。そんな「攻めダルマ」と化す広島に対し、ホーム・柏がどういう手段で対抗するか。激戦必至だ。
以上
2013.06.24 Reported by 中野和也
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