Jリーグヤマザキナビスコカップ初優勝を目指す川崎Fと仙台。決勝トーナメントからはホーム&アウェイでの戦いとなるために、一戦目からゴールの「数」が求められる。そこで両チームは互いの裏のスペースを狙い、駆け引きを繰り広げた。
立ち上がりは互いに慎重にボールを回していたが、11分に仙台のウイルソンがシュートチャンスを迎えてからは仙台がペースを握る。受けて立ってしまった川崎Fは「今日は相手の裏に蹴ってしまった」と大久保嘉人が振り返ったように、仙台のプレッシャーを回避しなければならなかったことと合わせ、拾ったセカンドボールを細かくつなぐよりも前線に速く送ることを選択せざるを得なかった。
川崎Fがこの状況を変えたのは36分のゴールがきっかけだった。ボールを支配していた仙台が、最終ラインから攻撃を組み立て直す。その時に相手DFのパスを森谷賢太郎がカット、すかさず大久保に送る。大久保はこのパスを「よく見ていてくれた」としっかりトラップ。そしてその時に読んでいたという小林悠へ「ターンするタイミングをイメージしていたらその通りにボールが来ました」とボールが渡ると、小林は相手DFを引き連れながらも鋭いターンでコースを作り、シュートに持ちこんだ。これが決まり、川崎Fが先制した。大久保・小林の2トップはこの後に足下にボールが入るようになると、「嘉人さんの動きを見て、自分は裏を取るようにした」(小林)という関係性のもと、チャンスを作る。
先制を許した仙台は「ハーフタイムに監督から『シュートをどんどん打っていこう』と言われましたし、自分もパスを選択してしまっていたところをもっとシュートを打とうとしました」と松下年宏が言うようにフィニッシュの意識を高める。こちらはサイドの裏を前半のうちから何度も取って「川崎Fのウィーク(ポイント)であるクロスを意識して上げていた」(鎌田次郎)という共通理解のもとでクロスを送り続けた。しかし相手ゴール前へのクロスがなかなかゴールに結びつかず、クロスに強い中原貴之投入後も川崎Fのクリアを許していた。
さらに77分に、試合を決定づける出来事が起きる。仙台のCKのチャンスが防がれた直後に、川崎Fが逆襲から一気に相手ゴールまでボールを送る。前がかりになって裏を取られた仙台は林卓人が飛び出してセーブをしたが、これがパトリックの得点機会を阻止したと判定され、林には退場処分が、川崎FにはPKが、それぞれ与えられた。
川崎FはレナトのPKで2点差となり、しかも数的優位に立った。あとは無失点で逃げ切るだけだったが、アディショナルタイムに突入しても猛攻を続ける仙台に意地を見せられた。
90+3分、競った中原から太田吉彰がボールを受けてチャンスメイク。最後にボランチの位置から走りこんでいた松下が「コース(を狙う)というよりねじこんだ」というアウェイゴールを叩きこんだ。
この一戦だけを見れば川崎Fの勝利だ。しかし第2戦が待っていることを考えれば、まだ何も決まっていない。勝ち星で川崎Fが優位に立っている一方で、仙台のアウェイゴールもまた大きな意味を持つ。接戦の結果は、第2戦にどのように響いていくだろうか。
以上
2013.06.24 Reported by 板垣晴朗
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