ナイトゲームではあったが、昼間の猛暑の名残は空気に残っていた。明らかな暑さというわけではないが、じっとりとしてくる感じで、選手たちにとっては消耗の激しいタフコンディションだったと言えるだろう。
しかし、今後へ向けて非常に重要と位置付けられたこの一戦に徳島は見事勝ち切った。意地を見せて勝点1をもぎ取った前節のいい流れを、チームはしっかり本物の勢いにひとつ近付けたのである。
そしてその勝利を引き寄せる大きな要素となったものは、要所での個の輝き。それでハッキリと松本を上回ったことが白星に結び付いたのは間違いない。
事実、23分の先制場面ではそれが幾つも続いて披露された。スコアラーのドウグラスが見せたワントラップからの素早いフィニッシュ動作ももちろんながら、その仕掛けのスターターとなった青山隼は松本のパスミスにいち早く駆け寄ると瞬時の素晴らしい判断で早い攻めを選択して鋭い縦パスを前へ通したし、右サイドを深くえぐった鈴木達也も経験を生かした落ち着きで冷静な見極め。タイミングを遅らせてバイタルエリアへ入ってきたドウグラスを見逃さず、丁寧なグラウンダーのボールを供給したのである。
また42分に訪れた2点目の場面では、今度は津田知宏が眩いばかりに輝く。左サイドタッチライン際からアレックスが入れたライナー性のボールを、マーカーに張り付かれ松本ゴールを背にしながら受けたにもかかわらず、振り向きながら正確にインパクトしてワンダフルゴールを叩き込んだのだ。
さらに得点シーン以外でも、徳島の選手たちは大事なところできっちり光る働きを出していたと言えよう。厳しいコースを突かれても、至近距離から打たれても、顔面をも投げ出す気迫のセービングでGK松井謙弥がそれらを跳ね返すと、千代反田充もさすがの強さで勝負所をブロック。ヒヤリとするような場面を作られても最後は決して許さなかった。
付け加えるなら、後半途中から投入された大崎淳矢もそれを十分感じさせたと言っていい。やや松本にリズムを掴まれかけていたところでピッチへ送り出された背番号20は、流れを変えるべくエネルギッシュに積極的なプレーを展開。自ら立て続けに際どいシュートも打ち、求められた役割通りチームに活気を取り戻させた。
こうして要所要所で個がそれぞれ輝きを放った徳島。組織としてもサイドをスムーズに変えるボール回しやペナルティボックス付近での連携をたびたび発揮したチームは、前半奪った2点のリードを最後まで維持し、大変重要だった今節で価値ある白星奪取に成功した。それだけに、次節から始まる強豪との連戦(20節 千葉戦・21節 G大阪戦)に対しては、いい流れを勢いと呼べるパワーに変えてきっと臨めるはず。期待は大いに高まる。
ただ、徳島を振り返る最後として、見過ごせない反省点があったことにも触れておきたい。それは守りに関してで、ひとつはポスト役の相手に落とされたボールへの対応が少々遅れ気味になっていたこと。実際その形から30分過ぎには2本続けてシュートまでもっていかれてしまった。それともうひとつが、センターバックとサイドバックの間を何度か抜け出されてしまった部分。足が止まり始めた後半にそうしたピンチが相次いだが、そこを割られると当然ながら即フィニッシュを浴びることになってしまう。この一戦では松井の好守に何度も救われたものの、やはり今後勝利を重ねていくためにはそうした形を作られないための対処をチーム全体で早急に身に付けなくてはならない。
さて、対し、敗れた松本に関して言うと、こちらは攻めの仕上げが上手くいかなかった一戦ということになるであろう。喜山康平も「シュートまでは行くのですが、惜しいで終わってしまったのが相手との差でした」とコメントしていたが、徳島を上回る17本のシュート数もそうした状況であったことを大いに物語っている。とは言え、選手たち全員が最後まで見せたハードワークは目を見張るものであった。それゆえ個々があと一歩ディテールの精度を高めることが出来たなら、チームはきっと飛躍的な成長を遂げられるに違いない。
「これをどう捉えてどうプレーしていくかが大事なんですよ」とは試合後会見における反町康治監督の弁だが、その言葉を受けて選手たちは次節でどれだけの変化を見せるのだろうか。注目しておきたいところである。
以上
2013.06.15 Reported by 松下英樹
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