昨季の最終節。勝てばJ1残留だった神戸は王者・広島に敗れ、最後の最後でJ2降格という苦汁を舐めさせられた。
逆に千葉は、引き分けでもJ1昇格だった昨季のプレーオフで大分に敗れて涙を飲んだ。失点は86分、あと数分耐える事が出来れば…という悲劇だった。
本当ならJ1で実現していてもおかしくないカードは、奇しくもJ2では初めての対戦となる。J1での対戦成績は神戸が11勝4分9敗とわずかに勝ち越しているが、ほぼ互角といっていい。今季のメンバーを見ても、神戸が元日本代表の田代有三をはじめ、元コロンビア代表のエステバン、昨季は浦和に所属したポポら名だたるメンバーを擁するのに対し、千葉も現得点ランキング2位の11得点を挙げているケンペスや谷澤達也、兵働昭弘、山口智ら百戦錬磨の強者が揃う。両サポーターにとっては今さらな情報だが、改めて選手を列記するだけでも心躍る一戦と言えるだろう。
加えて、神戸は岩波拓也、千葉は佐藤健太郎が出場停止から戻ってくる。役者が揃った上で、千葉は絶対に3連敗を食い止めたいという半ば背水の陣で挑んでくるだけに、最初から最後まで目が離せないゲームになるはずだ。
神戸の安達亮監督は「千葉は何が何でも負けられないという強い気持ちで来るはず。神戸はそれを上回る強い気持ちで挑まないと勝ちはない」と警戒。田代は「兵働選手や深井選手、佐藤健太郎選手らかつて一緒に戦った選手もいる。絶対に勝ちにくると思う。でも、神戸はホームですし、負けるわけにはいかない。自分たちのサッカーをして相手を上回るしかない」と真っ向勝負を挑む決意だ。純粋にサッカーというボールゲームとしても、最高の状況が整ったと言えるだろう。
また、このカードで興味深いのは、安達監督が親しみを込めて“キーやん”と呼ぶ神戸・木山隆之コーチの存在だ。監督として昨シーズンの千葉を率いた木山コーチは、共にJ1昇格を志した選手が多く残る千葉について「彼らがどういう気持ちで今季を戦っているかも知っている。個人的には、ジェフもJ1に上がってほしいと願っている」と話す。ただ、神戸の一員として迎える今節については「(昇格レースを争うであろう)ジェフを引き離すチャンスでもある。絶対に落とせない」と言う。神戸にとっては千葉の選手をよく知るブレーン、千葉にとっては手の内を知られた手強い相手である木山コーチだが、ゲームに関しては「どう戦うかは亮さん(安達監督)に聞いてください。知っていることは亮さんに全て話しましたので」と、当たり前だが明かさない。「ただ、ジェフのみんなは3連敗したら昇格が厳しくなるということを知っていると思う。絶対に負けたくないという気持ちで向かってくるでしょうし、神戸はその相手に圧力をかけていく必要があるのは確かです」。
もちろん、千葉の右サイドバック米倉恒貴のスピードにどう対応するか、ケンペスをどう抑えるかといった戦術も大切だが、それ以上に“勝ちたい”気持ちで勝ることが最優先。魂のぶつかり合いの向こうに、“ポイント3”が待っている。
以上
2013.06.07 Reported by 白井邦彦
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