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【NON STOP J2】-J2のススメ- 細川淳矢(水戸):感謝の思いをむき出しに(13.06.03)

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事件は一昨年末に行われたJリーグ合同トライアウトの場で起きた。

11年シーズン終了後、6年在籍した仙台から契約満了を告げられた細川淳矢であったが、「『これからどうしよう』というよりも、自分にとってのチャンス」という希望を抱いてトライアウトに臨んだ。しかし、試合中に前十字靭帯を損傷するアクシデントに見舞われ、わずかな時間でアピールタイムは終わってしまったのだ。

それでも熱心にオファーを出してくれるクラブがあった。それは香港のサッカークラブ。海外への移籍に関して不安もあったが、それ以上にそのチームがACL出場権を獲得していることに加え、FCバルセロナ(スペイン)の下部組織で指導した経験を持つ人が監督を務めていることが細川にとって魅力的に映った。負傷から1カ月、まだ完治していない状況ながらも、加入を目指して練習に参加することとなった。

しかし、ウォーミングアップ時、インサイドキックをしようとした時に右ひざが悲鳴を上げた。“バチン”という音とともに細川は崩れ落ちたのだ。それまで靭帯は不完全損傷であったが、この時完全に靭帯が切れることに。さらに半月板まで損傷してしまったのである。これから手術を行うとなると、半年以上の離脱が予想される。「それでは相手のクラブに迷惑がかかる」ということで契約を白紙に戻し、志半ばどころか、一歩も踏み出せないまま忸怩たる思いで帰国の途についた。

実家のある埼玉に戻り、手術を行い、リハビリの日々を送ることとなるが、そこで細川は大事なことに気づくこととなる。

「1人じゃないんだ」

リハビリはけがの痛みよりも1人で行うことによる精神面の方が堪えるという。しかし、細川の場合、父親が練習の手伝いをしてくれ、母親が栄養面の管理をしてくれたという。「両親には本当に感謝しています」と振り返る。7月に入ってからは母校の仙台大学の施設を借りてリハビリを行うことに。その時、自宅に泊めてくれたのは仙台時代のチームメイトである朴柱成(現・慶南FC/韓国)であった。

さらに、ベガルタ仙台のクラブハウスに訪れた際、手倉森誠監督が「リハビリに使うなら、施設を使っていいよ」と許可してくれたことで、仙台のクラブハウスでリハビリできるようになり、元チームメイトと一緒に汗を流すことができたのである。

「1人じゃなく、みんなで一緒にできたことが精神的に大きかったし、みんなと話をして、もう1度Jの舞台に戻るという思いを強くしましたよね」

ちなみに食事も元チームメイトたちがよく御馳走してくれたそうだ。「金銭的にも大変だったときなので助かりました」と苦笑いする細川だが、この時期が彼にとって大きかったことは間違いない。約2週間仙台のクラブハウスに通い、ボールを蹴れるようになるまで回復した細川は再び仙台大学に戻ってサッカー部員たちと汗を流し、復帰に向けて調整を進めたのである。

そしてコンディションが上がってきた8月に水戸の練習に参加。当時水戸は塩谷司が広島に移籍し、途中加入した吉本一謙(現FC東京)が負傷してしまったことでセンターバックが手薄となっていた。そこで細川の力が必要とされたのだ。約1カ月の練習参加の末、契約を勝ち取ったのである。

「本当にいろんな人に支えられて今があるということに気づきました。僕がプレーできることを僕以上に喜んでくれる人がいる。それがうれしいですし、いいプレーをすることが恩返しになると思うので、死ぬ気で頑張りたいと思います」

今季、開幕から水戸の最終ラインを支えている細川。その気迫をむき出しにしたプレーは今の水戸に欠かすことができない。そして、その姿は水戸サポーターだけでなく、これまで細川に関わったすべての人に見てもらいたい。細川にかけた一つひとつの言葉、一つひとつの行動に対する感謝の思いが、彼のプレーには込められているのだから。見れば、必ず伝わることだろう。

以上

2013.06.03 Reported by 佐藤拓也
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