今季2度目の連勝を挙げた勢いそのままに、今節に挑んだ水戸。戦前、「ホームだし、積極的に戦う」と柱谷哲二監督が宣言していた通り、序盤から水戸は“普段着の”アグレッシブなサッカーを繰り広げた。
中盤で激しくプレスをかけてボールを奪ってからスピーディーにボールを動かして神戸の守備を揺さぶった。開始早々こそ神戸にチャンスを与えたものの、その後は徐々に水戸がペースをつかみ出し、橋本晃司を中心に神戸陣内に押し込む時間が続いた。
だが、水戸の前に立ちはだかったのは神戸の個の力であった。守備において驚異的な働きを見せたのがエステバンだ。抜群の守備範囲の広さとボール奪取能力を誇るエステバンにことごとく攻撃を潰され、押し込みながらもゴールを脅かすことはできず。ロングボールで打開を試みようとしても、ともに190cmを超える長身CBに跳ね返され、そしてエステバンの巧みなカバーリングでセカンドボールを拾われ、厚みのある攻撃を繰り出せなかった。
そして攻撃では、32分のプレーに示された。水戸が中央にコンパクトなゾーンを作って神戸の攻撃をサイドに追いやった。神戸の右サイドの奥井諒にボールが渡った際、水戸の守備陣はこれまでの対戦相手同様クロスを上げてくると予想し、その準備をしていた。
だが、奥井は水戸の意表をついてシュートを放ったのだ。想定外のプレーに水戸守備陣は対応できず。ゴール左隅に突き刺さるスーパーゴールを決められてしまう。守備を崩されずに喫した失点に、個の力の差を見せつけられることとなった。
また、先制してからの神戸の戦い方はしたたかであった。「構えてから、ボールを奪って攻撃に出ることを意識した」とマジーニョが語ったように、得点を奪い返そうと前がかりになる水戸の隙を突くサッカーへと切り替えてきた。3ラインのブロックを作り、ボールを奪ってからショートカウンターを狙うという意思統一が図られた。
それに対して、水戸は攻めあぐねることに。
中盤を経由して攻撃を作りたくてもスペースがなく、なかなかボランチがボールを受けられず、相手のゾーンを広げようとロングボールを蹴ってもセンターバックに跳ね返される繰り返し。
そして焦りが出始めた65分、左サイドの輪湖直樹がGKへのバックパスをミス。それをマジーニョに奪われ、あまりにも痛い追加点を許してしまった。
終盤、水戸は内田航平、島田祐輝、難波宏明といった攻撃的な選手を次々に投入して反撃を試みようとするものの、攻守において連動性を欠き、チャンスらしいチャンスを作れないまま試合は終了。個の能力で勝り、チームとしての一体感も上回った神戸が勝つべくして勝ったゲームであった。
前節鳥取に敗れ、連敗だけは避けたかった神戸にとっては安堵の勝利と言えるだろう。前半こそ危ないシーンがあったが、後半は守備に重点を置き、安定感のある戦いぶりを見せることができた。2点目を取るまでなかなか水戸の守備を崩せず、攻撃では課題を残したものの、守備の安定感こそが神戸の強みであることをあらためて証明する勝利。ここから攻撃を上積みしていけば、自ずとJ1は近づいてくることだろう。
6500人もの観衆の前で勝利を挙げられなかった水戸。決して内容は悪くなかったが、問題は失点した後の戦い方にあった。
「残り15分、ボールを取りに行かない、負けん気を出していく奴がいない。それに対してとってもショックだった」と柱谷哲二監督が怒りをあらわにしたように、2失点目以降反撃に出られなかったことが何よりも悔やまれる。「やりきる」「走り切る」という柱谷監督就任以降掲げてきたチームのコンセプトを出せなければ敗戦は必然。「負けるにしても負け方がある。残り15分でファイトできないのは俺のチームじゃない」と柱谷監督は吐き捨てた。
ここで下を向いてしまうのか。それとも、もう一度上を向いて前に進むのか。今こそ水戸の真価が問われる時であり、「水戸らしさ」を見つめ直すラストチャンスである。まずは次節東京V戦、柱谷体制2年半で積み上げてきたものすべてを出し切ることが求められる。その先に勝利は待っている。
以上
2013.06.02 Reported by 佐藤拓也
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