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ルヴァン 準々決勝 第1戦
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【J1:第8節 柏 vs 大宮】レポート:連続無敗記録を“19”に伸ばした大宮が大勝を飾り、暫定首位に立つ。柏は攻守に噛み合わず、ホームで完敗を喫する(13.04.27)

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対戦相手がどのようなスタイルで出てくるのか。戦前の綿密なスカウティングを参考に試合にはイメージを持って臨む。実は試合前日、藤田優人は「大宮の左サイドは裏が空きやすい。そこを突いていきたい」と語っていた。そして実際に、試合開始直後から藤田は積極果敢に下平匠の背後を取った。そして敵陣深くまでえぐり、クロスを供給するシーンを作り出した。「あまりにも高い位置を取るからびっくりした」(チョ ヨンチョル)、「少し嫌な感じはした」(渡邉大剛)という言葉から察すると、おそらく柏の右サイドは大宮が想像していた以上に推進力があったのだろう。拮抗した序盤だったが、攻撃へのアグレッシブな意識や心理状態を含めて、わずかに柏が優位に立っていたはずである。

対する大宮は、渡邉大剛によると柏の出方を次のようにイメージしていた。「田中順也が左に来た時に間で受けるというよりは、クレオ、工藤、田中で裏へ抜ける動きが多くなるだろうと思っていた。レアンドロと藤田をケアしなければいけないというのはあったが、マス(増嶋)が攻撃参加してこないということは予測できた」。ということは、裏を返せば序盤に虚を突かれる形になった藤田の攻め上がりさえ対応できれば、「柏がどういう風に攻撃してくるか、我々はしっかり分析しました。マイボールになった時にいかに彼らが空けたスペースを素早くカウンターで突いていくか」(ベルデニック監督)というように、大宮は周到に練っていた柏対策を実践すればいいだけである。

柏が序盤に右サイドから見出した突破口。ここで得点できなかったことは柏にとっては想像以上に痛手となった。最初は虚を突かれた相手のサイドからの攻撃に大宮が対応し始めると、「サイドバックが高い位置を取っているので、裏は突けるんじゃないか」(渡邉大剛)と、逆にそれは“狙いどころ”へと変わった。ズラタンに食い付き、人数をかけて奪いにいったにもかかわらず、そこで奪えなかった柏の守備も大問題だが、18分にはチョ ヨンチョルが藤田の上がった裏を突いてフリーとなり、そこからのクロスでノヴァコヴィッチの先制弾を演出。「相手の良さの裏返しを突けた」(渡邉大剛)。

今シーズン、先制されるとリーグ戦では未勝利の柏。選手たちは「先に取られると厳しくなる」と口を揃えるが、それは自分たちで状況を悪化させてしまっているように見える。というのも、柏は先制されると攻撃陣が裏一辺倒になってしまい、攻撃陣が前線に張り付く傾向に陥る。もちろん、序盤に「裏を取れた」という手応えもあったのだろうし、先制されたことによる焦りや、リーグ戦では結果が出ていないからこそ、なおさら「早く同点にしたい」という気持ちも手伝ってのことだとは思うが、4トップが前線に張り付く4−2−4システムのような形になり、大宮のコンパクトな守備陣形の中にはめられて攻撃は停滞。「4人全員が裏を狙うんじゃなくて誰かが落ちてくればフリーでパスを貰えると思う。そういったところでゲームを読む力が足りなかった」と振り返る栗澤僚一の言葉通り。大宮戦に限らず、同じく大敗した第2節F東京戦、第6節甲府戦も然りだ。焦りすぎ、攻め急ぎすぎの感は否めず、1点を先制されたからとはいえ、もう少し落ち着きを持って攻撃を構築する必要性がある。それともACLの疲労により体が動かず、頭の中もリフレッシュされずに状況判断が鈍るのだろうか。

一方の大宮はノヴァコヴィッチ、ズラタン、この2トップを絡めた攻撃の連動性は見事だった。彼らは大柄だが、前線に張るだけのFWではない。2人が同じ高さになることはほとんどなく、常にギャップを作り出す動きを繰り返し、したがって近藤直也、渡部博文の両センターバックはマークに付きづらいし常に動かされる。3点目はPKから生まれたが、そもそもそのファウルは左サイド、ワイドに開いたノヴァコヴィッチが柏のディフェンスラインの背後を狙う斜めのパスを送り、ズラタンに裏を取られた渡部博文がたまらず倒したものだった。この一場面だけを見ても、攻撃の流動性という点で柏との違いがはっきりしている。大宮の2トップはボールも収まるため、彼らがタメを作り、柏の守備陣を食い付かせた時は、連動して中盤の選手がスペースへ飛び出す鋭い攻撃へ展開する。シンプルだが効果的だ。

柏はこの4失点でリーグワーストの17失点となった。「失点には必ず原因がある」(大谷秀和)が、前半終了間際の大宮の2点目も、ショートコーナーへの対応が遅れた上に、ゴール前も人数はいるがマークが甘く、4失点目だけはクリアボールの跳ね返りがフリーのチョ ヨンチョルの前にこぼれてしまったので“不運”とも取れるが、シーズンを通じてここまで失点が多い原因は、守備陣の対応の問題だけではなく、先ほど指摘した攻撃陣が張り付いて攻撃が停滞してしまう点も、結局は中盤にスペースを空けたり、拙攻で相手に易々とボールを受け渡してしまうということを考えれば、攻守においてチーム全体で今一度見直す必要がある。ただ、一昨シーズンはJ1で優勝、昨シーズンは天皇杯で優勝しているのだから、やり方自体は間違っているとは思わない。おそらくわずかなズレ、微妙な狂いが生じ、それらが積み重なって大きな問題と化しているのだろう。

大宮にとって4−0というこの結果は必然である。自分たちのプラン通りにゲームを進め、序盤に見られたわずかな綻びの糸口も、すぐさまピッチ上で選手たちが修正し、逆に突破口へと変えてしまう。それはまさに“強者”の戦い方だった。1日早い試合開催となったため暫定での首位だが、“暫定“の二文字が消える日は、そう遠くはないだろう。

以上

2013.04.27 Reported by 鈴木潤
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