首位・神戸との一戦を前に反町康治監督は用意周到な準備を重ねた。この日のために立てた綿密なプランニングも、神戸対策のための3-5-2のフォーメーションも、飯尾和也とパク カンイルの先発起用もそうだ。しかし全ては“ポポ・キャノン”2発の前に水泡に帰した。試合後の記者会見において、格上チームに勝つ方法について問われた指揮官は「中東のお金持ちを見つけることですね。そんなことを言うと監督の夢がなくなっちゃうからつまらないですけど、そういうこともサッカーの一部ですから」と苦笑いを浮かべたが、それは一面の事実。組織的なサッカーをする相手を圧倒的な個の力で捻じ伏せてしまうというのは、ある意味サッカーの醍醐味ですらある。
予想どおりのメンバーとフォーメーションの神戸に対し、松本は3バックの中央に飯尾、ボランチにパクを起用した3ボランチ気味の3-5-2のフォーメーションで今節に臨んだ。この3-5-2は第4節・札幌戦で後半から見せた形で、サイドに流れて起点を作る前田俊介に手を焼いた松本が、そのサイド攻撃をケアするために用いた陣容だ。この日の神戸もマジーニョに小川慶治朗とサイドに攻撃力に富んだアタッカーが多く、まず相手のストロングポイントを打ち消したい松本にとっては有効な策と思われた。事実、マジーニョは持ち味の突破力を生かせる場面は少なく、持ち味を発揮できずじまい。また田代有三も飯田真輝が局面で激しいマッチアップを見せて自由にさせなかった。このことからも松本の組織的な守りはある程度機能していたように映る。攻撃面でも、この日体調不良だった相馬崇人の背後をシンプルに突く攻撃は効果を見せ、13分には右サイドを突破した玉林睦実が打ったシュートのこぼれ球を、船山貴之が冷静に押し込み先制点。
しかし、その1分後にポポの右足が火を噴いた。左サイドでボールを受けると迷うことなく振り向きざまに右足を振り抜き同点弾をあげ、ホームチームに主導権を渡さない。そして、スコアが1-1のまま問題の71分を迎える。マジーニョからの横パスに反応したポポは、そのまま右足を振り抜く。本人をして「打つスペースがあったので、迷うことなく打った」というシュートはゴールネットに一直線に突き刺さる。神戸サポーターを歓喜させ、松本サポーターを凍りつかせるのに十分な一撃だった。ミドルレンジからも積極的にシュートを放つポポに対して、寄せに甘さがあったという意味ではそうかも知れない。しかし、これは打ったポポに敬意を表さなければ礼儀に反するほどのスーパーゴールだった。
アウェイで勝点3を積み重ねて首位の座をキープして4月に突入する神戸は、試合終了後に安達亮監督は「まだ個人の能力に頼っている」と振り返った通り、守備に意識を置く試合運びをする松本を崩しきることは出来なかった。他チームが羨むほどのカードを組織の中に組み込めば、また一段上のステージへと進むことが出来るだろう。
一方の松本は、「試合の入り方は今季で一番良かった」(船山)との言葉通り、序盤から攻守に渡りアグレッシブな姿勢を感じ、先制点の直後は“勝てる雰囲気”すら漂った。しかし神戸との間に一朝一夕では埋めることの叶わない戦力差があったという事実は認めなければいけないだろう。「真正面から喰らったパンチ」(反町監督)の痛みを、チーム・サポーター、そして自戒を込めて書けばメディアも――。この先も続くリーグ戦へと生かすために忘れないようにしたい。
以上
2013.04.01 Reported by 多岐太宿
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