4-4-2のシステム、球際の厳しさ、前線を中心とした運動量、サイド攻撃、質の高いプレースキッカーの存在……。共通点が多く、前節は相手に大量のシュートを浴びせている山形と栃木がNDスタで対戦する。

山形は2連敗のあと、前節は今季初のホームゲームで長崎を相手に17本のシュートを放ち、2-0と勝利した。得点はプロ6年目で初ゴールとなる右SB山田拓巳と、直接フリーキックに磨きがかかった宮阪政樹。開幕から2戦での失点の多さから、GK常澤聡を起用するなど先発3人を入れ替えたことも功を奏した。「3点目が取れれば…」、「前半のうちに追加点が取れれば…」と欲を言うこともできるが、奥野僚右監督は「2-0という難しいスコアからそのまま3点目を狙う姿勢というのも続けて表現してくれた」と、意欲の有無こそを今後につながるものとして大事にする。中2日の連戦をともにホームで戦える大きなアドバンテージも活かし、連勝でさらに波に乗りたい。

栃木は第2節の札幌戦に廣瀬浩二のゴールで今季初勝利を挙げ、その勢いをもって前節はホームに千葉を迎えたが、19本のシュートを放ちながらスコアレスドローに終わった。ボランチでプレーする高木和正は「どの試合も気持ちは変わらないが、結果として今日は千葉相手に今までで一番いい試合が出来た」と内容には納得。開幕からの3試合で1得点、1失点。失点は少ないが得点も思うように奪えず、内容に見合った勝点の積み上げが果たされない試合が続いているが、前節を終えた松田浩監督は「ハードワークが報われなかったこと、ホームのサポーターの皆さんに勝利をプレゼントできなかったのは残念だが、期待をしていただけるような試合はできたと思う」と方向性には確かな自信を隠さない。

栃木は前節、強烈な押し上げで千葉の縦パスを抑え込み、敵陣で形にこだわらずに攻撃する分、失ったあとはボールに対して高い位置から連動したプレッシャーをかけている。センターバックに激しいチェイシングを受けることも予想されるなか、山形は自陣で受けたプレッシャーのため幅を使った攻撃を展開できなかった、2節前の福岡戦の教訓を生かさなければならない。栃木のプレッシャーをシンプルなロングボールで回避するのか、それとも速いパスワークなのか。セカンドボールの奪取や球際の競り合いも優劣を決める重要な要素なだけに、ピッチ上のすべてのエリアで迅速かつ的確な判断が求められる。

さらに、サイドを起点に攻撃するチーム同士の対戦だけに、両サイドでも激しい攻防が見られそうだ。山形の左サイドには、10番を背負うドリブラー・伊東俊とクロッサーとしての存在感を増している中村太亮。今シーズンは2人のパス交換で縦の打開が多くなり、左サイドは山形のストロングポイントにもなっている。一方、栃木の右サイドには、クリスティアーノ。強引な突破から、個人でシュートまで持ち込むテクニックとパワーを兼ね備えている。

山形の右サイドでは、SB山田が前節、流れのなかで攻め上がりJ初ゴールを挙げたばかり。積極的な攻撃参加を特長とするが、悪い奪われ方をすれば逆に相手に起点をつくられやすいゾーンでもある。栃木は前節、このスペースをFW廣瀬浩二が頻繁に狙っている。スペースが広ければ一発で入り込み、十分なスペースがなくても、SH菊岡拓朗のワンクッションで相手を引きつけてから縦にパスをつなぐパターンもある。局面のマッチアップではあるが、そこではチーム全体のタクティクスが試される。

J2で3連勝は神戸のみ。山形も栃木も1勝グループの12クラブのなかにいる。スタイルを貫くことも結果を出すことも同じように大事な序盤、いまだ混沌のJ2で着実な一歩踏み出すのはどちらか。相手のコンパクトな陣形を広げ、つながりを断ち切る90分間のハードワークが勝敗を分ける。

以上

2013.03.19 Reported by 佐藤円