ハラハラなのか、ワクワクなのか、ドキドキなのか…。
いずれにせよ、今節のベストアメニティスタジアムは、めったにお目にかかることができない内容の試合だったと言っていいだろう。90分の試合時間の中で、9点が入った。それらのゴールがすべて素晴らしいゴールだった。
28分の鳥栖の先制点は、鳥栖にとってこの試合のファーストチャンスを池田圭が決めたものだった。
50分の鳥栖の追加点は、金民友の左足アウトサイドから放たれたドライブのかかったものだった。
51分の鳥栖の3点目は、川崎Fのクリアボールをカットした水沼宏太が約30mのミドルを決めたものだった。
54分の鳥栖の4点目は、センターから右サイドに持ち出した高橋義希のクロスを絶妙のトラップで豊田陽平が決めたものだった。
64分の川崎Fの1点目の反撃弾は、ペナルティーエリア外からの大久保嘉人の豪快なミドルシュートだった。
70分の川崎Fの2点目は、レナトの早いクロスに小林悠が身体を投げ出して決めたヘディングシュートだった。
73分の鳥栖の5点目は、左サイドからのクロスにタイミングよく飛び込んだ豊田陽平がヘディングで決めたものだった。
82分の川崎Fの3点目は、鳥栖の5バックを細かなパスで崩してレナトが右足で蹴り込んだものだった。
87分の川崎Fの4点目は、レナトの右サイドからのクロスにパトリックが高さと上うまさで決めたヘディングゴールだった。
どのゴールを取り出してもきれいなゴールであり、シュートに至るまでも完全に相手を手玉に取ったものだった。
しかし、得点が記録されるということは、相手チームには失点が記録されることになる。偶然のゴールは生まれても、偶然の失点はあり得ない。言い換えると、ミスがなければ失点は生まれないわけで、そこには何かの理由がある。
5失点を喫した風間監督は、「何か崩されたということよりも、そこのポジションにいなかった、あるいは忠実にゴール前に立っていなかったというところ」と個人の“サッカーに対する忠実性”の問題を指摘した。4失点を喫した尹晶煥監督も、「(交代)については少しカードというところで考え直さないといけない部分はあったかもしれません」と試合運びのまずさを認めた。お互いに、大量得点の陰に様々な課題も見えた試合だったといえる。
トレーニングの中から選手の状態を把握して、プレーとして結果を出せるだろうと考えて送り出した選手でも、ポジショニングをずらしたり、シュートに身体を寄せきれなかったりするものである。DFの枚数を増やして失点を防ごうと考えた布陣でも、ドリブルや長短のパスでほころびを作ってしまうものなのである。理論通りに展開しないのがサッカーであり、相手がいるからこそミスも出てくるスポーツなのである。繰り返すが、得点の陰に課題も見えた試合であった。
そんな中で、鳥栖の高橋義希と川崎Fの中村憲剛について、少しだけ触れておきたい。
高橋義希は、やや守備的な位置に入るボランチで、この試合でも川崎Fの起点となる中盤をつぶしにかかっていた。だからと言って、守備の人ではない。鳥栖の5得点のうち、3得点のアシストを記録した視野の広いボランチなのである。相手のボールを拾って前線に供給したかと思うと、左サイドに流れてボールを受けて中央の選手にクロスを送る。相手の決定的な場面では身体を投げ出してシュートブロックにも入ったし、起点となる相手のトップ下に思うようにボールを入れられないポジショニングを取り続けていた。この試合で、5得点をあげることができたのは、彼が正確なキック力と視野の広さを持っているからであり、好機だけでなく危険なところをかぎ分ける能力を持っているからである。
川崎Fの中村憲剛も、DFの裏を取る動きや下がってボールを受けるシーンを多く見せていた。ただ、残念なことにそこにボールが入る回数がいつもよりも少なかったように感じた。中村憲剛もそこをわかっていたようで、左サイドに流れたりしながら、ボールを受けるコースを作り出していた。しかし、鳥栖がDF・MF・FWと3列の守備のブロックを敷いてボールの入れ所のスペースを消したことで、高い位置でのプレー機会を減らしていた。このあたりも、川崎Fが本来持っている力を出し切れなかった要因の一つかもしれない。試合の入り方は悪くはなかっただけに、相手が出てこなくなった時の崩し方も今後の課題の一つといえるだろう。
見る人によって、評価が分かれる試合であることは間違いない。その中で、一つだけ言えることは、どこが相手であれ100%の試合運びをすることはできないことである。お互いが、同じ目的を同じ試合で得ることができないのが競技であり、勝者がいれば敗者が生まれるものである。得点が生まれると相手には失点が記録される。ボールを保持している方が攻撃側で、相手は守備となるのである。サッカーの試合では、常に相対するものが存在し、常に変化していることを再認識した試合でもあった。
ピッチを挟んで相対するサポーターたち。
歓声と悲鳴、ホームとアウェイ、ここにも相対する構図が存在する。
その中心には、1個のボールがあり転がり方次第で喜びにも悲しみにもなる。
サッカーは、両者が100%満足する結果などあり得ないスポーツである。
知れば知るほど、奥の深さに気付かされるのもサッカーなのである。
以上
2013.03.17 Reported by サカクラゲン
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