新しい体制で事を起こす時には、不安はつきもので想定外のことも起きやすい。サッカーとて同じこと。
ヘッドコーチ時代を含め、今季で4年目となる尹晶煥監督の強みは、選手、スタッフ、フロントが一体となってシーズンを迎えることができること。昨季の主力だったメンバーが、多く残ったこともこれを後押ししている。
その鳥栖と開幕戦を戦うことになる鹿島は、今季のJ1の中で唯一監督が代わったクラブ。部外者が不安を指摘するとしたらこのあたりだろうか。
昨季からの継続で今季に臨む鳥栖と新体制で臨む鹿島と言ったところだろうか。ならば、鳥栖が優位に戦える・・・なんて結論付けるほどサッカーは甘くない。
最後まで落ちない運動量とアグレッシブさの鳥栖と組織だったポゼッションサッカーの鹿島の対決と表現する方がふさわしい。そんなワクワクするカードが開幕戦で見ることができる。
今季の鳥栖は、ここ数年の中でも仕上がり具合が非常によく見える。
離脱者が出ていないというだけでなく、ほとんどの選手がシーズン前の厳しい練習をクリアし、目指すサッカーに邁進しているからである。(鳥栖的な表現で言うと“超!奮迅。”といったところか)
特徴である“タテに早い”サッカーも精度を増してきた。サイド攻撃の回数も増えている。ミドルシュートを打てる選手も揃っている。間違いなく昨季よりも“鳥栖らしさ”が増長しているのである。
どことなく堅守のイメージが強く見えるが、攻撃力も要注意と添えておく。
対する鹿島も攻撃力はリーグ屈指と言ってよいだろう。
先週末のPSM水戸戦ではダヴィ、大迫(勇也)の2トップがそれぞれ得点を奪ったとのこと。もともと展開力があるチームに、ダヴィという強力なFWが加わった。野沢拓也も2列目に控えている。両サイドバックも積極的に攻撃参加を仕掛けてくる。
リズムを掴んでしまうと、多彩な攻撃を見せてくるのが鹿島なのである。
本来ならばここから守備の話題を取り上げたいところだが、今節のプレビューに関しては攻撃に絞ってお伝えすることをお許し願いたい。
前述したとおり、お互いに攻撃力を持っていることはわかって頂けたと思うので、ここからはその攻撃力をいかに使って攻め込むかを読者諸兄と一緒に考えてみたい。
鳥栖は、前線に高さと強さを持つ豊田陽平がいる。当然のごとく、鹿島のDFは彼に厳しいマークを行うだろう。できるだけゴールから離したいので、高い位置を取ることも予想される。狙い目は、このDFの裏のスペースにあるのではないだろうか。先のPSM(対F東京戦)でも中盤からの一本のパスでFWを走らせて得点をあげている。鹿島の特徴でもあるフラットな最終ラインは、鳥栖にとって狙い目になるかもしれない。
また、攻撃参加したサイドバックのスペースも鳥栖にとってはボールの運び所になりそうだ。ここでFW池田圭のスピードが生きてくる。
繰り返しになるが、特徴である“タテに早い”サッカーで鹿島ゴールを狙うことになりそうだ。
対する鹿島は、ピッチ幅を使ったサイドをいかに使って鳥栖の守備を揺さぶりたいのではないだろうか。鳥栖はコンパクトな守備体系を取り、ボールサイドに人数をかけるので、逆サイドの選手はフリーになっていることが多いからである。例えば、左サイドMFのジュニーニョにボールが入ったとすると、逆サイドの野沢拓也がフリーになるのである。
ここで、簡単に逆サイドに展開するのではなく、できるだけボールサイドに鳥栖の選手を集めるようなボール運びを行うと、それだけ鹿島の攻撃に使えるスペースが増えることにはならないだろうか。
鹿島の選手は簡単にボールを失わない技術と個人でボールを運ぶ技術を備えた選手が多いだけに、展開力と個人のテクニックのバランスが取れれば鹿島の流れるようなポゼッションサッカーを見ることができそうだ。
このようなお互いのストロングポイントを開幕戦では見てみたいと思う。
本記は、攻撃について書かせて頂いたが、当然のごとく片方が攻撃を行うともう片方は守備に回るのがサッカー。
読者諸兄は、それぞれの応援するチームの攻撃をお楽しみいただき、守備機会では選手を後押しして頂きたい。明日のレポートでは、その守備にもついて触れさせていただくつもりですので、一緒に開幕戦を楽しみましょう。
攻守の入れ替わりが目まぐるしいサッカー。それが、アンチサッカーを唱える人には落ち着かないらしい。
しかし、サッカーを愛する者にとっては、ワクワク感とハラハラ感が絶え間なく訪れることで時を忘れてしまう。
90分間の試合のどこを切り取ってもドラマがあるのがサッカー。ならば、自分なりのドラマを見つけるのも一考かもしれない。
サッカーは、セオリー通り進行しないスポーツなのだから。
以上
2013.03.01 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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