練習試合も含めれば、開幕直前に清水と新潟が戦うのは、近年の恒例行事。新潟がこの時期に静岡(Jステップ)でキャンプを行なっていることによって実現している対戦だが、毎年同じ相手と力試しができるメリットはかなり大きい。そのため、どちらのサポーターにとっても、今年のスタートダッシュを占ううえで非常に注目度の高いプレシーズンのお楽しみとなっている。
ホームの清水にとって最大の注目点は、今回も3ボランチを継続するのかという部分と、攻撃がどれだけ向上しているかという部分だ。清水の基本布陣は4-3-3でずっと変わらないが、昨年は中盤を一昨年の形(トップ下2人とボランチ1人)からトップ下1人とボランチ2人という形にシフト。今年は、そこをさらに3ボランチに変更してプレシーズンの試合を戦ってきた。その3ボランチを務めているのは、右から村松大輔、杉山浩太、そして新戦力の李?洙。3人ともハードワークとタイトな守備ができるため、守備は非常に安定していて、ここまでその中盤で臨んだ4試合ではまだ1点も取られていない。
その面ではゴトビ監督もかなり手応えをつかんでおり、キャンプでは「オプションのひとつ」と語っていたが、開幕までその形のままいく可能性が徐々に高まっている。そこで現在の課題となっているのは攻撃面だ。とくに目立つ課題は、バレーへのサポートが薄く、彼が孤立してしまっているため、前線でタメが作れないこと。ゴトビ監督は、中盤の3人のうち誰か1人が上がったり、両ウィングが中に絞ったりしてサポートすることを求めており、バレーを経由しながら全体を押し上げてどれだけ厚みのある攻撃ができるかが大きな注目点になる。
先週のプレシーズンマッチ・磐田戦で右ウィングとして好プレーを見せた石毛秀樹も、「(磐田戦は)攻撃がバレーに蹴るだけみたいになっていた部分があるので、そこにもっと自分やトシ君(左ウィングの高木俊幸)が絡んでいきたいし、3ボランチの1枚も加わって、ペナルティエリア近くで細かいパスや崩しが入れば、もっと攻撃が良くなると思います」と語る。
3ボランチでも両サイドの2枚が高い位置をとれば、一昨年の形と同じになる。そこに近づくために、守備のときから全体をコンパクトにして前線と中盤の距離を近くしておくことも欠かせない。ゴトビ監督も「守備はもっと組織的にコンパクトに」と語っており、DFラインを上げて前からのプレスをより厳しくし、高い位置でボールを奪う回数を増やすことも得点力アップには欠かせない要素だ。
一方、新潟のほうは、2月19日から静岡市内の「Jステップ」で3次キャンプに入っており、この試合が長かったキャンプ生活の総仕上げとなる。今季は、昨年リーグワースト2位だった得点数(29点)を上げることと、センターバックの主力2人が移籍(鈴木大輔→柏、石川直樹→仙台)した中で、失点数では2位タイ(34点)を誇った堅守を再整備することが2大テーマ。
先週のプレシーズンマッチ・東京V戦は2-0で勝利し、柳下正明監督も「全体的にはキャンプでやってきたことを意識してやってくれた。開幕まで残り2週間、もっともっと精度を高めていきたいと思います」とまずまず順調に準備が進んでいることを認めている。新戦力のボランチ、レオ シルバも早くから力を発揮し、かなり期待は持てそうな雰囲気。中盤には柳下監督が磐田時代から特徴をよく理解している成岡翔も加わって、楽しみが増えている。
また、東京V戦では筋肉の張りがあって大事をとった田中達也も、木曜日の練習試合(ソニー仙台戦)で対外試合での初得点を決めている。得点力アップに向けて新潟サポーターの期待も高く、今回の試合で出場すればもっとも注目される選手になるので、彼と周囲の連係や彼自身の切れという部分には大いに注目したい。
時期的な理由もあって、派手な打ち合いは期待しにくいが、開幕前の最終チェックとして、見どころは非常に多い試合。清水のキャプテン・杉山浩太は、「本当に本番だと思って臨む」と語っており、先週も勝利にこだわって戦った新潟も同様だろう。公式戦と同じ気持ちの入った試合という意味でも、スタジアムに足を運ぶ価値は十分すぎるほどある試合と言えるだろう。
以上
2013.02.23 Reported by 前島芳雄
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