今回で19回目を迎える由緒あるちばぎんカップで、ネルシーニョ監督は大胆な策に出る。監督就任5年目、戦術面は成熟の域にあり、柏のチームとしてのベースはすでに出来上がっている。そこに、今オフには鈴木大輔という日本屈指のセンターバックを新潟から獲得した。「全てのタイトルを狙いに行く」と公言し、とりわけJリーグとAFCチャンピオンズリーグに狙いを定める智将は、オプション拡大を目論み、3バックシステムを試すことになりそうだ。どちらがメインというわけではなく、状況に応じて4バックと3バックを使い分けることができれば、それは勝利を掴む近道となるだろうし、その使い分けを実践できるだけの高いレベルを備えた選手たちを、柏は“大型補強”によって揃えることができたのである。
元日に天皇杯決勝を戦った柏は、1月30日始動と全40チーム中でもスタートが最も遅く、指宿キャンプも9日間と短めだった。にもかかわらず、2月23日のFUJI XEROX SUPER CUP 2013を皮切りに、27日にはAFCチャンピオンズリーグ初戦の貴州人和戦と早くもタイトな日程を強いられるため、短い準備期間の中で仕上げていかねばならない。上記した鈴木をはじめ、キム チャンス、谷口博之、クレオの新加入4選手はスタメンに名を連ね、指宿キャンプで好調をアピールしていた狩野健太もおそらく途中から起用されるだろう。「実戦でうちのスタイルに慣れろ」。そんなネルシーニョ監督の言葉が聞こえてくるようだ。
新システムのテストと新戦力の融合は、間違いなくちばぎんカップの大きなテーマであるが、仮に新システムが機能せず、新戦力のフィットが思いのほか進まなければ、昨シーズンまでのシステムに戻し、来週のFUJI XEROX SUPER CUPやACLでは現有戦力中心のメンバーを組めばいい、指揮官はそんな青写真を描いているのかもしれない。
鍵を握る選手には茨田陽生の名を挙げたい。指宿キャンプで軽傷を負った大谷秀和は、今回のちばぎんカップを回避し、次週のFUJI XEROX SUPER CUP 2013の広島戦と、ACL初戦に照準を定めて調整中である。となると、中盤の舵取りは茨田が担う。大谷に代わり、リスク管理や中盤での守備も求められるが、やはり期待したいのは茨田の持ち味である攻撃面だ。ボランチを組むのが谷口、後ろには鈴木、右にはキム チャンス、前にはクレオと、茨田の周囲は新加入選手ばかりである。「お互いに特長を見ながらやっていきたい。みんな代表を経験しているようなレベルの高い選手ばかりで、戦術理解も高いので問題はないと思う」(茨田)。成長著しいパサーは彼らをどのように操り、攻撃を奏でるのだろうか。
対する千葉にもチームの仕上がり、新戦力のフィットを見定めるという点では柏と意味合いは同じだが、相違点もある。1月17日の始動後、16日間に渡る石垣・沖縄本島キャンプを敢行。就任1年目の鈴木淳監督はチームを1から構築していくことになるが、ちばぎんカップまでは1カ月の準備期間があり、先日行われた明治大学との練習試合でもジャイール、谷澤達也、大塚翔平、米倉恒貴らのゴールで順当勝ちを収めた。ここまで順調な仕上がりを感じさせつつも、ちばぎんカップのパフォーマンスを考慮に入れ、さらに2週間後に控えたJ2開幕戦へ方向性を見定めながら入念にチームを仕上げていくことができる。
それでも焦点は2人の新外国籍選手、ケンペスとジャイールだろう。彼らが噛み合いさえすれば「絶対J1!」のスローガン通り、“昇格候補本命”の称号は千葉が手中にしてもおかしくはない。ジャイールは前線の他、2列目でのプレーも可能との情報も入っており、Kリーグの済州ユナイテッドで見せた破壊力がどれほどのものなのか、そのプレーには自然と注目と期待が集まる。
プレシーズンマッチのためテスト色は強いが、同時にダービーマッチであり、両サポーターからはユーモアの意をふんだんに込め「世界三大カップのひとつ」と呼ばれる誉れ高きちばぎんカップ。昨年のMVP工藤壮人は、今年から、カレカ、北嶋秀朗の背負ってきた『エースナンバー9』を継承する。その初お披露目となる舞台で、若きストライカーは「2年連続MVPを狙っています」と力強く宣言した。
以上
2013.02.16 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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