試合に敗れるときはいつも寂寥感が漂うものだが、別れを伴うとき、その印象はさらに強くなる。試合に負けた直後、ジョルジーニョ監督はベンチにいる選手・スタッフと抱擁を交わし、最後の試合での健闘をたたえた。ピッチでは空を見上げて涙をこらえる新井場徹の姿も見える。そこに、チームメイト一人ひとりと握手をしてきた興梠慎三が近寄り、二人はそっと肩を抱き合った。
「毎年のことですけど入れ替わりの激しい世界ですから、出会いがあり別れがあり。今年も寂しい別れになる人が何人かいますから」
試合を終えたあと、岩政大樹が静かに振り返る。このチームで戦えるのも天皇杯が最後。だからこそ、夢途中で破れたことにショックを隠せず、多くの選手が、一礼をしただけでミックスゾーンを足早に過ぎ去っていった。
試合の入りは決して悪いものではなかった。しかし、徐々にG大阪のパス回しのテンポが速くなる。しかし、それは鹿島の選手たちも織り込み済み。「自分たちの前でまわされる分には大丈夫やという認識」(新井場)だったため、最後のシュートの場面には自由を与えないことで、意識が統一されていた。
しかし、23分、ショートコーナーから遠藤保仁のすばらしいシュートを決められてしまい、1点のビハインドを背負うことになる。
そこからはミスも多くなり、ジョルジーニョ監督は早めの交代も考えていたようだが、「感情的な判断になるといけないのでHTまで待って、冷静に時間をかけてプランを練ることにした」と、後半からの巻き返しを狙う。
すると、後半頭からレナトを投入したことでポゼッション率を奪い返し、相手を押し込む展開となった。ところが、そこからが崩せない。シュートを放つ場面はあったものの、いずれもゴールとの間に相手守備陣がおり、シュートコースを限定されてしまう状況だった。
この試合はジョルジーニョ体制の集大成とも言える位置づけだった。9月29日第27節のG大阪戦から取り組み始めた[4-2-3-1]の布陣は、その後、微調整を加えながら熟成度を高め、その試合を含めると7勝4分1敗という結果を残してきた。シーズン序盤、ダイヤモンド型からスタートした[4-4-2]の布陣は、やがてボックス型へ移行し、最後にはダイヤとボックスを兼ね備えた[4-2-3-1]へ。2トップから1トップになり一人減ったFWに負担が増えたが、そこは大迫勇也が獅子奮迅の働きで支えてきたのである。しかし、最後の最後で相手を崩すことができなかった。
「今日が最後の試合になってしまったので、この場を借りて日本国民の皆さんに感謝を述べたいと思う」
会見の最後に、そう切り出したジョルジーニョ監督は、この1年で受けたサポートに対する感謝の言葉を口にした。そして、強化担当者である鈴木満常務取締役から「ドアのカギはかけない」という約束をもらったと明かした。
「(監督をする)チャンスはまたいつかもらえると思っています。その時にみなさんと再会できることを心待ちにして帰国します。本当に心から感謝します。ありがとうございました」
有終の美を飾れなかったことで、心残り、後悔、悔恨など、さまざまな感情が心の奥底に降り積もっていたはずだ。しかし、ジョルジーニョは、感謝の言葉を口にして去っていった。
以上
2012.12.30 Reported by 田中滋
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