今の順位を確保すること、それが今の浦和の最優先事項だ。「ACLは絶対条件」と柏木陽介も強調する。

上昇気流に乗って広島との頂上対決に挑む。それがリーグ終盤の理想的なシナリオだったが、現実はリーグ戦４試合勝ちなしと躓いてしまい、浦和は目標修正を迫られた。「本当は追い上げて戦いたかった」と梅崎司も唇を噛む。

広島とは残り３試合で勝点９差。数字上は逆転優勝の可能性を残すものの、両者の得失点差は24と大きく開いている。「非常に厳しい」と多くの選手が口にしているように、リーグタイトルの可能性は限りなくゼロに近い。

今の浦和は上を見上げるよりも下を気にしなければいけない立場だ。４位の名古屋には勝点で追いつかれ、５位の清水は勝点１差で迫っている。第二集団は団子状態となっており、隙を見せると一気に中位まで落ちてしまう危険性がある。槙野智章は「ここまでやってきて残りの試合で浦和が落ちたと言われたくない。最終的に中位で終わることにはしなくない」と気を引き締める。

一方、首位を走る広島もリーグ終盤に入って足踏みを強いられた。横浜FMとはスコアレスドローに終わり、柏には１−２で敗れ、Ｇ大阪とは１−１の引き分けと、10月は勝ち星を手にできずに苦しんだ。しかし前節の札幌戦では３−０と快勝。ここを落とせば嫌なムードになりかねないという一戦できっちりと結果を出し、ラストスパートに向けて弾みをつけた。

広島にとってミハイロ・ペトロヴィッチ監督の存在はモチベーションを高める要因になっているはずだ。ミシャスタイルのＤＮＡを持つチーム、しかも自分たちより後から始めたチームに屈するわけにはいかないだろう。同じシステム、同じ思想を持っているチーム同士が激突すれば、いやでも成熟度や質の差が浮き彫りになる。何年もかけてこのスタイルを磨きあげてきた先輩としては、一年坊主にやられるわけにはいかないだろう。２位仙台の追い上げをかわすためにも、浦和戦は絶対に落とせない試合になる。

開幕戦で激突した際には広島が違いを見せつけた。新しいサッカーを始めたばかりの浦和はほとんど何もできず、自分たちのあるべき姿を目の前で眺めることになった。６月のヤマザキナビスコカップで再戦した時には浦和が完勝したものの、あの時は互いに主力数人を温存していたという事情があった。

開幕戦から約８カ月、あれから大きく進歩したという自負が浦和の選手たちにはある。梅崎は「開幕では何もできずに悔しい思いした。その相手ともう１回できる。ミシャのためにも勝たないといけないし、成長を見せたい」と意気込みを見せる。これまでの戦いで築き上げてきたものが今、どのレベルにまで達しているのか。広島戦は自分たちの現在地を知るまたとない機会となる。

以上

2012.11.16 Reported by 神谷正明