今年のJ2リーグがいつもと違うのは「J2残留」という文字をゴール裏に掲げるざるを得ないチームがあるということ。現時点で10クラブ前後が絡む昇格争いも激しいが、下位グループから抜け出そうとする残留争いが今年のJ2リーグを読めなくしている。去年までの下位クラブが持っていたモチベーションとは比べ物にならない危機感。前節は鳥取と富山が、昇格争いをしている山形と千葉に勝っており、残留争いが昇格争いに影響する複雑さがあった。そしてタイトスケジュールが戦い方を更に困難にするのが、今節。中2日なので、長距離や乗り換えの多い移動を強いられるチームはコンディショニングが難しい。9月8日に松本で天皇杯を戦った京都は、この連戦がアウェイ大分戦、アウェイ山形戦と過酷な移動が続くだけに今節の山形戦をどう乗り切るかが重要になる。甲府は運良くホーム連戦で、前節は岡山に勝って今節は移動もなく鳥取戦を迎える。しかし、鳥取の選手が残留のために持っている危機感がチーム力を高めており、移動がないことを「有利」だとは言っていられない。甲府が2試合戦って勝点1しか取れなかった山形に前節勝っているのだから、甲府は岡山戦勝利の余韻――勝ったら一応は飲むけど――なんて楽しんでいられない。

甲府サポーターにとって「鳥取といえば、美尾敦」という人も少なくないだろう。神奈川県出身ながら京都で身につけた関西テイストで存在感をピッチ外でも発揮したので、甲府での合計3年間（01、08、09）の在籍期間以上のインパクトがある。ゴールの数は控え目だったけれど、運動量を活かした貢献度は高かった。前節は山形から決勝ゴールを右足で決めて鳥取を残留に向けて一歩前進させると同時に、昇格争いを掻き回した。「今節も上位潰しやるでぇ〜」くらいのことを言ってそうだが、甲府は甲府で「たまたま首位にいるのとは違うのだよ」という勝ち方をしたい。そのためには鳥取のカウンターは許したくないし、前からのプレスに引っ掛けられることもあってはならない。「具体的なことは言えないけれど、鳥取戦は岡山戦の反省点が生きる試合」という趣旨の話を城福浩監督が話しており、違いを感じることができるかどうか楽しみしたい。

前回の対戦（第8節）は、甲府が「シュートは打つも決まらず、勝ちきれない」という時期の対戦で、0−0の引き分け。「70分くらいまでは鳥取のプランでやらされたと思っている」と城福監督が振り返るが、その頃の甲府と今の甲府の違いを結果でも内容でも見せてほしいと一番思っているのは城福監督ではないだろうか。鳥取の前線が連動してプレッシャーを掛けてくる時間帯は、たとえ運に見放されたとしてもディフェンスラインやボランチが凡ミスをするわけにはいかないが、甲府は主導権を長く取って勝ちたい。内容が良くなくても勝てることは素晴らしいいが、圧倒する強さも見たい。エースのダヴィが25ゴールで得点ランキングの首位独走中なのは素晴らしいが、今年の甲府の新しくて古い課題でもある、「ダヴィ以外ゴール増産計画」はまだまだ道半ば。リーグ戦でも決定機に決められず、天皇杯でPKを外して決定機恐怖症気味の、みんなの弟・愛されキャラの井澤惇がゴールを決めれば盛り上がる。鳥取戦ではみんなで井澤に「今日は決められる」という念を送ってほしい。もちろん、フェルナンジーニョや堀米勇輝らのゴールにも期待している。

甲府のスカウティングは4−4−2の鳥取を想定しているようだが、中2日なので鳥取のスタートポジションやメンバーはなかなか読めない。甲府も何人かのメンバーが代わるが、鳥取が出場停止明けの加藤秀典を含めてどの程度メンバーを代えてくるのかも気になる。お互いにやろうとするサッカーを変えることはないだろうが、人が代われば内容も多少は変わる。山形に勝った勢いや自信を今節に繋げてくるのであれば、J初ゴールを決めた奥山泰裕や美尾はキーマンだし、前節後半から投入したFW・久保裕一をどんな使い方するのかもポイント。岡山戦ではゴール前を閉めて無失点に抑えた甲府だが、岡山のシュートミスに助けられた場面もあった。今節はシュートミスに助けられた場面をゼロにして無失点に抑え込みたい。そこに岡山戦の反省点があるのかもしれない。中2日の連戦。ここまで積み上げてきたものをより濃く発揮できる甲府でありたい。みんなでJ2優勝に一歩前進する戦いをやろう。

以上

2012.09.16 Reported by 松尾潤