J1では苦戦が続くC大阪と鹿島にとって、このヤマザキナビスコカップの戦いは、混戦のリーグ戦で下位脱却を果たすためにも、今後への勢いをつけるためにも、重要な舞台。雌雄を決する準々決勝第2戦、今季4度目の顔合わせでは、C大阪のホームである大阪長居スタジアムで両者が激突する。
7月25日に開催された第1戦では、C大阪が鹿島に敵地で1−2と惜敗。ただし、いまやチームのエースである柿谷曜一朗が得点ランキングトップに立つ今大会5得点目を記録し、アウェイゴールを奪ったことで、C大阪はこの第2戦、1−0、もしくは、2点差以上の勝利で、クラブ史上初となるベスト4に進出できる望みが生まれた。しかも、今度は桜色のサポーターからの後押しを全面に受ける、ホーム・大阪での戦い。このアドバンテージを活かしたいところだ。
J1第20節では、今夏加入したシンプリシオらの活躍もあり、札幌に大勝し、リーグ戦でも約2カ月ぶりの白星、待望のホームJ1通算100勝も達成したC大阪。このリーグカップ戦初見参となる7番は、当然、鹿島戦にも初登場。これまで今季3度、苦渋をなめさせられた相手へのリベンジの切り札として、期待は大きい。
しかし、C大阪の台所事情は、決してベストの状態ではない。ロンドンオリンピックのために山口螢と扇原貴宏は不在のまま、さらに、今夏の新戦力の1人である枝村匠馬は、清水で今季すでにヤマザキナビスコカップ出場済みのため、C大阪ではリーグカップ戦に出ることができない。そして、4日夜に草津から移籍加入が発表され、すでに練習に合流しているブラジル人MFヘベルチも、まだ選手登録は完了しておらず。限られた駒での戦いを強いられる。
ただし、その分、若きC大阪イレブンが闘志を燃やしている。「清武とか(キム)ボギョンとかオリンピック勢が抜けたから勝てないとは絶対に言われたくない」というのは、札幌戦で今季初ゴールを決めた村田和哉。柿谷とともに、チームの攻撃を活性化する26番は、前回の準々決勝第1戦ではチャンスを活かせず、悔しい思いを味わっているだけに、この試合に懸ける想いは強い。また、柿谷、ケンペス、播戸竜二に続く攻撃のオプションとして期待されるのが、大卒ルーキーの吉野峻光と、クラブ生え抜き21歳のFW永井龍だ。
「ボールにいっぱい絡んで、リズムを作って、今(監督らから)言われているように運動量を増やして、もっとゴール前に飛び込んでいきたい」と吉野がいえば、永井も「サポーターが、『永井が長居でゴール』というのを待っているし、その期待に応えられるよう、ゴール前にいることを意識して、ゴールだけを狙っていきたい」と、得点への強い執着心を示す。そのとおり、C大阪はとにかく、ゴールを奪えなければ勝ち上がれない。もちろん、「やみくもに攻めていいというわけにはいかない」とセルジオ ソアレス監督も言うように、失点すればさらに厳しい状況に追い込まれるが、「より慎重に戦いつつ、我々は攻撃的にいかなければいけないというのも、もちろん前提にはある」と、C大阪は若き力を活かして、先手必勝を期す。
対する鹿島は、引き分け以上、もしくはアウェイゴールを2点以上奪っての1点差での敗戦でも、次のステージに勝ち上がることができる。しかし、この猛暑のなか、2週間で公式戦5試合目というハードスケジュールに加え、4日のJ1第20節鳥栖とのアウェイ戦後、鹿島に戻らず、大阪で調整を強いられ、疲労の蓄積が心配される。それでも、「連戦の影響は言い訳にしたくない」と、鳥栖戦後に語ったのは岩政大樹。王者のプライドにかけて、この一戦に全力を尽くす構えだ。C大阪には今季相性もよく、岩政、興梠慎三、遠藤康、ドゥトラ、小笠原満男と、満遍なくゴールを奪えているのも強み。さらに大迫勇也、レナト、ジュニーニョといった攻撃陣も揃えており、こちらもアウェイゴールを虎視眈々と狙ってくるはずだ。
J1第20節札幌戦でゲームキャプテンを務めたC大阪DF茂庭照幸は、「今はチームに関わるすべての人が力を合わせて戦わなければいけないときだし、本当にサポーターの力が必要なとき」と、サポーターにメッセージを書き込んでもらったキャプテンマークをつけて戦った理由を述べていた。札幌戦でチームが一丸となり、今回も熱いサポートを受けて戦うC大阪が、ホームで逆転勝利を収めるか。それとも、大阪にも大勢いる鹿島サポーターの声援を受けて、前年度覇者が5度目のカップウィナーにまた一歩前進するか。クラブの総合力が、この試合の勝利の行方を左右するはずだ。
以上
2012.08.07 Reported by 前田敏勝
J’s GOALニュース
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