大宮は前節、仙台を相手に前半は圧倒してリードを奪いながら、後半に相手の戦術変更に対応できず、4失点を喫した。指揮官や選手が「チャンスで追加点を取ってゲームを決めなければ」と異口同音に語り、もちろんそれはそれで正しい。が、ハイプレス対策にロングボールという、当たり前と言えば当たり前の戦術変更で、いとも簡単に崩され、「間延びしてセカンドボールが拾えなくなってしまった」(青木拓矢)。しかもそれを修正できずチームがバラバラなまま終わってしまった点は、決定力不足よりも深刻な課題のように思える。
奇しくも、昨年のホーム名古屋戦もそんな試合だった。開始早々にセットプレーで失点したものの、受けに回った名古屋に対してサイドの高い位置で起点を作り、逆転に成功したまでは良かったが、高い個人能力を生かしたロングボールによる前後分断サッカーの前に屈し、再逆転を許した。「相手の中盤が空いているのに、押し込まれて自分たちのサッカーができなかった」と渡邉大剛が振り返るが、仙台戦の直後だけに、その口ぶりも悔しそうに響く。
名古屋は中村直志を除いてケガ人が復帰し、ダニルソンも出場停止が明け、ほぼベストのメンバーで乗り込んでくる。今週の練習でも、特に大宮対策をするふうでもなかったというから、さすがの風格である。チームとしてはまだ調子が上がっていない印象だが、それでも撃ち合いのF東京戦を落とした以外はきっちりと勝星を拾っている。ケネディもコンディションが上がらない様子ながら、前節は先制点にからみ追加点も奪った。いくら不調といっても194cmが174cmになるわけではないので、当然、大宮としてはまずここを抑えなければならない。
ケネディも怖いが、もっと怖いのはその落としを拾ってのセカンドアタック。単純なケネディの高さに対しては『ケネディキラー』の異名を取る菊地光将が大宮の最終ラインに控えているが、「ケネディを信じて攻撃陣が走ってくるから、セカンドボールにいかに反応できるか」(菊地)が鍵になる。
セカンドボールが拾えれば、「名古屋は攻撃陣が攻め残りして中盤が空く傾向がある」(渡邉)ため、ビルドアップしやすいし、カウンターもハマりやすい。心強いのが、前節インフルエンザで欠場したカルリーニョスの存在。ピッチを縦横無尽に動き回り、攻撃に転ずるや素早く、一撃で相手の急所を突くパスが出せるため、守備陣が踏ん張れれば多くのチャンスが出てくるはずだ。
大宮は東 慶悟を前節の右足関節捻挫で欠くが、その代役はヤマザキナビスコカップでもトップ下を務めた金久保 順になりそうだ。名古屋の守備は、センターバックはもちろん異次元の強さだが、サイドバックはそれほど守備力が高くはない。また、センターバックの能力が高いゆえか、「意外とバイタルが空いていることも多い」(渡邉)ため、バイタルでボールを受け、2人目、3人目を使って崩すのが得意な金久保の持ち味が生きそうだ。また、昨年もピタリとハマったように、DFとGKの間に速いクロス、折り返しのグラウンダーのクロスなど、サイドからの変化を付けたクロスも有効だろう。
大宮にとって心配なのはやはり、時間が経過し、名古屋が個の能力を全面に押し出した前後分断サッカーを仕掛けてきたときだ。ボールの出どころにプレッシャーをかけるなら、ラインを押し上げなければならない。リトリートして跳ね返すなら、良い距離感でバランスを取らなければならない。要はコンパクトでなければセカンドボールが拾えず、劣勢に立たされるのは必至。その意思統一をしっかりできるかどうかが問われる。
ただ、名古屋にとって「まずはケネディ」というのはストロングポイントだが、大宮にとっても「まずはケネディ」である。ボールの飛んでくるところが分かりやすく、横から飛んでこようが縦から飛んでこようが、要はケネディを抑えてセカンドボールを拾うという、守備のやり方を変える必要がないので混乱は少ないかもしれない。それでも相手を力で潰す強さがあるのが名古屋の怖さだが、それに屈した昨年の悔しさを選手たちは忘れていない。何より、「仙台戦の反省を生かさないと、負けたことが無意味になってしまう」(渡邉)。ホームのサポーターの前で、前節そして昨年の借りをしっかり返したい。
以上
2012.03.30 Reported by 芥川和久
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