自らの試合内容を別とすれば、という前置きが必要ではあるが、少なくとも川崎FがC大阪の攻撃を抑えていたのは間違いない。74分にブランキーニョに代わり柿谷曜一朗がピッチに登場するまでは、という条件が必要になるが、それにしてもよく抑えていた。
C大阪のキープレーヤーの一人がブランキーニョであるのは間違いなく、その選手をベンチに追いやった事で川崎Fの選手たちは一息ついてしまったのかもしれない。結果的に、途中出場の柿谷のファーストプレーが川崎Fの守備陣を混乱させ、キム ボギョンに手痛い一撃を食らってしまう。川崎Fにとって、これがリーグ戦初失点となった。
これまでのリーグ戦2試合と同様に、川崎Fは試合開始早々に大きなピンチを招いていた。前半4分にショートコーナーから酒本憲幸にクロスを入れられた場面である。絶妙なタッチのクロスはゴール前でフリーで待ち構えていた清武弘嗣の頭に合う。失点を覚悟させられた場面ではあったが、このシュートは枠をそれて難を逃れた。このクロスで波に乗ったのか、酒本には前半の間、面白いようにサイドを突破されてしまうのだが、川崎Fにとって幸運な事にゴールを奪われる事はなかった。
川崎Fは左サイドに一抹の不安を抱えてはいたが、前半の試合展開自体は悪くはなかった。粘り強い試合運びの中で、31分にはレナトが持ち込んだカウンターから田坂祐介が決定的な場面を迎える。田坂はその場面を振り返り「相手が来ているのはわかっていた。選択肢もいくつか頭に浮かんでいました。だけど一番普通なプレーを選んでしまいました」というシュートを放ち、茂庭照幸のブロックを許した。
その田坂が挽回の機会を得たのが前半の45+3分の場面。田坂からの柔らかいスルーパスを受けた小松塁がGKとの1対1を迎えるが、枠内に飛んだ強烈なシュートはキム ジンヒョンのファインセーブに阻まれてしまう。
個々の持っている能力の高さはひしひしと伝わってくるのだが、それがチームとしてのまとまりになっているように見えない。不協和音を奏でているオーケストラのようなサッカーでは、見るものに得点の可能性を感じさせることは難しかった。
ただ、不協和音を奏でていたのはC大阪もそうで、彼らにしてみても決してまとまりのある攻撃ができていたとは言えなかった。C大阪のセルジオ ソアレス監督は試合後に「連携に関しては、常々話しているのですが、公式戦を重ねることでよくなっていくものだと思っています。チームとしては、技術的にも戦術的にももっともっと成長する余地があると思います」と話しており、遠まわしに改善すべき問題を抱えているとの認識を伝えていた。
どちらかが意図的にそうした試合にしてしまったのか、それとも現在のこの両者の対決の必然的な帰結なのかは詳細な検証が必要だとは思う。ただ、それにしても、お互いがお互いに良さを削り取りながら、相手を封じ込めるという時間が続いた。
川崎Fの相馬直樹監督は膠着した試合を動かそうと矢島卓郎の投入を考えていたという。しかし矢島を準備していた75分にキム ボギョンのゴールを許し状況が変わる。当初ベンチへと下がる予定だった小松をトップに残し、サイドでの起用で実績のあった矢島を76分に左サイドハーフとしてピッチへと送り出すのである。
ホームで1点のビハインドを背負った川崎Fは、攻撃のテコ入れを目的として81分に楠神順平と田中裕介の2選手を同時に投入する。中央で粘り強く守るC大阪をサイドから崩すことを意図していたのであろうこの交代采配の効果が出たのが89分の場面。ピッチ中央付近で中村憲剛がボールを引き出したのに合わせ、田中が右サイドを全力疾走で駆け上がる。その田中に中村から鋭いパスが送られた場面である。田中へのパスが若干縦方向に流れたこともあり、彼がシュートを打つことは出来なかったが、それにしても田中から絶妙なパスがゴール前に入る。しかし走りこんだレナトにはわずかに合わず、キム ジンヒョンがセーブした。
90+4分にC大阪のペナルティエリア直前で得たFKが大きな見せ場となるが、レナトが蹴ったボールはエリア内に作られた壁を直撃してしまい万事休す。堅守で勝ち星を積み重ねてきた川崎Fが、その堅守を破られ、無得点のまま試合を終える事となった。
消化不良感の残る川崎Fは、その理由として選手の入れ替わりを口にしている。特に前線の選手に入れ替わりが出ている事はチーム作りに遅延をもたらす原因となっている。ただ、チーム作りが思うように進んでいないのはC大阪も同じで、前述のとおり「成長の余地がある」という前向きな表現によりソアレス監督は現状に満足しない立場を取っている。
いずれにしても、ともに万全ではない形での試合展開の中、C大阪がそつなくワンチャンスを決めて勝ち星を手にしたという試合だった。難しい試合を手にしたC大阪は、この勝利を自信にチーム作りを進めることになる。一方で無得点のままホームでの敗戦を喫した川崎Fは、この敗戦を分析し次の試合に繋げて欲しいところ。ここからの相馬監督の立て直しに期待したい。
以上
2012.03.25 Reported by 江藤高志
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off