12月14日（水）
TOYOTAプレゼンツ FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2011
柏 vs サントス（19:30KICK OFF/豊田ス）
TV放送：日本テレビ系にて19:00〜生中継
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“Muricy contra Nelsinho”（ムリシー対ネルシーニョ）。練習グラウンドに取材に来ていたブラジルのテレビ局リポーターが、ややオーバーなアクションを取りながらカメラに向かってそう話している。FIFAクラブワールドカップ準決勝・柏対サントスを、「ブラジルの名将対決」と報じているようだ。

ムリシー ラマーリョというブラジル屈指の名将が率い、エラーノ、ネイマール、ガンソといった煌びやかなタレントが揃う南米王者・サントス。もはや日本サッカーの物差しでは測ることができない力を持つ彼らに対し、柏がどう対峙するのかはブラジルのテレビ局ならずとも興味を引かれる一戦である。モンテレイを退けた直後のロッカールームでは、柏の選手たちは「次はサントスだ！」と、それぞれが叫び、この世界屈指の強豪との対戦実現に盛り上がったという。ネルシーニョ監督もまた、選手時代には４年間プレーし、監督も務めた経験のあるサントスを「愛情のあるクラブ」と位置づける。そして愛情があるからこそ「サントスと真剣に戦って、結果を残したいと思っています」、そう言葉に力を込め、必勝を誓った。ネルシーニョの頭の中には、サントス攻略のイメージがふつふつと沸き上がっているのかもしれない。

ポイントは“速さ”になるだろうか。これはレアンドロ ドミンゲスとジョルジ ワグネルが来日した頃、よく話していたことのひとつに、「日本の速いサッカーに戸惑った」という点がある。柏のブラジル人選手２人は、ブラジル国内でも名の知れ渡った選手である。その彼らですら日本サッカーの速さに馴染むのに苦労したというのなら、つまりそれは日本特有の速さを生かせば十分サントスを戸惑わせ、ひと泡吹かせる可能性があることを意味するのではないのか。しかもサントスは攻撃的なチームゆえ、どうしても攻撃の比重が高くなり、攻守のバランスに欠ける局面が度々見受けられる。口で言うほど容易い作業ではないのは重々承知だが、素早いプレスとカウンターが鍵を握ると思われる。

ただ、柏はＪリーグ第３４節の浦和戦以降、１２日間で４試合目という過密日程をこなしている。しかも１１日の準々決勝は延長戦１２０分間を戦い抜いた。当然、選手たちは蓄積されている疲労とも戦わなければならない。それにサントスも速い展開のサッカーが得意なチームだ。すると、速さを生かすことがサントス攻略の大きなポイントだとしても、終始ハイペースに持ち込んだ場合は、疲労の影響で柏が早々にガス欠を起こす危険性を秘める。したがって、マイボール時には極力ボールをつなぐところはしっかりつないでゲームを落ち着かせ、スローダウンを意図的に取り入れながらゲームをコントロールし、そして勝負どころでは一気にギアを上げたスピーディーな攻撃に転じ、サントスの急所を狙い定めて突くことが理想的な展開になるだろうか。南米王者相手にそんなメリハリのある戦い方を実践するのは確かに難易度が高いが、柏の特徴である臨機応変なスタイルがサントスを相手にした場合、どのような展開になるのか。見る側としても非常に興味深いし、選手たちがそれをやる価値はある。

また、モンテレイ戦では立ち上がりの劣勢を切り抜けたからこそ結果が付いてきた。前半立ち上がりの１０分までは、サントスは様子を見るというよりも、おそらく柏への“威嚇”のため一気にラッシュを仕掛けてくると思われる。いきなり強烈な一撃を食らわし、腰を引かそうと目論んでいるに違いない。柏はそこで踏ん張り、失点を喫しないことが、その後の展開を優位に運ぶ第一条件となる。

「皆さんはバルセロナとサントスの決勝だと予想しているでしょう。確かにサントスのクオリティ、個人の力、チームの力を否定はしませんが、選手としっかり話をしながら対応策を落とし込んで準備していきたい」。モンテレイを打ち破った後に出た、指揮官の強気な発言。名将ネルシーニョの企てるゲームプランは、世界中にどのようなサプライズを見せてくれるのか。

以上

2011.12.13 Reported by 鈴木潤