9月4日のJ2リーグ戦第4節・千葉対東京V。千葉のホームスタジアムのフクダ電子アリーナ(フクアリ)で、選手が試合前のピッチでの練習を行っていた時のことだ。場内アナウンスで両チームの出場メンバーが紹介され、アウェイチームの東京Vの佐伯直哉、そして巻誠一郎の名前が読み上げられると、千葉サポーターから拍手が起こった。特に巻の時には、巻が千葉に長く在籍していた過去を考慮してか東京Vサポーターも拍手していたが、千葉サポーターの拍手の音はとても大きく、いつまでも続いていた。
その光景を見ていた記者たちの中には、過去に在籍していた選手がアウェイチームの選手としてスタジアムに来た場合、その選手にブーイングするサポーターの姿を見慣れているからなのか、意外に思っていた人たちがいた。だが、フクアリでは対戦相手の一員となった元千葉の選手を拍手で迎える光景は珍しいものではない。
いつからだったのかハッキリとは覚えていないが、クラブから戦力外通告を受けるなど本人の意思に反して千葉を去った選手が対戦相手として千葉のホームゲームに来ると、千葉サポーターは選手紹介の際に拍手をしている。2010年7月に千葉からアムカル・ペルミ(ロシア)へ移籍した巻は、クラブから正式な戦力外通告を受けたわけではないが、千葉に強い想いを残しながらの移籍だったことは彼の言動からサポーターにも伝わっていた。また、2003年に加入した巻が千葉というクラブ、そして千葉サポーターへ残したものは大きかった。だからこそ巻への拍手の音はかつてないほど大きく、長かったのだろう。
自分の意思で千葉を去った選手には、千葉サポーターから容赦のないブーイングが浴びせられることが多いが、それには例外がある。スタメンに定着できなかったり、思うように試合出場がかなわなかったりした選手が、自分の目標を達成するための挑戦として他のクラブへ移籍した場合だ。例えば、1999年に市原(当時)に加入した林丈統は、イビチャ・オシム監督(当時)が自分の能力を認めてくれながらもスーパーサブとしてしか起用しないため、「スタメンで試合に出る」ことを目指して2005年シーズン終了後に京都へ移籍した。その際、林が自分の考えやサポーターへの想いなどを切々と綴った直筆メッセージを残したということもあったが、林が対戦相手としてフクアリに来た時の千葉サポーターの反応はブーイングよりも拍手のほうが圧倒的に多かった。
また、拍手を送られるのに千葉の在籍年数は関係ない。前述の佐伯は2009年の1シーズンしか在籍しなかったが、千葉サポーターは拍手で迎えた。ほかの例を挙げれば、千葉が奇跡的な大逆転J1残留を果たした2008年、6月に広島から期限付き移籍で加入した戸田和幸(現草津)、8月に横浜FCから期限付き移籍で加入した早川知伸は、シーズン終了後に移籍期間満了で千葉を去ったが、対戦相手としてフクアリに来た時には大きな拍手で在籍時の彼らへの感謝の気持ちが表現された。
もちろん、「対戦相手の選手に拍手するなんて」とか、いろいろな考えのサポーターがいるだろうし、実際のところほかのクラブへ移籍する際の選手の心境がどの程度まで明らかにされているかも不明だ。だが、一時期はともに戦った選手にサポーターが拍手するのはとても素敵なことだと思う。そして、容赦のないブーイングもまた選手が在籍時に愛されていたからこそで、サポーターには裏切られたような思いがあるからではないだろうか。関心がなければ無反応なわけで、選手紹介の際の千葉サポーターの反応はとても興味深い。
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2011.09.08 Reported by 赤沼圭子
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